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英語は幼いうちに打て? 進む早期化、アジア追う

2016/2/14

岡山県総社市の昭和小学校は市の「英語特区」に指定され、1年生から重点的な英語教育を実施する

 小学校で英語が必修化されて約5年。子ども時代から英語を身につけさせようとする動きが加速している。グローバル人材を育てる試みはうまくいくのか。現状を探った。

 「Which do you like?」「Apple!」。英国人のALT(外国語指導助手)の呼びかけに子どもたちが元気に答える。1月末、岡山県総社市にある市立昭和小学校が公開した1年生の授業。同校に子どもを進学させようと多数の参観者が詰めかけた。

 「早くから始めたおかげで英語を聞く耳が育ってきた」と池上真由美校長は目を細める。同校はALTなどが重点配置され、1年生から年に20コマの英語の授業がある。

 総社市は過疎地域を活性化させる狙いで、2014年度に同校を含む5つの幼稚園・小中学校を独自の「英語特区」に指定。今や学区外から児童・生徒全体の2割を集める人気だ。教育委員会は「一定の効果があった」と判断し、来年度には特区を拡大する。

■国語以外は英語で

 国の学習指導要領で、歌やゲームなどで英語に親しむ「外国語活動」が小学校5~6年生に必修化されたのは11年度。最近は総社市のように、もっと早い段階から始める自治体も全国的に増えている。

 経済的に余裕のある家庭向けに、より高度な英語教育を施す環境も整ってきた。群馬県玉村町の「フェリーチェ玉村国際小学校」は昨春、国の特区制度を使い、私塾から国内2例目となる「株式会社立」小学校になった。2年生の生活科の授業をのぞくと、記者には聞き取れないほど流ちょうな英語で児童と教師がやりとりを繰り広げていた。

 同校の特徴は一般教科を英語で学ぶ「イマージョン教育」。付属の認定こども園との一貫教育で、小学校では国語(日本語)以外の大半の授業を英語で受ける。児童は英語名で呼び合い、4年生までに半分程度が英検2級に合格する。年間90万円以上の学費がかかるが、英語の必要性を痛感した保護者が子どもに苦労をさせたくないと思って通わせるケースが多いという。

 学習塾の早稲田アカデミーは、英語専門塾「早稲田アカデミーIBS」を東京・お茶の水に12年に開校した。洋書の図書館を備え、多読で英語力を高める独自の指導方法が特徴だ。小学生のうちから海外の大学などへの進学を目指している生徒が多く、なかには長野県や福島県から新幹線で通学してくる子もいる。

 今後は国の学習指導要領でも、20年度に外国語活動が小学校3~4年生に前倒しされ、5~6年生では正式の教科に格上げされる見込みだ。

■教員育成に課題

 英語教育の早期化には慎重な専門家もいる。明海大学の大津由紀雄・副学長は「むしろ中学生以降の英語教育を見直すべきだ」との立場だ。

 ただ海外では韓国が1997年、中国と台湾も2001年から小学校で英語教育を導入済み。上智大学の吉田研作・言語教育研究センター長は「世界的には小学校の1年生か3年生で英語を始める国が圧倒的に多い」と説明する。

 英語能力テスト「TOEFL」の結果をみると、日本人の平均点はアジアで最低レベルだ。国内ではグローバル人材の育成を求める経済界からの要請もあり、今後も早期化の流れは続くとみられる。

 課題は学校の指導体制だ。英語に不慣れな教師に教わることで、かえって英語が苦手になる危険性は多くの専門家が指摘する。「なかには見ていて途中で止めたくなるような授業をしている小学校もある」と東京学芸大学の馬場哲生教授は打ち明ける。

 文部科学省の調査では、小学校から英語を学び始めた現在の中学3年生でも英語力は国の目標に遠く及ばず、4割以上が「英語を好きではない」と答えた。教員研修や外部人材の活用など、質の高い英語教育の体制づくりは喫緊の課題といえる。

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■「話せない…」、日本の教育批判する声も

 日本でも英語が苦手だと肩身が狭くなるばかりだ。ツイッターでも「英語のプレゼンぼろぼろ。やっぱり英語の勉強しなくちゃ」「外国人に声をかけられ、幼児並みの片言の英語で案内した。これからは英語ホント必要だよね」などと嘆く声があった。

 早期教育については「電車の中の親子連れが、おもむろに英語の絵本出して音読し始めるが、子供(推定3歳)の発音があまりにもネイティブで早期教育の恐ろしさに震えが止まらない」という驚きの一方、「(英語よりも)正しい言葉遣いや一般教養、マナーを先に身につけてほしい」と否定的な見解もみられた。

 日本の英語教育に対して「高卒時でネイティブの幼児レベルの会話すらできないのですから、教育内容が狂っている証拠でしょう」と手厳しい意見も。調査はホットリンクの協力を得た。

(本田幸久)

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