ライジングプロが常設劇場を立ち上げた狙い
日経エンタテインメント!
観月ありさ、w‐inds.、Lead、三浦大知、西内まりや、フェアリーズなどが所属するライジングプロは2015年8月、東京・渋谷区に「原宿駅前ステージ」をオープンさせた。JR原宿駅の竹下口真向かいのビルの6階で、若者が集まる竹下通りの入口に位置する。
客席は100席ほどで、「光るランウェイ」が常設されているステージが特徴。現在は、4つのグループで構成される「原宿パーティーズ」というガールズグループが、土日を中心に公演を行う。
「数年前から女性アーティストの卵を数十人抱えて育成を行ってきたが、なかなかメディアに登場させる機会がなかった。彼女たちに活躍の場を設けることが、必要と常々考えていた」とライジングプロ・ホールディングス代表でオーナーの平哲夫氏は狙いを話す。
4つのグループで始動させたのは、ひとつの大きなグループでは、才能や実力があっても、コンセプトに合わないという理由で、外さざるを得ないことがあるため。キャラクターの違うチームを複数作ることで、タレントに合ったスタイルで育成を行うのが狙いだ。
公演では、歌やダンスに加え、ファッションショーも行う。カメラに向かっての一発芸や、数分間のスピーチなど、バラエティ要素の強いパートもあり、総合力の向上を図る。「お客さんの前に出る機会が増えたことで、タレントの意識が大きく変わった」(平氏)。毎週ステージで、スキルと意識の両面での成長を期待する。
スカウト力強化の狙いも
またこのステージを、プロモーションや情報発信の基点とする考えもある。そのため、パフォーマンス中に、タレントがお客さんにプレゼントを渡したり、振り付けで指差しするなど、客席とステージの距離感を近くするような仕掛けを施している。「オープンしたての今、客席にはアンテナ感度の高い、いわゆるコアなアイドルファンが集まってくださっている。目の肥えた彼らにひとつのエンタテインメントの形として認められるかが、試金石と考えている」(平氏)。情報発信力の高い彼らを魅了することが、口コミでの人気の広がりにつながるとの考えだ。
実際、握手会や物販など、出演者と直接交流する機会がないにもかかわらず、公演は満席が続いている。今後、ファッションショーのパートを写真撮影可にするなど、よりファンの拡散力に期待する施策を検討しているという。
既存のタレントの育成やプロモーションに加え、もうひとつ大きな狙いがある。スカウト力の強化だ。原宿駅前ステージオープンに先立つ3月、ライジングプロの本社も同場所に移転した。これまでは同社は、オーディションで新人を採用することが多かったが、全国的なアイドルブームのなかオーディションの数が増え、なかなか優秀な人材を見つけにくくなっているという。そこで、全国から若者が集まる竹下通りに事務所とステージを置くことで、タレントの原石をいち早く見つける体制を整える。
実際、現在のメンバーにはスカウトから数週間でステージに立っているタレントもいるという。今後、グループ数を増やす計画もあり、将来性があれば、ステージに積極的に起用していくという。
ライジングプロは、所属タレントの顔ぶれの通り、実力派のアーティストを育てるのがお家芸。実際、育成期間が長かった原宿パーティーズメンバーは、パフォーマンスの完成度が高い。原宿駅前ステージではそこに、未経験に近いタレントをすぐにステージに登場させるといった、アイドル市場のノウハウを取り入れる形だ。育成力とアイドルビジネス的手法の"いいとこ取り"で、新たなエンタテインメントの創造を目指す。
(日経エンタテインメント! 上原太郎)
[日経エンタテインメント! 2015年11月号の記事を再構成]
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