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カリスマの直言

今年は企業統治の「見える化」を 鍛えよ対話力(渋沢健) コモンズ投信会長

2016/1/3

「2016年の干支は丙申(ひのえさる)。前回の丙申、1956年の経済白書には『もはや戦後ではない』という有名な文言が掲載されている。また、国際連合に加盟し、国際社会の一員として認められた。それまで目に見えなかった事柄が、形になって現れてきた年だ。今年も今まで取り組んできた様々な事柄が、形として目に見えてくる年になることに期待したい」

 新年を迎えたことで、これからの1年間がどのように展開するか関心が高まるが、たった1年でも未来を正確に予測することは不可能である。しかしながら、宇宙という大自然界に鉄則があるとすれば、それは周期性だ。様々な長短期のリズムが混在しているが、ものごとが永遠に一直線に進み続けることはない。未来は、必ずうねりながら到来する。これは人間の経済社会も例外ではない。経済には季節のような周期性があるし、相場のチャートを眺めると、様々な周期のリズム感が浮かび上がってくる。

 私が見通しとして参考にする周期性は60年だ。還暦の60年は生まれた年とまた同じ干支(えと)の年を迎えて、出発点に戻って再スタートを切ることだ。誤解を招きたくないので付け加えると、干支を「占い」ではなく、古代から伝わっている周期性の経験則の哲学という位置付けで、あくまでも頭の体操として参考にしている。また、1世代=30年と考えると、自分自身の当事者としての記憶は、せいぜい祖父母の話を聞けた2世代前の60年であり、この人間の記憶喪失が経済社会の周期性を招いているとも考えられるのでフィット感がある。

 2016年の干支は丙申(ひのえさる)だ。前回の丙申にあたる1956年の経済白書には「もはや戦後ではない」という有名な文言が掲載されている。敗戦した日本の復興という特需要因ではなく、本格的な成長期に入ったという心強いメッセージだ。また、同年に、日本は国際連合に加盟し、国際社会の一員として認められることになった。それまで、目に見えなかった事柄が、形になって現れてきた年といえるであろう。

 今回の丙申も今まで取り組んできた様々な事柄が、形として目に見えてくる年になることに期待したい。今までは、超低金利の金融政策が円安を招き、企業業績の追い風となった。輸出企業だけではなく、中国人の「爆買い」など外国人観光客の急増により「内需」も活性化された。内需を、顧客が輸送コストまで負担して製品を運んでくれる日本の究極の輸出産業にしてくれた円安の効果は大きい。

 ただ、爆買いはピークを過ぎたという観測もある。中国人が決済に使うデビットカードである「銀聯」(ぎんれん)は現在まで世界で50億枚数ほど発行されているといわれるが、今後の使用について制限されると中国政府が発表しているようだ。日本政府観光局の訪日外国人客数のデータによると、中国人の観光客数の前年同月比の推移は15年4月(約2.1倍)、5月(約2.3倍)、6月(約2.7倍)、7月(約2.1倍)、8月(約2.3倍)と絶好調であったが、チャイナ・ショック以降の9月(約2.0倍)、10月(約2.0倍)とややスピード調整しており、直近の11月(約1.8倍)はさらに減速している。いずれにしても高い水準ではあるが、ピークを打った感がある。

12月中旬に訪日したビル・ゲイツ氏の講演で、ガバナンスが重視される時代において、企業フィランソロピー(社会貢献)の考え方について質問した。ゲイツ氏からは「それぞれによって考え方があると思うが、全く行わないことはFoolishであると思う」という答えが返ってきた

 また、先月の米連邦準備理事会(FRB)の9年半ぶりの利上げに対して日本の金融政策の方向性には変化がないので、構造的な円安は変わらないはずだ。ただ、FRBが利上げしたことによって当面の再利上げが遠のいて、日銀の金融緩和の手詰まり感の観測が広まるようだと一段の円安は見込めなくなる。逆に円高になる側面もあるかもしれない。そう考えたときに企業業績の成長は円安効果が限定的となり、期待外れの1年になる可能性が高まる。

 つまり、円安や爆買いという特需要因が失せた16年の企業業績には本源的な価値創造が不可欠だ。中国人の爆買いがピークを越えても、億人単位で誕生した中産階級の需要に応えられる日本企業はたくさん存在しているはずだ。また、目先の為替動向に惑わされず、未来の価値創造に不可欠な研究開発や設備投資を戦略的に継続する日本企業への期待が高まる。そして、企業の持続的な価値創造を支える原則に、コーポレートガバナンス(企業統治)の重要性がますます高まる1年になるであろう。

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