食べる茶わんに究極金平糖、歴史ある取り寄せ甘味
ニッポンのうまいもの
お取り寄せスイーツといえば、創意工夫を凝らした新しい商品が注目を集めがちだ。しかし、逸品は新作だけに限らない。全国各地には、その土地の文化に根差した珍しい「菓子」がまだまだ眠っている。
一つひとつ手作りされる、菓子でできた抹茶茶わん
例えば茶道の文化が培われてきた京都には、食べることができる抹茶茶わんがある。甘春堂の「茶寿器(ちゃじゅのうつわ)」がそれ。特別な祝宴に出すために考案された菓子で、100年以上前から作られているという。器は小麦粉、玄米から作られる寒梅粉とニッキでできている。うわぐすりに見える白い部分は、実は砂糖だ。
しかも、見た目が似ているだけでなく、実際に抹茶をたてられることにさらに驚く。抹茶を入れると、器から砂糖やニッキが少しずつ溶け出す。味がほんのりと甘くなり、ニッキの香りがふんわりと立つ。
逆に器には抹茶が染み込むので、2、3回茶をたてた後で器を割って食べると、抹茶の香りが加わって味わいが深まる。眺めてよし、使ってよし、さらには食べてよしと、三拍子そろった菓子といえる。職人が一つひとつ手ひねりで作る「一点もの」であることも売り。日本ならではの菓子として、海外への贈り物などにも喜ばれるだろう。
戦前から作られている地元で愛される菓子
その土地では定番だが、全国的には知られていない菓子が手軽に入手できるのもお取り寄せの強み。例えば、山梨の銘菓といえば「信玄餅」が有名だが、澤田屋の「くろ玉」はその陰に隠れた実力派。戦後生まれで土産物として人気となった信玄餅に対し、こちらは戦前から地元の人々に愛され続けてきた。球状にしたエンドウ豆のあんを、90℃に熱した黒糖のようかんの中に投げ入れてコーティングするという。甘さが控えめで食べやすい。新作としてサツマイモのあんをキャラメルで覆った「キャラ玉」も加わった。
冷えても固くならないバター入りの餅
冬場に雪深い山に入って猟をするマタギの里として知られる秋田県北秋田市からは、40年以上食べられてきた「バター餅」が取り寄せ可能。もち米にバターや小麦粉、卵黄、砂糖などを混ぜ合わせて作られている。バターが入っていることで、冷えたり、時間がたったりしても固くなりにくく、もちもちとした食感が特徴だ。バターの香りがして、ほんのり甘かった。狩猟の際の携行食として重宝されていたというのもうなずける。
日本最古の抹茶アイスはレトロな味わいが新鮮
一方、温暖な和歌山で親しまれている「グリーンソフト」は、小ぶりな抹茶アイス。今では定番となったフレーバーだが、実はこのグリーンソフトが日本で最初といわれている。江戸時代創業のお茶の専門店・玉林園が1958年に発売した。暑くて緑茶の売り上げが落ちる夏場に何か売れるものを、という発想から生まれたのだという。小ぶりなコーンタイプで、もなかで作った蓋が付く。味はあっさりで、食感はシャリシャリとしてシャーベットに近い。最近のアイスクリームは濃厚な味わいと滑らかな食感が主流だが、このグリーンソフトは真逆。さくっとした食感とサッパリした後味が、今は逆に新鮮に感じられる。
日本唯一の専門店が作る「究極の金平糖」
京都にある緑寿庵清水は日本で唯一の金平糖専門店。その「華やか」は計6種入りのセット。究極の金平糖4種(チョコレート、キャラメルあられ、ブランデー、梅酒)と玉あられの金平糖2種(紫蘇、柚子)が入っている。なかでもブランデー入りのものは、その芳醇な香りに驚いた。器は清水焼だ。
徳川家康がきっかけと言われる「生せんべい」
愛知にある総本家田中屋の「生せんべい」は半生の餅菓子。焼く前の煎餅が農家の庭先に干してあるのを徳川家康が見つけ、所望したのが始まりと伝わる。ういろうや生八つ橋にも似るが、それ以上にもちもちとした食感。もち米に黒糖や蜂蜜を混ぜて練っており、甘さも濃厚だ。
青かびチーズを使ったまろやかなジェラート
宮崎の「ゴルゴンゾーラジェラート」は霧島山麓の牧場の牛乳と、2種類のゴルゴンゾーラチーズを組み合わせた。クセのあるチーズだが、ジェラートにすることで後味がまろやかになり食べやすかった。
口溶け新食感、マシュマロを巻いたロールケーキ
神戸マシュマロ浪漫はロールケーキの外側に、クリームではなく薄く伸ばしたマシュマロを巻いた新種スイーツを作っている。口の中に入れると気泡がシュワッと溶ける、ムースのような食感が新鮮だった。
(日経トレンディ編集部)
[日経トレンディ2015年11月号の記事を再構成]
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