日経ウーマノミクス・シンポ、女性活躍のステージ広がる
3回目となる今回は、女性が働きやすい職場の環境づくりに積極的に取り組む企業から、積水ハウスの阿部俊則社長兼COOと、東京海上日動火災保険の永野毅社長が登壇し、400人近い参加者を前に講演した。
阿部社長は「積水ハウスのなでしこたち」を演題に掲げ、建設・住宅業界で働く女性や女性管理職の比率が他産業に比べて少ない実態をデータで示した上で、住宅は仕事場でもあり、介護の現場にもなり、飲食店にもなり、あるいは発電所にもなり得るなど、これからの住宅の「多様性」に触れながら、「女性の感性を生かすことは経営戦略の必然になってきている」と述べた。
積水ハウスでは2004年からリフォーム部門で女性の採用を積極化しており、15年はリフォーム営業で全体の約62%にあたる656人の女性が活躍しているという。そうした女性が安心して働ける環境整備にも力を入れている事例として、「営業先は積水ハウスが手掛けた223万戸の顧客のみ」「転居を伴う転勤がない地域勤務職」「週休2日、3日の選択制」「契約社員、正社員の選択制」の4つをあげた。さらにリフォーム営業における女性活躍の成功モデルを、今後は新築営業にも広げていくことを課題にあげ、「会社は環境やチャンスは与えるが、それは自らが勝ち取るものだ」と、働く女性たちにエールを送った。
東京海上日動火災保険の永野毅社長は、女性のみならず「社員一人ひとりが輝く良い会社へ」の実現に向けたダイバーシティー経営の推進を訴えた。永野社長は冒頭、「保険は形がない。人がつくる信用がすべて」と述べ、人材の重要性と多様性を意識した経営を進めている考えを示した。東京海上日動火災保険では1万7125人の従業員の約半数を女性が占めており、女性管理職も15年には08年の3倍にあたる180人になった。永野社長は「数値にはこだわらない。女性だから引き上げるのではなく、あくまで結果である」と強調。一方で、(人に)期待し、鍛え、活躍する機会と場を提供する「3つのK」を推し進めることで、重要事項を決める意思決定の場により多くの女性が参画できるようにする考えを示した。
さらに社長に就任してから2年半がたち、全国47都道府県の約8割の拠点に足を運んで、現場の社員たちとの活発な交流会を実施している様子などもパネルを交えて披露。「気づきの場と公平な機会を多く提供していく」として、社員の意識と会社の仕組みを合致させる取り組みにも一段と力を注ぐ姿勢を示した。
シンポジウムでは、現在放送中のNHK連続テレビ小説「あさが来た」の脚本を手がけている大森美香氏も登壇。「女性実業家」の先がけでもある明治時代の広岡浅子氏に見る女性の生き方について語った。大森氏は原作である「小説土佐堀川 女性実業家・広岡浅子の生涯」を読んだとき、広岡浅子氏に一目ぼれし、そのパワーに引き込まれていった気持ちを振り返りながら、実業家として炭鉱事業がこれからの日本に必要だと感じた「センス、行動力、状況に流されない芯の強さ」を評価した。
「女性活躍 Next Stage!」と題したパネルディスカッションも開かれ、カーレーサーで慶應義塾大学大学院特任准教授の井原慶子氏、上智大学法学部教授の三浦まり氏、BTジャパン社長で経団連審議員会副議長の吉田晴乃氏の3氏が、「危機感が背中を押した」それぞれの経験談を披露しながら、女性の活躍を阻む見えない壁や、そこを突破していくための道筋などについて活発に議論した。
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