米大作映画がけん引、一気に広がった4Dシアター
日経エンタテインメント!
映画館で3Dメガネをかけて楽しむ3D映画は、今や映画鑑賞の定番だが、2015年は「4D映画」を楽しめる映画館が急増した。4Dは、映画の場面に合わせて、座席が遊園地のライド系アトラクションのように動いたり、テーマパークの体感シアターのように、風や霧、光、香りなどを出す装置を備えている。映像は2D、3Dのいずれにも対応し、3D版と合わせて上映される場合は、立体的な映像とともに体感を楽しめる。
2015年8月5日公開の『ジュラシック・ワールド』では4D版の満席が続いた。テーマパークが舞台で、登場人物がヘリコプターやライドで場内を回ったり、恐竜から逃げるシーンがある。それが4Dの体感力に合った。
4D上映をしたのは合計21スクリーン。2D、3D合わせて353館794スクリーンという大規模で公開された同作ではごく一部だが、その少なさが逆に、人気に火をつけたようだ。この夏の超大作であり、メディアで"夏休みに混雑している地元スポット"として紹介されたこともあって、ツイッターなどの口コミで広がり、4Dが完売する状況が続いた。今作で4Dが全興収に占める割合は約7%で、92億円に対して5億円以上の売り上げをもたらした。
「鑑賞」から「体感」へ
現在、4D映画館には「4DX」と「MX4D」がある。いずれも座席が振動したり、風や光、香りが出るといった、同様の体感が味わえる。海外では、入場料金が上がること、4Dの体感を鑑賞者にほぼ等しく提供するために席数が100から300と少なくなることから、大型の劇場が主流の北米市場ではあまり普及しておらず、今のところ、南米や欧州のほか、中国などアジア圏で広がっている。
現在、全国で4DXを最も多く展開しているのはユナイテッド・シネマで、2014年の東京・豊洲に加えて、15年の終わりまでに、11スクリーンを開設した。
一般に、既存の2D劇場を4Dに改装すると1スクリーン当たり2億円弱の投資が必要とされる。それでも4Dの好調ぶりから、「映画だけでなく、様々なコンテンツにチャレンジしていきたい」(ユナイテッド・シネマ 営業部 梶谷武志氏)と興行界の4Dに対する期待は大きい。同社は2015年12月から、ファンの間で評価が高かった『ジュラシック・ワールド』『ベイマックス』『パシフィック・リム』などを一部劇場でリバイバル上映するなど、さらに4DXの認知を広めるなどの取り組みを実施している。
情報感度の高い層が口コミ
15年4月から4D映画館の運営を始めたTOHOシネマズは、営業中の施設を含め、この冬にMX4Dを合計10スクリーンにまで増やした。同社の劇場でも夏休みは『ジュラシック・ワールド』『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』のMX4Dの完売状態が続いた。「新宿、六本木という東京の中心に劇場があり、情報感度の高い大人や若者が多く来場するので、彼らの高い口コミ力でMX4Dの人気が高まった」(TOHOシネマズ マーケティング室長の平松義斗氏)。今後、劇場を増やすだけでなく、15年の東京国際映画祭でMX4D版が上映されて好評だった『ガンダムUC ep7』を再上映するなど、4Dコンテンツの拡充にも努めていく。
そして、2015年末から4D映画館のさらなる普及の原動力になっているのが、公開中の『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』だ。同作も4D版が好調だ。「興収100億円超のヒットが見込まれるだけに、今作の売り上げだけで、4Dの投資は回収できてしまうのではないか」(業界関係者)という声もある。公開に合わせて各社が4D映画館の新設を発表しており、15年が建設ラッシュの"4D元年"となった。
(日経エンタテインメント! 白倉資大)
[日経エンタテインメント! 2016年1月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。