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ブランド牡蠣が急増、全国に30超 バーで味わう個性

2016/2/26

 全国でブランド品が続々と登場している旬の牡蠣(カキ)。広島県産や東北の三陸産だけでなく、今や北海道や九州、沖縄でも開発に取り組んでいる。最近はカキ専門の飲食店「オイスターバー」が広がり、国内外の様々な種類が比較的身近に食べられるようになった。なかには、日本発だが海外で有名になったものも。日本には現在、どんな味や形のものがあるのだろう。

 日本で流通するカキはほとんどが養殖物だ。生物的な種類は国内産の場合、大きく分けて4種類。一般的なのが冬の時期に多く出回る「マガキ」。次に、粒が一回り大きい「岩ガキ」で、夏が旬となる。この2種に比べ多くはないが、九州の有明海沿岸などで収穫される「シカメガキ」「住之江ガキ」がある。海外産まで広げると「アメリカガキ」「オーストラリアガキ」など多数存在する。

■生産量、広島が6割強占めトップ

 農林水産省によると、国内の生産量は2014年に約18万4千トン。都道府県別では広島が11万7千トン弱と6割強を占めてトップ、次いで肥沃な三陸沖が漁場となる宮城(2万トン)が多い。5年前に比べ1割縮小したが、産地主導のブランド化などの取り組みが進み、息を吹き返してきた。一方、勢いが目立つ輸入物は15年が7千トン強(冷凍、くんせい含む)と前年より6割増えた。国別では韓国(600トン弱)、中国(50トン)、米国(40トン)、オーストラリア(20トン)が多い。

 広島や宮城の沿岸で養殖が始まり、盛んになったのは、自然がつくり出した地形が影響しているといわれる。複数の川から水が流れ込む場所が存在し、栄養となる植物プランクトンが多い。波や潮の流れも穏やかで、海水の塩分濃度や温度が養殖に適している。

■「ブランド、有名なもので30種類ほど」

 では、全国で増えているカキのブランドは現在、いくつくらいあるのだろうか。全国にある中央卸売市場のなかで唯一のカキ専門の仲卸会社、東京・大田市場にある山小三に聞いてみた。5代目の山田伸一取締役は「産地が独自にやっているものはかなり多くなるが、有名なものでは30種類程度ある」と話す。同社でも輸入物も合わせ年間20~30種類を取り扱う。ブランド品が全国で増え始めた時期は15年ほど前という。東日本大震災後に三陸産が出回らなくなり、他の産地にも目が向けられるようになったことが大きい。

東京・大田の専門仲卸会社、山小三が新たに手掛ける佐賀産「からつんカキ」

 夏でも海水温が低い北海道産は厚岸で育成する「カキえもん」が年間を通じて出回る。厚岸漁業協同組合(北海道厚岸町)によると、ゆっくり育つことで豊富な栄養を取り込み続け、身はふっくらとし味はコクがあるという。種が厚岸種でなく、宮城種を使用した「マルえもん」もある。飲食店などからの引き合いが多い。山小三では今年から新たに、福岡産「豊前海一粒かき」や熊本産「鏡オイスター」の取り扱いを開始した。その他の高級なものでは、卸値が1個1千円近くする三重産「的矢かき」がある。紫外線による殺菌設備を世界で初めて開発した佐藤養殖場(三重県志摩市)で作られ、出回る量がきわめて少ない。珍しいものでは、通常は水中で養殖するが干潟で育った小粒の大分産「ひがた美人」、広島県などが品種改良により生み出した産卵をしない種の「かき小町」がある。広島県によると、産卵に費やされる栄養が成長に回るため、成長が早いうえ、通常の3倍まで大きくなるのが特徴だ。また、兵庫産「津田宇かき」や岩手の広田湾産が最近、人気を集めているという。

夏でも作られる北海道産「カキえもん」(東京・大田市場の山小三)
厚岸には種の産地が異なる「マルえもん」もある(東京・大田市場の山小三)

 サイズは大きいものから小さいものまで様々。プロから見たおすすめのサイズは「それほど大きくなく、殻が球体に近い『ころっとした』ものがいい」という(山田取締役)。貝柱や内臓のわたのバランスがとれており、一口で全てを堪能できるためだ。

■米国産なのに名前は「クマモト」

海外産のカキは比較的、丸いものが多い(東京・大田市場の山小三)

 輸入物が出回るようになったのは比較的最近のことで、15年前に先代が初めて取り扱ったという。「輸入許可を取るのに12年かかった」と振り返る。今でこそ国産の生食用は品質が高くなったものの、当時は海外産が抜群に良かったという。採種から生産、殺菌にいたるまでシステム化され「技術が進んでいた」ことがある。「もちろん、米国産『クマモト・オイスター』も輸入している」。米国産なのに、名前は「クマモト」。海外ではかなり主流のブランドで、バランスのとれた食味に対する人気が高いという。

 「現在、熊本では育成していません」。県水産振興課の担当者から返ってきたのは意外な答えだった。「終戦後すぐ小ぶりで丸っこい県特有のシカメガキの稚貝を米国へ輸出し始めた」ことが海外に渡ったきっかけ。当時、広島や宮城のマガキでは足りず、1947~58年まで米シアトルに出荷していたという。それまでも県内に生息する天然物は食べられていたが、養殖は手掛けていなかった。

■「幻」のシカメガキ増産に向け実証実験

 熊本産のクマモト育成計画が現在進行中だ。05年に有明海を中心に野生種の調査を行い、生息を確認。07年から九州で幻と呼ばれていた熊本産シカメガキの増産に向けた実証試験が始まった。09年度末からは養殖場での試験養殖を重ねている。種苗生産する際、DNA検査をして種を特定、選別したうえで県の種苗センターから県内生産者(18社)に配られている。それでも、「生産は厳しい」ともらす。近年、北米の主要漁場であるシアトルに比べ海水温が高くなっており、デリケートな種には適さなくなっている。そこで、夏場は室内で過ごさせ、秋口に配布、翌年5月ごろに出荷する流れとした。今ではしだいに成功事例が生まれ始めた。「まずは、18年度に20万個強の生産を目指す。多く育成できれば地域商標をとって地域振興に生かしたい」と力を込める。

■オイスターバーで微妙な味の違い楽しむ

産地によって、見た目や味も様々だ(東京・港の専門店「オストレア」)
大粒な熊本産「鏡オイスター」は、貝柱が全体の半分ほどを占める(東京・港の専門店「オストレア」)

 実際に旬のカキを、オイスターバー「オストレア 新橋店」(東京・港)で食べてみた。この日のおすすめ6種の盛り合わせには、「ひがた美人」、「クッシ オイスター」(カナダ産)、「豊前海一粒かき」、「小長井牡蠣」(長崎産)、「鏡オイスター」、「津田宇かき」が並んでいた。高山達也副店長は「個人の自由ですが」としながらも、「レモンを挟んで時計回りに食べるのがおすすめの食べ方です」という。味が薄いものからだんだんと濃い順番に並べられている。微妙な味の違いが楽しめる仕組みだ。

 「採られた海域により、気候や塩分濃度などの環境が異なり、味や食感は変わる」(高山副店長)と説明があった。平均で1人あたり6個食べるという。

(商品部 高野壮一)

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