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睡眠時間の軽視は女性の健康を脅かす「爆弾」に

日経BPヒット総合研究所 黒住紗織

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日経BPヒット総合研究所
エンターテインメント、トレンド、健康・美容、消費、女性と働き方をテーマに、ヒット案内人が世相を切るコラム「ヒットのひみつ」。今回のテーマは、「眠り」。日本の40~50代の女性は世界一睡眠時間が短いのです。この問題を放置すると、女性の健康だけでなく、ひいては、日本の社会まで揺るがしかねません。

朝起きても疲れが取れていない、昼間につい居眠りや昼寝をしてしまう、週末に寝過ぎてしまう、寝る時間が日によってバラバラ……。これらは良い眠りが得られていないサインの一例。あなたは該当していないだろうか?

睡眠不足が心身の健康やエイジングに大きな影響を及ぼすことは近年よく耳にするし、お肌の不調にも表れるので、ほとんどの女性は「"睡眠が大切"なんてことは分かっているわ」と思っているだろう。だが、現実の生活では仕事や家事を優先し、睡眠問題は後回しにしているのではないか。今回のキーワードは「女性の睡眠不足」。女性の睡眠不足を解消することが、日本の未来にとって重要なカギとまで、言えそうなのだ。

世界一眠れていない、日本の40、50代女性

経済協力開発機構(OECD)の国際比較調査(2014年)で、先進国の中で最も睡眠時間が短かったのが日本人だ(グラフ1)。「世界一眠りの悪い国民」であること自体が問題だが、それ以上に気になるのが女性の睡眠時間の短さだ。他国の女性は8時間を上回っているのに、日本女性と韓国女性は7時間台であるうえ、男性より睡眠時間が短い。

中でも、最悪なのが40~50代の女性だ。この世代の女性の睡眠時間は、他世代女性と比べてもダントツに短く、平均6時間台(平成23年社会生活基本調査、グラフ2)。世代別でみれば男性もこの世代が最も眠れていないが、それでも平均睡眠時間は7時間を上回る。日本の40、50代女性は世界一、眠れていないのだ! この状況を見逃せない重要な理由がある。

40、50代女性は、今、日本で最も期待を寄せられている世代といってもいい。安倍政権の一億総活躍政策では女性管理職の積極登用が推進されているが、その中心層となるのはこの世代だろう。そして、女性も退職をできるだけ遅くして、長く働き続けてほしい――というのが社会のメッセージでもある。

さらに、少子化問題でもこの世代が背負う責任は大きい。晩産化が進み、初産が30代後半、40代という人も増えている。昔なら「子供もそろそろ手が離れて……」というのが40、50代女性の大方だったが、いまや子供はまだ乳幼児、学童期という人を当たり前のように見かける。次世代を産み、育てるという責任も、この世代が中心的に担っている。そして親の介護もある。

さらに、この世代は大きな心身の危機にも直面している。更年期だ。

女性は50歳前後まで、女性ホルモンによって様々な病気から体を守られている。しかし40代後半ごろから女性ホルモンは急激に減り、体内環境が大きく変わる。更年期になるとガクンと体は弱り、太りやすくなり、子宮体がんをはじめとするがんや生活習慣病も増え始める。ホルモンの変動が影響し、集中力が落ち、イライラやうつうつといった精神症状に悩まされるのもこの時期だ。将来の寝たきり要因となりかねない骨粗しょう症リスクが急激に高まるのも、閉経後の10年間。この期間に女性の骨量は急減する(グラフ3)。

女性の睡眠不足は日本の未来にも暗雲を呼ぶ

体の変調で心身共につらく、本当ならこの期間はペースダウンをしないと老後の体調にも悪影響が出やすいといわれる更年期に、大車輪の活躍を求められているのが日本の40、50代女性というわけだ。前述の2つの短時間睡眠のデータは、好むと好まざるとにかかわらず、女性たちがその期待に応えているからこその結果とはいえまいか。

少し大げさだが、睡眠時間を削っている女性のおかげで家庭も企業もやっていけている――。そんなふうにも言いたくなるのだが、先を考えるとこれ以上この問題を放置するわけにはいかない。冒頭にも書いた通り、短時間睡眠は健康寿命を縮める原因であり、さまざまな病気のリスクを上げることが分かってきている。このままだと女性の平均寿命と健康寿命の差(平成25年の女性の場合は12.4年)がますます広がってしまう。それは、医療費の増加はもとより、家庭にとっても、企業にとっても大きな損失。女性の睡眠不足は、日本社会に暗雲を呼びつつある。

例えば、短時間睡眠は生活習慣病の引き金となる肥満を引き起こす素因となる。米国の研究では睡眠時間が5時間未満の人は7~8時間の人に比べ、肥満になるリスクが4割増すとの報告がある(グラフ4)。これは、睡眠時間が短いと食欲を増進させる「グレリン」というホルモンの分泌が増え、満腹を感じさせる「レプチン」という食欲抑制ホルモンが減って、食べ過ぎてしまうことも原因の一つと考えられている。閉経(平均閉経年齢は50歳くらい)が近づくことに伴う女性ホルモンの急減も肥満リスクを上げるので、40、50代女性は睡眠不足と閉経のダブルパンチを受けている。

また睡眠不足は糖尿病のリスクを上げるうえ、認知症にも関係しているようなのだ。睡眠不足の日は、記憶力や集中力が低下するのは多くの人が実感しているだろうが、長年の睡眠不足の蓄積が将来の認知機能低下にもつながりそうだとの研究もある[注1]。

