映画「マネー・ショート」 金融活劇、舞台裏描く
品田英雄・日経BPヒット総研上席研究員
日本経済新聞の読者にぜひ見てほしい映画がある。「マネー・ショート 華麗なる大逆転」。2005年時点でサブプライムローンの問題点を見抜き、リーマン・ショックで大もうけした男たちの物語だ。原作はノンフィクション「世紀の空売り 経済の破綻に賭けた男たち」で、今年のアカデミー賞で脚色賞を受賞した。
音楽や映像の使い方が斬新で金融業界に詳しくなくても十分楽しめるが、テンポが速いのでいくつかの予備知識があるともっと楽しくなる。
登場人物/4組の男たち 4組の男たちが破綻を予想してもうけようとたくらむのだが、実は彼らは互いに関係性がなく、別々に話は進む。4組とは(1)マイケル:ヘビーメタル好きで元精神科医の資産運用家(2)マーク:正義感が強すぎるファンドマネジャー。モルガン・スタンレーの子会社で働く(3)ジャレド:ドイツ銀行に勤めるハッタリも多い若きトレーダー(4)2人の青年:偶然手にした情報を元に、伝説のトレーダーの協力を得て大もうけをもくろむ。
作中で関係が描かれるのはマークとジャレドだけ。私のように外国人の顔を覚えるのが不得意な人は、これを知っていれば気が楽になる。
演出/観客に直接説明 この映画は専門用語を面白く解説してくれるが、見せ方にひと癖ある。出演者がいきなり観客に向かって説明するのだ。そんな場面が何カ所あることを知っておけば、戸惑うことはない。
専門用語/覚えて楽しむ 金融用語を覚えれば頭は混乱しない。モーゲージ債(住宅ローン担保証券、MBS)は住宅ローンを組み合わせた証券、サブプライムローンは信用力の低い個人向けの住宅ローン。ここまでは知っている人も多いだろう。
難しいのは「CDS」(クレジット・デフォルト・スワップ)と「CDO」(債務担保証券)。前者は手持ちの債券の価格が下がった時に損失を肩代わりしてくれる商品で、後者は貸付債権や公社債などを組み合わせて証券化したもの。本来ならリスクが分散するはずだが、どれも価値のない債権だったために……。これを覚えておけば映画に没頭できる。
この映画からは歴史に学ぶべきだというメッセージが伝わってくる。
[日本経済新聞夕刊2016年3月19日付]
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