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「食べ残さない」日本へ変身 高まる意識、震災も影響

2015/11/22

 まだ食べられるにもかかわらず廃棄される「食品ロス」を減らす動きが盛んだ。無駄をなくそうという消費者意識の高まりが、一層の取り組みに追い風となっている。

 都内に住む歯科医師の新井典子さん(40)は月に2~3回、インターネットで飲み物やレトルト食品をまとめ買いする。賞味期限が近づくなどした食品が定価の半額以下で買えるからだ。「とにかく安いし、食品ロスの解消に役立てる満足感もある」と話す。

 このサイトは「KURADASHI(蔵出し)・jp」。賞味期限や包装の印字ミスなどの問題で売れなくなった商品を仕入れ、格安で販売。購入金額の一部は非営利団体に寄付される仕組みだ。運営会社グラウクス(東京・渋谷)によると2月にサービスを開始し、取引企業数は200社を突破。サイトを利用する会員数も2万人を超えた。

■国連支援の2倍超

 「もったいない」意識が根付いているとされる日本だが、廃棄量は決して少なくない。農林水産省などによると、国内の食品ロスは2012年度の推計で642万トン。国連が14年に実施した食糧支援320万トンの2倍超で、国内の主食用コメの収穫量788万トン(14年)に迫る量だ。

 原因の一つと指摘されるのは店頭での賞味期限切れを防ぐための「3分の1ルール」という流通業界の商習慣。たとえば賞味期限が全体で6カ月間の場合、このうち3分の1(2カ月)を過ぎると、小売店には納品できずに返品・廃棄となってしまう。大手スーパーの主導で2000年ごろから広がったとされる。

フードバンクふじのくにはスーパーなどの店頭にボックスを設置して不要な食品の寄付を募っている(静岡市)

 欧米では賞味期限の2分の1~3分の2まで納品を認めるのが一般的だ。愛知工業大学の小林富雄・准教授は「消費者が衛生面に敏感な日本では流通業界の対応も過剰となり、海外と比べて食品ロスが発生しやすい」と指摘する。

 ただ近年は国内でも食品ロスへの問題意識が広がり、業界の一部は13年に納品期限を2分の1に延ばす取り組みを始めた。消費生活アドバイザーの井出留美さんは「東日本大震災時の食品不足などで無駄を見直す消費者意識が広がったことも、企業の対応を後押しした」とみる。

 欧米で盛んな「フードバンク」運動も活発化する。企業や個人から不要な食品の寄贈を受け、恵まれない人たちに配る。昨年発足したNPO法人・フードバンクふじのくに(静岡市)は14年度に約20トンの食料を配ったが、今年度は40~50トンほどに倍増する見込みだ。事務局次長の鈴木和樹さんは「事業に対する社会の理解が広がり、寄贈が受けやすくなってきた」と喜ぶ。

 農水省によると全国では約40のフードバンク(14年時点)が活動し、13年に約4500トンの食品ロスを削減する効果があった。協力企業も増えており、大手スーパーの西友ではフードバンクへの寄贈に取り組む店舗が7月に100店を突破。16年末までに130店に増やす目標を掲げる。

横浜中華街の大珍楼・新館(横浜市)では、食べ残しを減らすために食べ放題メニューを小分けにして提供している

 飲食店の食べ残しを減らす取り組みも広がる。横浜市は13年度から、小盛りメニューやドギーバッグ(持ち帰り容器)などを導入する飲食店を「食べきり協力店」に登録。10月に620店を突破した。

■食べ放題、小皿で

 横浜中華街にある中華料理店「大珍楼・新館」は、食べ放題のメニューを春巻き1個などと小皿で提供するサービスを実施する。支配人の栗原義徳さんは「調理や配膳の手間は増えたが、廃棄コストは大幅に減った。少量でも頼めるという安心感が新しいお客さんの開拓にもつながっている」とメリットを強調する。

 食品ロスの削減は世界的にも注目されている。国連は9月、2030年までに世界の1人あたり食品廃棄を半減させる目標を採択。フランスでは今春、大手スーパーの食品廃棄を禁じる法律ができた。日本も今後、一層の努力が求められそうだ。

■「品切れさせない」流通に疑問の声 食べ物処分に罪悪感

 短文投稿サイトのツイッターでも食品ロスに関する多くのつぶやきがみられた。「ダイエット中、食べられない事がストレスになるけど、一番のストレスは食品ロス。残った食べ物を処分するのが辛い」などと食べ残すことに罪悪感を感じている人がいた。

 「コンビニは品切れさせないことが前提で余分に作ってるっぽいけど…まぁ、処分しちゃうのをうまい具合に再利用できる仕組みが必要だよね」などと流通業界の問題点を指摘する声もあった。

 家庭で余った食品を福祉施設などに寄付するフードドライブというイベントに「晩酌のおつまみのために買い貯めた缶詰とか持って行くか(笑)」との声や、食材を持ち寄るサルベージ・パーティに参加して「楽しかった!お友達できた~。」と喜ぶ声もあった。調査はホットリンクの協力を得た。

(本田幸久)

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