男性は家庭に、女性は仕事に 正社員増やし残業減らせ
池田心豪
男女 ギャップを斬る
2016年はどのような年になるだろうか。春から女性活躍推進法が施行される。日本は女性が活躍できる社会になるだろうか。
その成否の鍵は男性の働き方にある。責任の重い仕事は往々にして労働時間が長い。その責任を果たすために男性が毎日夜遅くまで残業できるのは食事の支度、洗濯といった家事や子どもの世話を妻がしているからである。その男性と同じ仕事を既婚女性が無理なくできるために男性の残業を減らさなければならない。夫婦が交代で夕食の支度や保育園の迎えをするなら残業は週2日程度に収めるべきだろう。
そのために正社員の増員を労使は検討する必要がある。経営スリム化を進めてきた企業は正社員の数を限界まで絞り込んでいる。その仕事の一部はパートや派遣社員に代替されたが、正社員1人当たりの業務量も増えている。
たとえば、管理職が一般社員の仕事を兼務する「プレイングマネジャー」が増加している。所定時間は部下のマネジメント業務をし、自分の担当業務は残業でこなす。そうした過剰な仕事を切り分けるために正社員を増やすのである。
ワークシェアリングの先進国であるオランダはパートを増やし、その時間当たりの賃金を同じ仕事のフルタイムと同じにして既婚女性の就業を後押しした。有名な同一労働同一賃金原則である。だが、一昨年オランダ政府を訪問して聞いた話によると、同国でもパートで働く女性の経済的自立度は低い。時間当たりの賃金が高くても労働時間が短ければ食べていける収入にはならない。主としてフルタイムで働く男性との賃金格差も問題にされていた。オランダにはパートの管理職もいるが、既婚女性に多い週3日勤務で昇進するのは難しいそうだ。
時間当たりの賃金が良くても短時間労働は収入やキャリアにマイナスという問題は、日本の短時間正社員にも通じる。女性活躍を進めるなら女性がフルタイムで働きやすい環境をつくる必要がある。夫が週3日定時退勤して家事・育児を担うようになれば、妻はフルタイムで働きやすくなるに違いない。週に2日ぐらいは残業もできるだろう。「男性は家庭に、女性は仕事に」である。
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