プロジェクター内蔵タブレットは仕事にこそ向く
戸田覚のPC進化論
最近のレノボは、膨大な数の新機種をリリースしている。デザインが似ているものが多いので、よく分からなくなっている人もいるだろう。
2015年11月に出荷が始まった「YOGA Tab 3 Pro 10」は、10.1型液晶を搭載するAndroidタブレットだ。見た目は同社の従来品とさほど変わらない。本体の下部はシリンダーのような形をしており、そこに組み込まれているスタンドを開くと自立する仕組みだ。
スタンドは、写真や動画などを見るときばかりでなく、外付けのキーボードを組み合わせてパソコン的に使いたいときにも役立つ。他のタブレットには見られないコンセプトで、個人的にはかなり好印象。YOGA Tab独自の「バッテリーシリンダーデザイン」は、バッテリー駆動時間や持ちやすさにも貢献している。
ただし、シリンダー部分のせいで、スリムな外観とは言い難い。本体は665gとヘビーだ。手に持って使い続けるのは厳しい。
高級感は十分。独自のデザインも悪くない
極薄のタブレットと比べると、見た目のキレではかなわないものの、全体的な高級感はまずまずだ。スタンド部分はアルミニウムと思われる金属製で、手で触れてもしっかりとした剛性感がある。
ちなみに、テーブルなどに置くときには、シリンダー部分を上にすると、ちょうど見やすい角度になる。また手に持って電子書籍などを読む際には、シリンダー部分を握るとちょうどいい。重い部分が手元に来るので、重さの割には負担が小さいはずだ。
最上位モデルらしく、背面の上部は革のような材質で仕上げられている。人工皮革を貼り付けたのだと思われるが、見た目はかなりスタイリッシュで手触りもいい。Androidタブレットとしては高級な印象を受ける人が多いと思う。
ただ、シリンダー上部のスピーカーの穴の空いている部分はかなり柔らかく、手でつかむとゆがんでしまう。iPadほどの出来とは言い難いのが残念だ。
プロジェクターは仕事に使いたい
さて、YOGA Tab 3 Pro 10の最大の特徴であるプロジェクターについては、映画を投影するといった個人ユースが提案されている。しかし、同じくプロジェクターを搭載する「YOGA Tablet 2 Pro」を使ってきた僕の感想は「やっぱり仕事にこそ向いている」だ。実際、打ち合わせのときに壁に画面を投影してみせるなど、ちょっとした場面で役立つことが何度もあった。
映画を投影する使い方も確かに楽しいが、そのためにこのモデルを選ぶ人は多くないだろう。仕事の生産性に寄与するからこそ、追加コストを払う価値があるのだ。
なお、プロジェクターは、最大で70インチの投影が可能とされているが、これは部屋の明るさに大きく左右される。明るいカフェなどでは、20~30インチ程度が実用的なサイズだろう。自宅やオフィスでプロジェクターを頻繁に使うなら、もっと明るい、本格的なプロジェクターを手に入れたほうがいい。
また、OSはAndroidよりも「PowerPoint」が使えるWindowsのほうが、仕事用としてプロジェクターを生かせたと思う。
CPU、液晶などは文句なしだが価格が高過ぎる
プロジェクターは、"タブレットのおまけ"と割り切ってしまえば、納得できる性能だ。従来は、モバイルタイプといえどもそれなりにかさばる重いプロジェクターを持ち歩き、面倒な接続を経て使っていたのだから。
その意味で、普通よりちょっとだけ重いタブレットを持ち歩ければ、プロジェクターが不要になるのだからありがたい。JBL製のスピーカーを4つ搭載しているだけに、音はかなりいい。音量もそれなりに大きいので、映画を見るのにはもちろん、プレゼンテーションで動画を流すようなケースでも役立ちそうだ。
液晶は、超高解像度タイプでとても美しく、視野角も広い。CPUも高速で、モデルによってはSIMスロットも搭載とスペックも文句ない。
また、鉛筆などがスタイラスとして使える「AnyPenテクノロジー」を搭載しているが、これは「その気になれば書ける」程度に考えたほうがいいだろう。スラスラとは書けないし、ペン先と線の位置も離れている。デジタイザーのような使い勝手を期待してはいけない。
問題は価格だ。SIMスロットを搭載しないモデルで6万円前後(2016年3月上旬時点)。タブレットとして考えるとさすがに高い。プロジェクター代を考えれば妥当と言えなくもないのだが、できるなら、13型液晶のYOGA Tablet 2 Proを下回る4万円台前半で提供してほしいところだった。
1963年生まれのビジネス書作家。著書は120冊以上に上る。パソコンなどのデジタル製品にも造詣が深く、多数の連載記事も持つ。ユーザー視点の辛口評価が好評。
[日経トレンディネット 2015年12月22日付の記事を再構成]
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