日本の国土より広い海洋保護区を決定、パラオ
屋久島より小さな西太平洋の島国パラオの議会が、日本の国土より広い海洋保護区を設置する法案を可決した。
パラオ共和国が、広さ50万km2の海洋保護区の設置に向けて動いている。計画が実現すれば、世界で5本の指に入る広さの完全保護区が誕生することになる。
2015年10月22日、パラオ議会は排他的経済水域の80%での漁業や鉱業などの資源採集活動を禁止する法案を可決した。残り20%の水域は、今後も地元民の漁業や少数の小規模な商業活動に利用されることになる。
トミー・レメンゲサウ・ジュニア大統領は声明で、「海洋は危機に瀕していて、島の共同体は特に大きな影響を受けている」と述べた。「生き延びるためには、海洋保護区の設置という大胆な措置をとるしかないと国民は考えているのです」
「パラオはやってくれました」と驚くのはナショナル ジオグラフィック協会付きエクスプローラーで、「原始の海プロジェクト(Pristine Sea project)」を率いるエンリック・サラ氏だ。
氏によると、パラオの海域は地球上で最も生物多様性に富む海の1つであるという。ナショナル ジオグラフィック協会の「原始の海プロジェクト」は、以前からパラオにある小規模な海洋保護区の有効性の評価に協力してきた。
パラオの海には1300種以上の魚、約700種の硬質・軟質サンゴや、刺さないクラゲが大量に生息している海水湖がある。
パラオの人々は昔から、漁業によって魚が減るのを防ぐため、魚が産卵して子育てをする時期には、漁をしない小さなサンゴ礁の区画を設ける「ブル」という漁業習慣を守ってきた。パラオ政府はいまでは領海の広い範囲にこの慣習を広めている。
新しい海洋保護区の監視のあり方について、政府は詳細を検討中だ。パラオには軍隊がなく、監視艇も1隻しかない。
それでも「パラオは真剣に法律を施行し、海洋資源を保護しようとしています」とサラ氏は言う。2015年6月には、パラオは領海内で密漁をしていたベトナム漁船を拿捕して洋上で燃やしている。
レメンゲサウ大統領は先日ナショナル ジオグラフィックに、「我が国の海洋資源を損なう行為は絶対に許しません。パラオにやって来る密漁者は、何も持たずに国に帰ることになるでしょう」と語った。
フォトギャラリー:楽園の海、パラオ
マカラカル島のジェリーフィッシュレイクはパラオで最も有名な観光地だ。その名のとおりクラゲだらけの海水湖だが、シュノーケリングを楽しむことができる。ここに生息するクラゲの刺胞(毒針)の毒はほとんどの人が何も感じないほど弱く、基本的に安全だ。
「原始の海プロジェクト」のメンバーが撮影したパラオオウムガイ(Nautilus belauensis)。パラオオウムガイは地球上でこの海域にしか生息していない。
「原始の海プロジェクト」のダイバーが、小魚の群れの横を通過する2匹の巨大なマンタに遭遇した。マンタは体は大きいが性質はおとなしく、海中のプランクトンをえらで濾し取って食べている。
パラオの海にはノコギリダイ(Gnathodentex aureolineatus)をはじめとする多くの種類の魚が生息している。
(文 Jane J. Lee、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)
[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2015年10月27日付]
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