仕事も生活も充実したいなら、「裁量権」を手に入れて
川崎貴子さん(ジョヤンテ代表取締役) 第2回
前回、アラフォー女性に足りないのは一歩踏み出す勇気だとお話ししました。アラフォー世代はバランスをとることが上手な人が多く、そのせいか人より前に出たがらない傾向はありますが、実際に企業でマネジャー職に就くといった際、モデルケースがほとんどいないという現状も。これも、踏み出せない理由の一つだと思います。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査(2014年)によると、企業の課長級以上の女性比率は8.3%。会社から「マネジャーをやってくれ」と言われても、周りを見渡すとマネジャーをやっているのは男性ばかり。残業バリバリの姿を見ると、既婚者であれば「今でも家事と仕事の両立で忙しいのにとても無理」と思っても仕方がないことです。日本の場合、家事労働の7割は女性が負担しているというデータもあり、その上さらに出世もせよ、では過酷です。
マネジャーになる=裁量権を手に入れること
でも、考えをこう変えてみてはどうでしょう。マネジャーになるということは、裁量権を手に入れることです。例えば「マネジャーになると会社に遅くまでいるのが当たり前」という風土がまん延しているのなら、手に入れた裁量権を行使して、その風土を変えていけばよいのです。「20時からの会議なんてやりません」と。つまりマネジャーになることは、仕事もプライベートも充実させたい女性にとっては本来、有利なことなんです。
2016年4月1日から、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)」が施行されます。同法律により従業員301人以上の企業は、女性活躍推進のための行動計画を策定することが義務づけられます。もちろん301人以下の中小企業においても努力義務となるので、あらゆる企業が女性活用のための施策を打ってくるでしょう。
政府は2020年までに指導的な立場に就く女性を30%にまで引き上げる目標を掲げています。企業風土を変えるためには女性マネジャーもある程度の人数が必要なので、どんどん立候補したり昇進試験を受けたりすべきです。それがプロフェッショナルへの足がかりにもなります。
今後10年間働き続けるためのスキルを
もう一つ忘れてはならないのは、専門スキルを磨いていくこと。前回もお話ししたとおり、そこそこの仕事でそこそこのキャリアという働き方は今後、なくなっていくと考えられるからです。
向こう10年間食べていけて、体力が落ちてきても知識でカバーできるような働き方を考えてみましょう。例えば今、営業職をしていて、話力に自信があるなら広報のスキルを磨いてみては。販売職をしているなら、トレーナーやスーパーバイザーを目指してみてはどうでしょうか。確かにトレーナーやスーパーバイザーにはすぐになれるものではありませんが、例えば自分の持っている知識を生かして接客マニュアルをつくるなど、自ら提案してみてはどうでしょう。これは会社にとっては非常にありがたいことですよ。
とにかくキャリアは早い者勝ち。最初の一歩は怖いかもしれませんが、踏み出してみるとおそらく今までとは違った景色が見えてきます。自分の成長を実感することで達成感を味わったら、さらにスケールを大きくしていくことができるでしょう。
アラフォー世代は経験値も人脈もあり、気力・体力も充実しています。思い切って一歩を踏み出し、キャリアモデルとして下の世代を導いてほしいですね。
ジョヤンテ代表取締役。埼玉県生まれ、1992年株式会社パソナに入社。97年に退社。同年、女性に特化した人材コンサルティング会社「株式会社ジョヤンテ」を設立。著書に、『愛は技術 何度失敗しても女は幸せになれる。』(ベストセラーズ)、『結婚したい女子のためのハンティング・レッスン』(総合法令出版)、『私たちが仕事をやめてはいけない57の理由』(大和書房)、『上司の頭はまる見え。』(サンマーク出版)など。
(ライター 中村仁美)
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