小型・手ごろなキャンピングカー 女性に人気の車種も
キャンピングカーと一口にいっても、全長10メートルにも迫る超豪華な輸入車から、同4メートルに収まる軽キャンピングカー(軽キャン)までさまざま。価格帯も1500万円から140万円台で買えるものまで多彩だ。日本での売れ筋は500万円台。だが近年は1000万円クラスの高額車がよく売れる一方で、200万~300万円台の値ごろな車種の販売比率が高まっている。
中心が軽キャンや、小型のワンボックスカーをベースにした「ナローボディー」と呼ばれる車だ。こうした車種は概して購入金額も維持費も安く、自宅の車庫が狭くても駐車できるメリットを備え、さらに旅先の駐車場選びでも困らないという利点がある。「ペット連れで旅行したい」「年金暮らしなので宿泊費を節約したい」といったシニア世代の声にもこたえられる。
バンテックセールス(埼玉県所沢市)は一貫して600万~900万円クラスの高額・高級キャンピングカーを製作してきた会社だが、今夏ついに149万円の軽キャンの販売に踏み切った。「軽キャンが一過性のブームではなく、日本では完全に一大市場を確立したから」(佐藤徹社長)だという。
キャンピングカーの小型化は世界的な傾向ともいわれる。日本RV協会(東京都町田市)の増田浩一会長は「欧米のキャンピングカー業界でも化石燃料の枯渇や温暖化を食い止めようという社会的要請で大型車のダウンサイジングが進んでいる」。
日本における小型キャンピングカー人気は、女性が運転する機会が増えたことと関係があると指摘する声もある。
現在もっとも人気のある軽キャン「テントむし」を製作しているバンショップミカミ(鹿児島県曽於市)の見上喜美雄社長は「定年退職を迎えたシニア夫婦が長距離旅行を試みる場合、妻が夫と交代して運転する機会が増える。このため、どうしても取り扱いが楽な小型車が好まれるようになる」と語る。当然、車種購入にも妻の声が反映されるようになり、見た目もおしゃれでかわいらしいキャンピングカーに人気が集まる。テントむしはまさにその流れをくんだもので、本体色も8種類を用意している。
ただ軽キャンの居住性は普通サイズの車種に比べて劣る。そこで軽キャンでは停車時にルーフ部分が開いて屋根上にベッドを設置できるポップアップルーフを採用したものや、居住部分全体を繊維強化プラスチック(FRP)ボディーで作り直し、車内を立ったまま移動できる室内高のものも出回っている。
マックレー(京都市)が今夏発表した「ディアラジュニア」は、軽トラックの荷台の上にFRP製の居住部分を完全に結合させた。居住性に優れ、悪天候でも快適に過ごせる耐候性も備える。だがこのように作り込まれた車はその分高く、税別270万円以上となり、軽キャンらしい経済性は若干薄まる。
価格優先でシンプルな車種を選ぶか、居住性を期待して多少値の張るものを選ぶか――。使用目的を考えつつ悩むかもしれない。もしキャンピングカーで長期滞在型の旅をするなら、軽キャンより若干価格が高いが、ナローボディーの小型ワンボックスカーがベースの車両(バンコン)を選ぶのも選択肢だ。
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日本RV協会がまとめた「キャンピングカー白書2014」によると、キャンピングカーの購入動機で最も多いのは「夫婦2人で旅行を楽しむため」で52.0%。購入の決め手(複数回答)は「サイズ」(67.1%)、「価格」(59.5%)の順だ。長年連れ添った妻の慰労も兼ねた「小型キャンピングカーによるシニア夫婦の2人旅」がトレンドになっているのが分かる。キャンピングカーで将来してみたいこと(同)の最多は「日本全国を一周したい」(82.0%)だった。
(キャンピングカーライター 町田 厚成)
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