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スコットランドの海岸に恐竜の足跡を大量発見

日経ナショナル ジオグラフィック社

2015/12/20

ナショナルジオグラフィック日本版

新たに見つかった恐竜の足跡から、かつて巨大な竜脚類がスコットランドの海岸を闊歩(かっぽ)していたことが明らかとなった。(ILLUSTRATION BY JON HOAD)

 スコットランドにあるスカイ島の海岸で、はるか昔に大型で首の長い恐竜が残したと思われる数百もの足跡が見つかった。

 スコットランドで一度にこれだけ多数の足跡が発見されたのは初めてのことだ。これらの足跡から、史上最大級の大型恐竜を含む竜脚類が、しばしば海辺にやってきていたことが明らかになった。

スコットランドのスカイ島には、数百もの恐竜の足跡が残されていた。(PHOTOGRAPH BY STEPHEN BRUSATTE)

 巨大な竜脚類と水との関係は、長い間論争の的になっていた。以前は、大きな体を支えることのできる沼地を好んでいたと考えられていたが、「恐竜ルネサンス」と呼ばれた1970~80年代に多くの発見がもたらされ、恐竜に対するイメージは大きく変わった。その巨体と比較すると、竜脚類は驚くほど体重が軽かったことが分かったのである。湖に入っても、水底に足をつくというよりは、浮かんでいるという方が近かったと考えられる。それ以降、竜脚類は蒸し暑い沼地ではなく、むしろ森林の中にいることが多かったのだろうと考えられるようになった。

 そして、今回発見された足跡からも分かるように、中にはラグーン(潟)の近くや海岸へもしばしば足を運んでいた竜脚類がいたという見方も有力になってきている。スカイ島の地質を見れば、彼らが汽水性のラグーンの周辺を歩いていたことは明らかだ。

■「空白の時代」埋める大発見

 英エジンバラ大学の古生物学者スティーブン・ブルサット氏がスカイ島へ調査に入ったきっかけは、ある地質学者がここで骨を発見したことだった。ブルサット氏は、「島の北東に長く延びる海岸線まで出かけていきました」と語る。魚類の化石専門家トム・シャラン氏と一緒に、1日かけて探しても、出てくるものはサメの歯やその他細かい化石ばかりだった。ところがふと、何か穴のようなものが目に留まった。よく調べてみると、それは恐竜の足跡だった。

 これをきっかけに、縦15メートル、横25メートルほどのエリアに次々と足跡を発見した。

 しかし、特筆すべきは発見現場の広さだけではない。スカイ島の足跡は、1億6100万年前のジュラ紀中期にまで遡る。この時期は、ブルサット氏によると「恐竜の進化の過程において、分かっていないことが最も多い、空白の時代のひとつ」であるという。新たに発見された足跡が、この謎多き時代にどんな恐竜がここにすみ、どのような行動をとっていたかについて、新たな情報をもたらしてくれるかもしれない。

 米エモリー大学の古生物学者アンソニー・マーティン氏も、ジュラ紀中期の岩から恐竜の骨が見つかることはめったにないと話す。「恐竜進化の空白部分を埋めてくれる大変貴重なものです」と、マーティン氏。

スコットランドで発見された竜脚類の足跡には、つま先部分の輪郭が残る。(PHOTOGRAPH BY STEPHEN BRUSATTE)

 足跡を残した恐竜の正体は特定できない。恐竜が文字通りその足跡の上で死んだのでなければ、足の骨を足跡と一致させることはほぼ不可能である。

 しかしブルサット氏の研究チームは、足跡を調べた結果それが竜脚類のものであることまでは突き止めることができた。その存在自体が取りざたされているブロントサウルスか、あるいはその仲間で、体の中心線に沿って比較的狭い幅で歩く種だったのではないかと思われる。ブルサット氏は、このような足跡を残しそうな恐竜として、ジュラ紀中期のケティオサウルスを挙げた。ケティオサウルスは、恐竜の中でも最も早く名前が付けられた種でもある。

■ラグーンへやってきた理由は?

 これらの恐竜が歩き回っていた古代の環境について分かった事実も、意外だった。

 はるか昔に、竜脚類が海辺やラグーン、湿地帯周辺をうろついていた理由はまだよくわかっていない。食べ物が豊富にあったか、敵から身を守りやすかったのか、あるいはほかの理由があったのだろうと、ブルサット氏は言う。

 マーティン氏も、海岸で竜脚類の足跡が見つかったとしてもそれほど驚くことではないという。平坦で歩きやすい海岸には、天敵が隠れて獲物を待ち伏せできる場所がないため、竜脚類は安心して通り抜けることができたに違いない。

 そのため、基本的に陸上で暮らす竜脚類だが、たまに水で足を濡らすこともあったのだろう。ブルサット氏は言う。「おそらく、恐竜は私たちが考えている以上に様々なことができて、様々な場所にすんでいたのではないでしょうか」

(文 Brian Switek、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2015年12月4日付]

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