ダンスブームで注目の新ジャンル「直輸入EDM」とは
日経エンタテインメント!
エレクトロニック・ダンス・ミュージックの略である「EDM」は、本来はかなり広い範囲のダンスミュージックを示す。ただ最近は、きらびやかな高音域のシンセサイザーや、リズムを刻む重低音に特徴がある楽曲を指すことが多い。
2000年代半ばからハウスやテクノの発展形として欧米の若手DJを中心に盛り上がり、10年代に入ってからは海外チャートの常連に。その波を受けて、EDMの要素をいち早く取り入れたJ‐POPもあった。しかし15年は、海外で人気のイベントをそのまま日本でも行ったり、現地の第一線アーティストとコラボする、言わば「直輸入EDM」がトレンドとなった。
最大の成功例が2015年9月に東京・お台場で開催されたEDMを中心とした総合ダンスミュージックフェスの「ULTRA JAPAN」。第2回の15年は、来場者数が9万人と前年から倍増した。
当初は、DJがステージ上で音楽を流し続けるというクラブミュージック型のフェスが日本には向かないのではという声もあったという。しかし、クリエイティブディレクターの小橋賢児氏は、現地のスタイルにこだわった。「来場してもらえれば絶対に楽しんでもらえる自信があった。そのために、音楽の中身と同じくらいにファッション性やお祭り感を事前に盛り上げ『よく分からないけど何か海外から面白いフェスが来た』と伝わるように配慮した」(小橋氏)。
実際、これまで夏フェスには足を運ばなかったような層が、ファッショナブルなスタイルでお台場に集まり、単なる目新しいフェスとしてだけでなく、新しいカルチャーの誕生と受け止められた。
高まるDJの重要性
国内のミュージシャンも海外のアーティストと積極的にコラボ。SEKAI NO OWARIがニッキー・ロメロと組んだ『Dragon Night』が14年末から大ヒット。三代目J Soul Brothersが7月に発売した『SummerMadness』はアフロジャックとのコラボ曲だ。どちらも、サビの部分に歌詞がない「ドロップ」を設けるなどEDMの"作法"を導入している。
この流れを受け今後高まりそうなのが、DJの重要性。単なるクラブの選曲係ではなく、メロディーからサウンドまで一手に手がけるトラックメーカーとしての役割を求められることになりそうだ。海外ではすでに、EDM系のDJ兼トラックメーカーとポップアーティストがコラボして次々とヒット曲を生み出している。
日本でも、ULTRA JAPANのメインステージに2年連続で上がったBANVOXなど、注目のDJ兼トラックメーカーでもあるプロデューサーが台頭している。「今の若手のプロデューサーは、フェス会場で客の反応に応じてプレイするうえ、制作段階でも積極的に楽曲をSNSに上げて意見を聞くなど、リスナーとインタラクティブな関係を構築することに長(た)けている」とBANVOXを手がけるワーナーミュージック・ジャパンの川上智大氏は指摘する。こうしたクリエイターが今後の日本の音楽シーンをけん引していく可能性は高まりそうだ。
(日経エンタテインメント! 上原太郎)
[日経エンタテインメント! 2016年1月号の記事を再構成]
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