3年で大きく変わった、30~40代女性の消費意識

増えた世帯収入、スマホに奪われる時間
この調査の第1回は1997年。以降、3年おきに実施している。第1回調査時の平均世帯収入は713万円だったが、年々減少し、2012年には583万円に。しかし15年調査では645万円と、調査開始以来初めて世帯収入が増加した。
夫婦の就労形態は、共働き世帯が12年の49.2%から15年は54.7%に増加。共働き世帯の年収構成は、1000万円以上が12年の15.4%から15年は21.5%に伸びた。
共働きによって世帯収入は増えたが、忙しくなった分、買い物の時間は削られた。これに拍車をかけているのがスマホの急激な普及。30代女性のスマホの保有率は12年の42.4%が15年には85%に。40代女性も12年の23.2%が15年は74.7%と飛躍的に伸びている。スマホの普及によって「仕事以外でインターネットを利用する時間」が30代、40代ともに2009年から倍増している。
スマホの急激な普及は、購買行動にも大きな変化をもたらした。野村総合研究所上級コンサルタントの松下東子さんは「情報収集をしてじっくり選ぶというよりも、より簡便に、手軽に購買の意思決定をする傾向が強まった」という。
パソコンでいくつもウインドウを開いてじっくり比較検討をするというスタイルが、スマホの小さい画面では難しい。実際「商品を買う前にいろいろ情報を集めてから買う」と答えた人の比率は2009年を頭に年々減少している。
消費意識にも変化が見られる。こだわって気に入ったものには対価を払う「プレミアム消費」が頭打ちになる一方で、価格より利便性を重視する「利便性消費」が主流になっている(下の図)。多少価格は高くても時間のかからない買い方、利便性を重視する消費スタイルが増えている。「商品の情報が多すぎて困る、使えない」と考える人が全体の7割という「情報疲労」の傾向もここ数年続いている。

スマホが情報収集の主流になったことで、「情報を提供する側には、より簡単に、直感的に理解できる情報をまとめて届けることが求められるようになっています」(松下さん)。消費者の要望やニーズをくみ、商品を絞り込んだり取りそろえて提供するといった、提案型・目利き型の商品やサービスへの需要がさらに高まりそうだ。
ワークライフのスタイルによって消費意識に差
1万人アンケートでは、仕事や生活に対する価値観(「生きがいのウエイト」についても聞いている。「仕事」「家族」「趣味」「地域」の4項目について、それぞれどの程度重点を置くかを10点の持ち点の配分によって答えてもらった。
野村総研では生活者のワークライフスタイルを「バリキャリ」「フルキャリ」「ゆるキャリ」「専業主婦」の4つに分類している。「バリキャリ」は仕事に最も重点を置く正社員または自営業、「フルキャリ」は仕事と家族、趣味などをバランスよく重視する正社員または自営業、「ゆるキャリ」はパート・アルバイトで生活重視で働くというスタイル。生活価値観の調査結果において30~40代で配偶者と子どものいる女性をそれぞれのワークライフスタイルに当てはめた結果、構成比率は「バリキャリ」1%、「フルキャリ」が26%、「ゆるキャリ」が42%、専業主婦が32%となった。
働く女性が増えたことで利便性消費の傾向は強まったが、「利便性の高いサービスや商品」の利用率は働いている・いないによらず高まっている。例えば、30~40代で配偶者と子どものいる女性の「乾燥機能付き洗濯機」の保有率は12年調査で働く女性の方が4ポイント高かったが、15年調査では専業主婦とほとんど差がなくなった。
働く女性はもともと自分自身のための消費金額が大きいが、特にシングル女性ではその傾向が顕著。消費意識も、「利便性消費」は夫婦ともに正社員の共働き世帯で多いのに対し、全体の3割強を占めるシングル世帯では「プレミアム消費」が他の世帯よりも多い(下の図)。

ネットやSNS(交流サイト)の利用状況の調査からは、30~40代の既婚女性はSNSなどを「他者とのコミュニケーション」に最も使っているのに対し、シングル女性は「情報発信」に使っている比率が多いことが分かっている。欧米でもこの年代のシングル女性は新しい消費トレンドの担い手として注目されているが、日本でも同様に、情報発信力の高さゆえに「トレンドセッター」として注目されていきそうだ。
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