ロックバンド「KANA-BOON」 ライブ盛況
大阪出身の4人組ロックバンド「KANA-BOON(カナブーン)」が勢いづいている。メジャーデビューから約2年半と経験は浅いが、ノリのよい楽曲と耳に残る歌声で「ライブバンド」としての地位を確立し、若者を中心にファンを増やしている。
2008年、ボーカルで作詞作曲を手がける谷口鮪(まぐろ)と音楽仲間により結成。10年から大阪のライブハウスを拠点に活動を始め、12年、ソニーミュージック系のレーベル、キューンミュージックのオーディションで優勝した。プロデューサーを務めるキューンの藤江充夫氏は「印象に残る楽曲が多く、素晴らしいバンドだと思った」と語る。
大胆さとユーモアが同居する点が彼らの音楽の持ち味だ。谷口の曲は一見スタンダードなようで、随所にインパクトのあるフレーズや歌詞を潜ませる。遊び心も満載で、「平家物語」をネタにした13年9月のメジャーデビューシングル「盛者必衰の理、お断り」は、彼らの魅力が凝縮された楽曲だ。学生のような無邪気さを残した谷口の澄んだ歌声も曲にマッチする。
抜きんでた存在にするため、キューンは「サカナクション」なども手がける所属事務所ヒップランドミュージックと組み、CDとライブを連動させる方法を取った。デビュー前からユーチューブで物語性のあるビデオを流してメンバーや楽曲のユニークさを打ち出す一方、ライブでは4つ打ち(4拍子)で客が盛り上がる楽曲を中心に演奏した。
すると、ライブが口コミやネットで評判になり、デビュー前後にロックフェスティバルの会場で入場制限がかかるほどに。レコード店もCDを目立つ場所で扱うようになり、13年10月発表の1枚目のアルバム「ドッペル」はオリコン最高位3位となった。
これまでライブの勢いを生かして疾走してきたが、2月に出した3作目のアルバム「オリジン」は題名の通り、原点に立ち返った。「勢いも大事だが、自分を見つめ直すことでさらに成長できると彼らは考えた」(藤江氏)。実際、ライブ仕様の「4つ打ち」が減り、硬軟織り交ぜた多彩な楽曲が並ぶ。藤江氏は「10代のファンが多いが、彼らの音楽はどの世代にも通用する」と期待する。(岩)
[日本経済新聞夕刊2016年3月16日付]
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