トヨタ・ホンダ… ハイブリッド車、新モデル続々
燃費と走り、使い勝手を兼ね備え
ハイブリッド車(HV)が活況だ。約6年半ぶりにフルモデルチェンジした4代目「プリウス」(トヨタ自動車)が走りや使い勝手を大幅に向上させたほか、今年はミニバンなどで各社の新モデルも相次ぎ登場する見通しだ。燃費も大幅に改善。HVをはじめとするエコカーは今後、ますます自動車市場を引っ張る存在となりそうだ。
エコカーの代名詞であり、国内の自動車市場をけん引してきたプリウス。4代目は2015年12月の販売開始から、1カ月間で約10万台を受注した。月間販売目標の約8倍で、納車まで3~7カ月という人気だ。
新型になるたび注目されるガソリン1リットル当たりの燃費(JC08モード)は、世界最高レベルの40.8キロメートルに到達。旧型の32.6キロメートルから約25%も改善された。エンジンとHVシステムは基本的に旧型を継承したが、エンジンの熱効率を40%に改善。モーターも小型軽量化するなど大幅に改良した。
今回のプリウスで明確になったのは、「エコ」だけに終わらず、進化の新段階に入ったことだ。開発責任者の豊島浩二・製品企画本部チーフエンジニアは「これまではエコカーだからとドライバーが我慢を強いられる部分があった」と振り返る。新型は燃費のための我慢も言い訳もいらない、走らせて楽しいクルマを目指したわけだ。
事実、主な改良点には走行性能に寄与する部分が多い。車体は新しい構造や溶接技術の採用で剛性を60%向上。重いHVシステムの搭載位置を下げるなどして重心を低くし、走行時の安定性は大幅に高まった。
燃費一辺倒ではないことは個性的な外観からも一目瞭然だ。
「これが、プリウス?」「けっこうエロい」。CMで俳優の福山雅治が口にするセリフでも変化を訴求。3代目までの「真面目でエコ」な優等生イメージの脱却を図ったわけだ。
狙いが見かけ倒しではないことは走らせると実感できた。アクセルを踏み込んだ瞬間から滑らかに力強く加速し、路面の段差もしなやかに乗り越える。静粛性も高まった。旧型の初期モデルで目立った走りの荒さや動きの緩慢さ、車体がねじれるような感覚は解消された。ステアリング操作に車体が素直に反応。重心が下がったこともあり、交差点や高速道路のカーブなどでの安定性が高まった。
価格は最安クラスで約20万円上がったが、エコカーとしてだけでなく、クルマとして一段上のレベルに到達したと言える。
HVは今年も新モデルが目白押しだ。最注目は新型プリウスから派生した小型SUV(多目的スポーツ車)「C-HR」。1.2リットルのガソリンターボエンジン車とHVが投入されるもようで、HVの燃費は30キロメートル超の見通し。価格は250万円程度からとみられる。発売は秋以降の予想なので、新型プリウスと比較検討してもいい。
ミニバンではホンダ「オデッセイ ハイブリッド」が2月に発売。「アコード ハイブリッド」で定評ある2モーター式のHVシステムは、重量があるクルマほど燃費改善効果が大きいとされる。カタログ燃費は26キロメートルで、競合するトヨタ「エスティマハイブリッド」の18キロメートルを大幅に上回る。
このほかホンダ「フリード」や日産「セレナ」のHV版も夏前後に発売される見通し。ミニバンのHVを検討するなら、これらを待つのも手だ。
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HVの進化版がプラグインハイブリッド車(PHV)。充電すれば電気自動車(EV)としても使え、三菱自動車「アウトランダーPHEV」が広く知られる。
今年は欧州勢を中心にPHV投入が相次いでおり、フォルクスワーゲンは15年に発売した「ゴルフGTE」に加え、「パサート」「ティグアン」でもPHVを発売する見通し。メルセデスベンツは1月に国内発売した「C350e」に続きEクラスでも展開。BMWもPHV2モデルを1月に受注開始した。
PHVはEVの鋭い加速感や静粛性と、ガソリン車の長い航続距離という特徴を併せ持つ。欧州勢は価格が500万円以上するが、高級なエコカーを求めるなら選択肢となる。
(日経トレンディ3月号の記事を再構成。文・滝本大輔)
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