旅行・レジャー

日本の歩き方

関空の手荷物は取りやすい 持ち手の向きに気配り 「日本以外ではあり得ない」 外国人も驚く

2015/10/6

乗客が取りやすいようにスーツケースの持ち手は外側に向ける

 スーツケースが流れ出る。ここは関西国際空港にある手荷物の受取場。集う人も荷物も様々だが、1つだけ共通点がある。スーツケースの持ち手の方向だ。すべて待ち受ける人たちの方に向く。飛行機の移動で疲れた旅行者が荷物を取りやすいようにする関空のささやかな“おもてなし”だ。

 「日本以外ではあり得ない」。観光に来た台湾の女性(22)は驚く。荷物を運び出す作業場ではつなぎ服を着た男性たちがすべて手作業で荷物をさばく。航空機から荷物の入った貨物が運ばれると、取り付けられた白いタグを見て、関空が最終目的地の荷物だけをレーンに載せる。すべて目視で、担当者はお互いダブルチェックを欠かさない。

 男性たちは数十キログラムにもなるスーツケースをくるっと手首で回転させ、持ち手をレーンの外側に向ける。スーツケースを立てて流すのは横にするよりも早く届けることができるからだ。1便あたり2~3人で担当し、乗客が200人を超えるような大型機でもわずか5分ほどで作業を終える。

 持ち手をそろえることは航空会社などのマニュアルには書いていない。作業員独自の取り組みだ。関空では1994年の開港時から持ち手をそろえていたといい、誰の発案かも分からない。関空では同空港の作業が原因となる荷物紛失が開港から1個もない。

 正確性やサービスの良さから英国の航空調査会社で2015年度の荷物取扱部門で世界1位の評価も受けた。1日に取り扱う手荷物は最近では2万3000個あり、中国や東南アジアなどからの旅行者増加で昨年に比べ4割近くも増えている。

 日本航空の手荷物を取り扱う田宮康次さん(43)はこの作業に携わって13年目のベテラン。増える荷物にはスピードアップすることで対応する。「アジアからの到着便の荷物は軽く、出発便はお土産を買い込んで重い」と田宮さん。手荷物に日本の真心を込める。

(文 伊藤正泰、写真 伊藤航)

<カメラマンひとこと>
 流れるような手さばきで荷物を次々とレーンに滑り込ませていく。一つ一つ丁寧な扱いながら無駄な動きは一切なく、所要時間はわずか数分。シャッターチャンスは案外少ない。計5便分を撮り続けるうち、カラフルなスーツケースが整然と並ぶ絶好の瞬間が訪れた。

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