アニメスタジオが地方に定着 富山・徳島など
日経エンタテインメント!
地方に拠点を置くアニメ制作スタジオが増えている。『けいおん!』で知られる京都の京都アニメーション、徳島のufotable(本社は東京都中野区)などが代表的。他にも、各社が地方に分室を作るなど、動きは加速している(表)。
今年創立15周年を迎えたP.A.WORKS(以下P.A.)もそのひとつ。富山を拠点に『Angel Beats!』『花咲くいろは』など、質の高い映像表現で多くのヒット作を生み出している。
中長期プランが立てやすい
代表取締役の堀川憲司氏は富山大学に進学。もともと雪国に憧れていたと言い、I.Gなどを経て2000年に、前身となる越中動画本舗を吉原正行(『有頂天家族』監督)と設立。現在の社名は02年から。04年、城端町(現・南砺市)の提供で、元病院を改築したインキュベート施設に入居する(写真)。
「アニメは地方のほうが人を育てやすい」というのが堀川氏の見解。その理由について、「現在の作品は3カ月の1クールものが主流ですが、その期間中に人材育成の成果を出すのは無理な話で、組織的な中長期プロジェクトとして取り組まなくてはいけない」からだと語る。
「アニメ業界は慢性的な人材不足です。人を育て、制作のラインを社内に確保することで、スケジュール管理をしっかりして無駄なコストを減らす。すると、原画単価(のアップ)などに回せます」
スタジオの多い東京だとスタッフが流動的になってしまうが、「地方に来るということは腰を据えてやろうという覚悟がある。彼らに計画をきちんと説明して協力してもらう」ことで、離職率を低く抑え、人材育成してきたのだとか。
近年は地方都市を舞台のモデルにしたアニメが増え、ファンがその場所を訪れるように。その流れのなかで、アニメを地域活性化の切り札として考える自治体も出てきた。P.A.が元請けとして最初に手がけた08年放送の『true tears』は、地元・南砺市が舞台モデルだった。
「狙ってではなく、西村純二監督が本社に来たときにたまたま町の風情が気に入って南砺市に(笑)」
昨年はスマホと連動した南砺市PRのショートアニメ『恋旅』も制作し、フランスでも字幕上映されることが決まった。こうした依頼に応えるため、先月立ち上げたのが社団法人PARUSだ。また、3DCGアニメやアプリを使ったコンテンツ開発を手がける子会社PA‐Xも設立。15周年を機に、富山でさらなる挑戦が続く。
「1番にあるのはアニメを作り続けたいということ。富山では、アニメーターや3Dの使い手を育て、現在、原画マンは20人ほどになりました。クオリティーを下げず内製強化に努め、いずれは富山スタジオのスタッフだけでも作品を作れるようにしたいですね」
(ライター 山内涼子)
[日経エンタテインメント! 2015年11月号の記事を再構成]
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