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海外で人気の日本料理は? 中華・イタ飯と覇権争い 編集委員 小林明

2015/7/10

米シカゴで箸とレンゲを使ってラーメンを食べる客

 「和食」が2013年にユネスコの無形文化遺産に登録されるなど日本の食文化が国際的なブームになっている。ニューヨーク、ロンドン、パリなど世界の主要都市はもちろん、地方の小さな街でもすしバーやラーメン店、焼き肉レストランは人気の高いスポット。健康でオシャレな食文化として流行への感度が高い若者のほか、中高年や若年層にも浸透しつつある。

 日本食レストランは世界でどの程度あり、どのくらいのペースで増えているのか?

 日本料理の中でも海外で最も人気が高いメニューは何か?

 日本料理のどんな点が評価されており、今後、さらに普及を図るための課題は何か?

 様々な統計からこうした疑問を読み解いてみよう。

■日本食レストランは世界で55000店、加速度的に増加

 まず世界中に日本食レストランがどの程度あるかご存じだろうか?

 答えは約55000店超――。

 農林水産省が外務省や在外公館を通じて調査した「海外における日本食レストラン店舗数の推計値」(概数)によると、世界の日本食レストランは2013年時点で約55000店。06年の約24000店の2.3倍、10年の約30000店の1.8倍と加速度的に増えているのが分かる。アニメや漫画、ゲーム、J―POP、アイドルなど「クールジャパン」による日本文化振興策や、13年に和食が無形文化遺産に登録されたことが格好の追い風になったようだ。

■アジア27000店、北米17000店、欧州5500店……、アジア・北米で8割

 地域別に見ると、どんな特徴があるのだろうか?

 13年時点で最も多いのがアジアで約27000店。全体のほぼ半数を占め、10年からの過去3年間で2.7倍の伸びを示す。次いで北米の約17000店(過去3年で1.2倍)、欧州の約5500店(同2.2倍)、中南米の約2900店(同1.9倍)、ロシアの約1200店(同1.2倍)と続く。

 アジアと北米だけで、ざっと全体の8割に達する計算だ。

 レストランの経営実態までは不明だが、「日本人以外の経営者やシェフによるレストランがかなり多い」(農水省輸出促進グループ)。日本食レストランになると客単価が高まり、客の入りも良くなるため、中華レストランや韓国料理レストランからの“衣替え”も増えているらしい。

 善悪はともかく、こうしたことから日本人も想像しないような「多様化した日本食」が世界に普及しているようだ。

■日本料理が21%で首位、中華やイタ飯をしのぐ人気

 ほかの料理と比べて日本料理はどんな位置付けなのだろうか?

 日本貿易振興機構(ジェトロ、JETRO)が面白い調査をしている。

 米国、フランス、イタリア、中国、香港、台湾、韓国の7カ国・地域で好きな外国料理(自分の国・地域の料理は除く、20~50代男女計2800人対象、12年12月調査、複数回答可)を聞いたところ、表のような結果になった。全体では「日本料理」が21.1%で最も人気が高い。次いで「イタリア料理」の12.8%、「タイ料理」の10.5%、「中国料理」の9.3%の順。

 日本の組織の調査なので結果を多少、割り引いて考えなければいけないかもしれないが、農水省によると「日本料理は新しい分野のトレンディーでヘルシーな食文化として、中華料理やイタリア料理、フランス料理など世界でメジャーな料理と肩を並べているか、すでに追い越していると受け止めている」という。

■日・中・伊が“3強”、日本料理は特にアジア・伊で人気

 地域別に見ると、「日本・中国・イタリア」の料理が“3強”として勢力争いを繰り広げており、「アジア、米国、欧州ではいずれも日本料理が中華やイタリアンとほぼ互角か優位に立っている」という状況が読み取れる。特にアジアやイタリアでの日本料理の人気が高い。米国での日本料理の人気はやや低いが、これは移民国家という側面から、他の国・地域に比べて料理の多様性がより進んでいるためと考えられる。

 “3強”以外では、タイ料理や韓国料理などもそこそこ健闘している。このほか全般的に「近隣の国・地域の料理がより高く評価されるという傾向もある」(農水省輸出促進グループ)ようだ。

 いずれにしてもこれらの統計を見る限り、日本料理の世界的な人気は極めて高いといえそうだ。

■首位「すし・刺し身」、2位「天ぷら」、3位「焼き鳥」

 日本料理の中ではどんなメニューの人気が高いのだろうか?

 JETROが13年12月にモスクワ(ロシア)、ホーチミン(ベトナム)、ジャカルタ(インドネシア)、バンコク(タイ)、サンパウロ(ブラジル)、ドバイ(アラブ首長国連邦)の6都市で実施した調査(10~50代男女、各都市500人の計3000人を対象)が参考になる。

 日本料理の中で最も好きなメニューを一つ挙げてもらったところ、首位は「すし・刺し身(ロールずしなど含む)」で35.3%と断トツの人気だった。次いで「天ぷら」9.6%、「焼き鳥」8.7%、「ラーメン」8.6%、「しゃぶしゃぶ」5.6%、「カレーライス」5.1%、「すき焼き」4.6%などの順。

■「ラーメン」「カレー」など“庶民の味”が人気急上昇

 やはり「すし・刺し身」は日本食の代名詞のようだ。ただ「天ぷら」「焼き鳥」「しゃぶしゃぶ」など従来の伝統的な定番メニューに交じって、「ラーメン」「カレーライス」などカジュアルなB級グルメが上位に食い込んでいるのも特徴。ラーメン店やカレー店などの海外進出が活発になっているほか、日本のインスタント食品の普及が後押ししているとみられる。

 日本の「庶民の味」も国際化が一気に進んでいるようだ。

■味・健康・オシャレ・安全……、高価格が課題に

 日本料理にはどんなイメージがあるのだろうか?

 同じ調査でイメージを尋ねると、「おいしい」が最も多くて回答率は26.6%。次いで「健康に良い」21.3%、「価格が高い」18.1%、「おしゃれ」9.1%、「安全」7.4%、「高級感がある」7.2%の順となった。

 つまり、日本料理には、おいしくて健康に良くてオシャレで安全性が高い一方で、価格が高いというイメージがあるようだ。「この回答に今後、日本食を世界に売り込むための課題がある」とJETROでは分析する。

■中・低所得者層にどう売り込む? 販路・調理法もPR

 この調査では「日本産の食品を購入しない理由」についても聞いており、「価格が高い」の回答率が最も高くて24.7%。次いで「販売場所が限られている・わからない」の19.5%、「食品の使い方・調理の仕方がわからない」の12.5%の順に高かった。「日本産食品は高級スーパーなどへの展開が中心であり、中・低所得者層への売り込みには弱い。だから今後、これらの購買層への日本料理の認知度向上と浸透をどう高めていくかが大きな課題」とみている。それに対応した販売ルートの開拓や食材調理法のPRなどもさらに強化する必要がありそうだ。

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