睡眠リズムの乱れは、がんリスクを上げる

一方、看護師や客室乗務員に代表されるシフトワーカーのように、睡眠リズムが狂った生活(サーカディアンリズム=体内時計が乱れた生活)も健康への悪影響が大きい。

睡眠リズムが狂うと、傷んだ細胞を修復するなどの役割を持つ成長ホルモンの分泌が乱れ[注2]、睡眠の質を高めるメラトニンというホルモンの出も悪くなる。そうなると、肌のバリア機能が衰えて(グラフ5)見た目の老化が進むだけでなく、生活習慣病のリスクは上がり、がんも増える。例えば乳がんは、夜間勤務や夜間に光を浴びる生活で1~2割高くなるという報告がある[注3]。乳がんは40、50代に最も多く発症し、この世代の女性死因のトップ。まさに、働く女性を狙うがんの代表だ。

女性の健康と美を守る女神ともいえる女性ホルモンが出なくなった閉経後の女性は、本来、メラトニンや成長ホルモンをはじめとするほかのホルモンの力に頼って健康を維持しなくてはならない。しかし、睡眠不足や睡眠リズムの乱れがそうした"お助けホルモン"の働きを弱め、病気そのもののリスクをさらに高める原因となってしまう。

だからこそ今、眠りの重要性にもっとフォーカスし、多くの人にそのことを認識してもらえる情報の発信や商品、サービスの取り組みが必要だ。

科学の目、体系的な提案や啓発が急務

幸いなことに、いい睡眠をとることへの関心は着実に高まっている。矢野経済研究所の考査によると2015年のベッドリネン・寝具小売りの市場の伸びは3.3%と堅調で、睡眠効率を高めることをうたったマットや枕などの機能性商品が売れているという。

ただ、こうした機能性製品の市場拡大には、科学的な根拠が欠かせない時代になっているため、メーカーは製品の機能を客観的に説明できるような研究を進める必要があるだろう。

先行例はある。2012年に54億円だった売り上げが急成長、2015年は150億円に伸びる見込みなのが高機能マットレスパッド「エアウィーヴ」のメーカー、エアウィーヴ。同社は、就寝中の深部体温を測定し、このマットレスパッドの使用で早く眠りにつけ、深い睡眠が得られるなどの研究成果を発表。睡眠学の権威に研究をゆだね、客観的な研究成果を蓄積することで消費者を説得する。「エアウィーヴ」マットレスパッドはシングルサイズでも7万円(税別)だ。

総合的に快眠を支援するブランド「&Free(アンドフリー)」を2015年3月に立ち上げたのは東京西川。各世代向けにオーダーメード枕とマットレスをトータルで提案し、個々にフィッティングサービスを行う。アロマオイルやハーブティー、リラックス音楽のCDなども扱う。「30、40代の女性客が目立つ。たとえば、オーダーメイド枕で2万5000円(税別)と高額商品ではあるが、この年齢になると不調を感じる人が増えるため、それを解消するため睡眠に目を向ける人が増えてくるのではないか」と同社広報担当者は話す。睡眠の値を測定して記録する製品やサービスも登場している。アロマ入浴法や照明の選び方、サプリメントなど、眠りを改善する方法はまだまだある。トータルに快眠をサポートするサービスや製品の提案ができれば、今後ますます市場は伸びてゆくだろう。

当の女性たちも、ことの重要さを認識して眠りの改善を後回しにする生活を変える行動を起こしたい。たとえば、深夜に帰ってくる夫を待って遅くまで起きているのをやめる。男性は、早朝から子供の弁当作りに追われる妻の健康と若々しさ維持のために、せめて就寝時間を早くしてあげなくては、と配慮する。

そして、男性も女性も残業を減らして早く家に帰り、家事も分担するような風潮が主流になれば、子育て、介護面でのメリットだけでなく、女性の睡眠時間改善にも寄与する。

24時間社会という現状に逆らって取り組む必要がある「女性の睡眠改善」には、強い意志が必要だ。だが、今こそ、男女それぞれへの啓発と、社会の仕組みづくりの両面から知恵を絞らなくてはならない。

[注1]Perspect.Psychol.Sci.;10,1,97-137,2015
[注2]Diabetologia;58,4,791-798,2015
[注3]Int.Arch.Occup.Environ.Health;88,5,533-547,2015
黒住紗織(くろずみ・さおり) 日経BPヒット総合研究所主任研究員。日経BP社ビズライフ局プロデューサー。サンケイリビング新聞社を経て、90年、日経BP社入社。『日経レストラン』『日経ベンチャー』などの記者を経て、2000年より『日経ヘルス』編集部。その後『日経ヘルスプルミエ』編集部 編集委員など。女性の健康、予防分野の中で、主に女性医療分野を中心に取材活動を行う。女性の健康とワーク・ライフ・バランス推進員。
[参考] 日経BPヒット総合研究所(http://hitsouken.nikkeibp.co.jp)では、雑誌『日経トレンディ』『日経ウーマン』『日経ヘルス』、オンラインメディア『日経トレンディネット』『日経ウーマンオンライン』を持つ日経BP社が、生活情報関連分野の取材執筆活動から得た知見を基に、企業や自治体の事業活動をサポート。コンサルティングや受託調査、セミナーの開催、ウェブや紙媒体の発行などを手掛けている。

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