マネー研究所

不動産リポート

中古マンション価格頭打ちか 不動産市場の変調 不動産コンサルタント 長嶋修

2015/12/2

 都心の中古マンション市場に一服感が出はじめた。東日本不動産流通機構によれば、東京都心3区(中央、千代田、港区)における10月の中古マンション成約平米単価は103万9800円と過去最高水準になった。成約数に鈍化傾向が見られる一方で新規登録は多く、在庫が大幅に増加していて、このところ一本調子で上昇してきた都心マンション価格に頭打ち感が出てきた。これは「一服感」といった程度のものなのか。それとも、しばしばささやかれるように「バブル」が弾ける予兆なのだろうか。

■不動産に流れ込むマネー

 日銀の統計によると、2014年度の不動産業向け設備資金の新規貸し出しは、銀行が10兆1549億円と1989年度のバブル期や、プチバブルと呼ばれた2007年度並みに膨らんだ。さらに貸出残高は64兆9161億円と、プチバブル期をはるかに上回る水準だ。

日本銀行資料より長嶋修事務所作成

 ニューヨーク、ロンドン、パリ、香港、上海、台北など世界の他都市に比べれば東京の不動産価格は割安だとのデータもある。日本不動産研究所が発表した「第5回国際不動産価格賃料指数(2015年10月現在)」によると、高級住宅(ハイエンドクラス)のマンション価格は、東京を100とすると香港233、台北155、上海150、ニューヨーク173、ロンドン337。東京をバブルというのであれば、リーマン・ショック後の世界的な金融緩和の中で不動産にマネーが流れ込み、世界の他都市もバブル化していると見立てる必要があるかもしれない。

東日本不動産流通機構のデータより長嶋修事務所作成

 いずれにせよ、東京五輪開催前、少なくとも2018年あたりまでは安泰だろうとの見方が大勢であった都心マンション市場は、すでに頭打ち感が出てきた。この後ソフトランディングできるか、大きく崩壊するのかは不透明だ。

■アパートの空室率が急増

 消費増税前の駆け込みや相続増税強化の流れから、新築木造アパート建設がかなり進み、空室率が増加しているのも非常に気になるところだ。

 信用金庫の貸し出し意欲は旺盛で、14年度の不動産業向けの新規貸し出しは2兆1002億円、貸出残高は14兆2556億円と過去最高を突破した。

 また株式会社タスの「賃貸住宅市場レポート」によれば、1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)の木造、軽量鉄骨アパートの空室率が15年度に入って如実に増加している。同レポートによると、特に神奈川県の悪化が顕著で、10年ごろまで20ポイント前後で推移していた新築賃貸住宅の空室率指数が、15年6月時点では44ポイント近くまで上昇しているという。

 相続増税対策などから新築アパート建設は進むも空室は増加、各基礎自治体は空き家対策費の計上に迫られる。この状態から脱するには、以前のコラム「空き家対策と同時に住宅の総量規制が必要な理由」で指摘したとおり、OECD諸国の多くで行われている住宅総量目安の設定や、街の成長管理計画が必要だが、いまだその動きは見られない。

 日本の住宅政策はいま、岐路に立っている。折しも現在、国土交通省では5年に1度の「住生活基本計画」見直しの真っ最中だ。16年から行う政策の中にこうした計画が盛り込まれなければ、13年時点で820万戸の空き家が今後5年でさらに増加するのは必至だ。

長嶋修(ながしま・おさむ) 1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社「さくら事務所(http://sakurajimusyo.com/)」を設立、現会長。「第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント」の第一人者。国土交通省・経済産業省などの委員を歴任し、2008年4月、ホームインスペクション(住宅診断)の普及・公認資格制度を整えるため、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会を設立し、初代理事長に就任。『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ新書)など、著書多数。

[特集]マンション市場の行方、今は買い時・売り時か?

キーワードは資産価値、職住近接…
買い替え層にもチャンス
首都圏・関西圏の注目エリアは――

>> 白金 >> 湾岸 >> 3A >> 阪急沿線 

 NIKKEI JUTAKU SEARCH

マネー研究所新着記事