マネー研究所

カリスマの直言

ジュニアNISAに大人の責任(渋沢健) コモンズ投信会長

2015/10/25

「ジュニアNISAの3つの原則はわかりやすいが、制度の詳細はわかりにくい」

 来年から未成年者向けのジュニアNISA(少額投資非課税制度)がスタートすることもあり、毎年10月28日を「ジュ・二・アの日」としてはいかがだろうか。現在から生まれる子どもたちの多くは22世紀を見る世代であり、先代が当たり前と思っている常識や環境が異なる世の中で生活することになる。今までの成功体験、社会的慣習や思い込みにとらわれず、次世代に生きる力を育成することが私たち大人の最大の責務である。改めて日本の未来を担う子どもたちを育む社会制度について考えたい。

 2012年に遡るが、経営者など民間の有識者に呼びかけて「次世代育成の資金循環を考える委員会」を結成した。議論を重ねた上、秋口に当時の民主党政権の国家戦略担当相に下記の内容を提言した。

 <提言1>「教育費積立と長期産業資本の促進のための税制措置」 英国ジュニアISA(個人貯蓄口座)や米国529プラン(教育費の投資口座)の日本での導入

 <提言2>「世代間の資産移転の拡大のための税制措置」 教育資金に関して、贈与税の非課税控除額を拡大

 <提言3>「対話を通じた実感ある金融教育」 企業や投資を通して見えてくる社会との対話により、実感ある金融教育の実現

 我々の提言に担当相は賛同し、事が進みそうだった。ところが同年の冬に政権が交代する。よって、3年間の年月を経て超党の国家政策としてジュニアNISAが来年から発足することは感慨深い。

 ジュニアNISAは親や祖父母が口座開設者である子どもに代わり、株式や投資信託などに投資する。制度設計の基本である年間投資上限金額は80万円、譲渡益や配当金・分配金は非課税となり、18歳までは原則お金を引き出せないという3つの原則はわかりやすく、高く評価している。わかりやすくて利便性が高い制度であれば全国の国民への普及が期待できるからだ。

 ところが、制度の詳細はわかりにくい。投資可能期間は23年までで、非課税期間は最長5年間。口座開設を申し込むと自動的に「非課税口座」と「課税口座」の2つの口座を開くことになる。課税口座は非課税口座で投資していた株式などを売ったときの売却代金や配当の受け皿などになるが、新たに得た非課税枠で再び非課税口座で投資することもできる。

 また、投資可能期間が終了する23年以降は非課税口座を引き継ぐ「継続管理勘定」において口座開設者が20歳になるまで非課税で保有が可能であるが、新規の買い付けはできない。

 ジュニアNISAを図にしてみると、階段式でいろんな矢印があちらこちらへと指すので、かえって目が回ってしまう。

コモンズ社会起業家フォーラムを例年10月初旬に開催し、社会的課題の解決に立ち上がった人たちを応援している

 悲しいかな次世代育成にとって極めて重要な政策の矢となるジュニアNISAは、様々な政策関係者を納得させる「通りやすい」設計にしたため、結果的には国民には「わかりにくい」制度になってしまった。

 安倍晋三政権の「新3本の矢」の信ぴょう性を少しでも向上させるために「子育て支援」の要になる次世代育成の資金循環の実現性を高めることは不可欠だ。

 政治が決断しなければならないことは明らかである。ジュニアNISAの非課税期間の5年を撤廃し、投資可能期間は23年にとどめず、19歳未満という年齢まで非課税と定めるべきだ。途中で引き出したら課税対象にすればよい。そうすれば、「継続管理勘定」「課税口座」という言葉が説明からなくなり、イメージ図の階段式も簡素になり、矢印も減る。国民にわかりやすい制度になり、早期の普及拡大が期待できる。

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