マネー研究所

カリスマの直言

ギリシャ危機、思考停止の日本でいいのか(渋沢健) コモンズ投信会長

2015/7/12

「日本国民は財政問題について債権者という視座から考え続ける必要がある」

 ギリシャの債務危機の数多い報道で最も印象に残るシーンがあった。それは、チプラス首相の挑戦的なガッツポーズでも、欧州各国の首脳達の深刻な表情のシーンでもない。銀行が営業を停止し、その閉じられた入り口の前で、日常生活が脅かされて殺到しているギリシャ国民たちのシーンだった。

 国が財政破綻するとき、涙を飲むのは、やはり国民だ。

 国が破綻したとき、何が失われるかの予想は明白だ。領土が減るわけではない。実は、政府も残る。そして、もちろん国民の生活は続く。失われるのは、国債や現金など「安全資産」といわれる国の信用に託した国民の富だ。

 国際通貨基金(IMF)では「Default」(債務不履行)という用語が使われることがないようだ。「Arrears」(支払い延滞)というらしい。国・政府が財政破綻した場合、政権は責任を取らされて交代するかもしれない。倒産した企業でいえば、経営者の辞職だ。しかし、企業の場合は、その存在自体が世の中から清算される可能性があるが、破綻した国・政府は継続する。国民の生活にとって政府は不可欠であるからだ。

 継続する存在が前提なので、貸付先の国・政府はいずれ借金が返せるはず。だから、「延滞」という先延ばし的な表現を使うことが適切であるとIMFは考えているのかもしれない。

 しかし、貸し付けた元本が償還日に戻ってこない。また、当面、戻ってくるシナリオも描けない。そんな状況は、事実上デフォルトだ。貸したお金(債権・債券)は紙くずになったことに等しい。

 一方、延滞している借金に対して、国・政府には民間が持ち合わせていない必殺技がある。自国通貨の価値を切り下げることだ。通貨の価値を下げれば、返済すべき元本の価値を下げることができる。債権者が外国の場合、為替で通貨安を誘導する。債権者が国内の場合、インフレを意図的に起こして通貨(現金)の価値を下げることだ。

 ただ、ギリシャの現状では、この必殺技が封じられている。債権者の8割が国外といわれている。ユーロを脱退すれば自国通貨になる新ドラクマはユーロに対して暴落するのは明らかで、ユーロ建ての借金が免責されない限り、延滞債務の負担は新ドラクマ・ベースでは膨れ上がってしまう。

 ギリシャ政府が債務再編成およびユーロにとどまることに意思表明しているのは、このような理由もあるからではなかろうか。

 さて、ギリシャの公的債務は対国内総生産(GDP)比率が約175%だが、我が国日本の比率は約240%であることは歴然とした事実である。ただ、ギリシャの債務は対外である一方、日本の債務の9割以上は対内である。つまり、日本の1000兆円超の公的債務は民間の金融資産というストック、および経常黒字というフローに支えられている。だから、問題ないという考えだ。

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