女の敵は女? 社会問題の本質、隠すコトバ
女男 ギャップを斬る(水無田気流)
私は仕事に関してあまりえり好みはしないほうだが、ひとつだけ受けないものがある。それは、「女の敵は女」という図式の依頼だ。たとえば、昨年は所沢市で「第2子出産で認可保育園退園」問題が起こった。これは、第1子を認可園に通わせている親が第2子を出産し育児休業を取得した場合、第1子が0歳から2歳の場合は退園となる、との制度の導入により起こった問題である。同様の制度は他の自治体にもみられ、似た境遇の母親たちを中心に、ネット上でも議論が沸き上がった。
すでに第1子を預けている母親は、「2人を同時に自宅で世話するのは大変。せっかくできあがった生活リズムや友達関係から離れるのは子どももつらい」などと主張。一方、待機児童を抱える母親は、「保育先が確保できなければ、自分は職場復帰ができない。育児休業を取得できたならば、譲ってほしい」などと、こちらも切実な意見が目立った。母親同士の争いを揶揄(やゆ)するような意見も見られ、私は嘆息した。問題の根底にあるのは圧倒的な保育園不足であり、母親たちの私怨に落とし込むべきではない。そもそも意見するのが、ほぼ母親ばかりなのも気になった。父親も含めた保護者全般の問題であるはずなのに、と。
1950年代の「主婦論争」から、昨今の女性同士のマタハラまで、この国は「女の敵は女」言説であふれている。背景にあるのは社会構造や制度上の課題なのだが、これらを女性たちに巧妙に見えなくするための文化装置だろうか。だから女性のみなさん、どうか「真の敵」を見極めてくださるようお願いします。
次点で依頼されると困る仕事は、芸能人の年の差婚などが話題になると出てくる「今、おじさんが若い女性にモテるという事実を裏付けてください」といった類のもの。各種統計に鑑みれば、若年層の恋愛観は同世代・同類婚志向が高くなってきており、つまりおじさんはどんどん若い女性にモテなくなってきています、と説明するのだが、相手は諦めない。「では、多数派がモテなくても、モテるおじさんはここが違う! というコメントをいただけますか?」などと言われてしまう。もう本当に、勘弁してください……。
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