テレビでもマーベルに勢い、新作にみる本気度
海外ドラマはやめられない!~今 祥枝
ハリウッド映画界はアメコミ大作を量産する体制に入っていますが、テレビ界もここにきて独自の世界を構築しつつあるようです。
映画では、マーベルのヒーローが集結する『アベンジャーズ』シリーズと、その個々のヒーローが活躍する映画がそれぞれシリーズ化されています。一方、マーベルと双璧をなすDCコミックスは、スパイダーマン、バットマンなど単体でシリーズ化されており、マーベルに遅れをとった形でした。しかし、今後はアベンジャーズに匹敵する、DCのヒーローが集結するジャスティス・リーグへと発展していく予定です。
テレビ界では、The CWが『ARROW/アロー』をヒットさせ、スピンオフという形で『The Flash』、さらに今年は2本目のスピンオフ『DC'sLegends of Tomorrow』が放送予定です。ブランドン・ラウスが演じるアトム(原子の大きさまで体を縮小する能力を持つヒーロー)を中心に、キャプテン・コールド、ヒートウェーブ、ホークガールなどのDCのキャラクターが多数登場。「テレビでこれが見られるなんて!」と早くも盛り上がりを見せています。
悪と戦う盲目のヒーロー
さらにFOXではバットマンの前日談『GOTHAM/ゴッサム』がシリーズ継続中、今秋にはCBSの新番組『Supergirl』が控えており、テレビではDCが優勢のようです。
一方のマーベルは、映画『アベンジャーズ』とリンクする形で『エージェント・オブ・シールド』とスピンオフ『エージェント・カーター』がありますが、地上波ABCでの放送ということもあって比較的無難な表現で映画との連動色が強いといえるでしょう。そんななか、マーベルがテレビシリーズに本腰を入れてきたと思わせるドラマが登場しました。動画配信サービス・ネットフリックスの『Daredevil』です。
主人公マシュー・マードックは子供時代に失明し、聴覚や嗅覚のほか超人的な感覚を身につけ、昼は弁護士、夜は巨悪と闘う異色のヒーローです。ベン・アフレック主演の映画版『デアデビル』がありましたが、今回のほうがよりダークで刺激的。マーベルの映画は、『X‐MEN』シリーズ以外はユーモアも多く、明るめの作風が主流ですが、『Daredevil』は大人向けで重めの作り。映画『ダークナイト』シリーズをほうふつさせるテレビのDC作品群以上に、同シリーズの世界観を踏襲しています。この後、マーベルは4つのヒーローを扱った番組の企画を進行中で、映画とはまた違った世界をテレビで構築する算段のようです。この壮大な計画の第1陣となる『Daredevil』を見事に成功させたネットフリックスは、驚くべき快進撃を続けています。
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今月のオススメドラマ
『ベイツ・モーテル』
ヒッチコック監督の名作『サイコ』の前日談
名匠アルフレッド・ヒッチコック監督の傑作サスペンス『サイコ』。1960年製作の本作は、世界中で大ヒットを記録し、「サイコ」という言葉の概念を一般に広く認知させた作品としても知られている。その前日談にあたる物語で、舞台を現代に置き換えたテレビシリーズが『ベイツ・モーテル』だ。
17歳の高校生ノーマン・ベイツは、父親が急逝し、母ノーマと共にオレゴン州の海辺の町に越してくる。美しいが身勝手で情緒不安定なところのある母親と、内気なノーマンの結びつきは異常とも言えるほど強かった。ノーマは新天地で抵当流れになったモーテルを買い取り、開業するべく張り切るが、次々と不幸に見舞われる。一方、町でも恐ろしい事件が多発し、親子の周囲に不穏な空気が漂う…。
ノーマとノーマンの過去に隠された秘密や、次第に明らかになっていく心の闇、さらには町の住人たちの裏の顔など、事態は思いがけない方向へと二転三転。先が読めない展開と、元ネタの『サイコ』に対する目配せも心憎い作りとなっている。ノーマン役は映画『チャーリーとチョコレート工場』のフレディ・ハイモア、ノーマ役は映画『マイレージ、マイライフ』のベラ・ファーミガ。物語の世界観をうまくとらえてハマリ役だ。製作総指揮は、『LOST』のカールトン・キューズほか。
映画&海外ドラマライター。女性誌、情報誌、ウェブ等に映画評やインタビュー等を寄稿。「BAILA バイラ」「eclat エクラ」「日経エンタテインメント!」映画サイト「シネマトゥデイ」などに連載中。著書に『海外ドラマ10年史』(日経BP社)。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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