マネー研究所

NISAで何を買うか

NISAで株式投資 高配当か、成長株か 編集委員 北沢千秋

 

2015/6/23

 メガバンクに大手商社株、薬品株――。少額投資非課税制度(NISA)口座を利用した株式投資では、配当利回りが高い高配当株が購入銘柄の定番だ。少し高い配当を毎年、安定的に受け取ったうえで、うまくいけば値上がり益も手に入るという、一石二鳥をもくろむ投資方法だ。狙いがはまれば2度おいしいが、株価が下がればそれこそ元も子もない。もしもリスクを承知でNISAで株式投資をするなら、値上がり期待の大きい成長株も選択肢に挙がる。

■NISAは株に向く?不向き?

 そもそもNISA口座で株式投資をするのは賢い選択といえるのだろうか。その答えは、各人の投資経験や投資の目的、金融資産の保有状況などで違ってくる。

 投資経験が豊富で余裕資金がある人なら、単純に非課税のメリットを享受するためだけに、NISA口座を活用し尽くせばいい。短期売買だろうが個別株への集中投資だろうが構わない。利益が出れば20.315%(復興特別所得税を含む)の譲渡益課税がゼロになるのだから、年間100万円(2016年からは120万円)の投資枠を利用しない手はない。

 一方、投資の未経験者が資産形成の手段としてNISAを使うなら、株式は不向きな金融商品といえる。そもそも価格変動リスクが大きいうえ、100万円の枠内では購入できる銘柄数が限られて、リスク分散が難しい。しかもNISA口座ではいったん保有株を売却すると投資枠がその分、減ってしまうから、こまめな利益確定や機動的な銘柄入れ替えがやりにくい。

 「NISAは長期投資の手段。1度買った株式は持ち続ければいい」と考えるかもしれないが、その場合は長期保有にふさわしい銘柄を厳選する必要がある。それも初心者にはハードルが高い。

 では、投資経験のない人はNISAで株式を買うべきではないのかというと、必ずしもそんなことはない。例えば、ある程度の金融資産を保有しているが、資産の中身は定期預金や個人向け国債など、低リスク・低リターンの商品に偏っているケースだ。そういう人が余裕資金の一部をリスク資産に振り向け、ポートフォリオ(資産の組み合わせ)全体の期待リターンを高めるのは、有効な運用戦略といえる。そのうえで、もしも株式投資に関心があるなら、NISAの投資枠内で株式を買うのは悪くない選択だと思う。

■「あわよくば値上がり益も…」

A.NISAで人気の
主な高配当利回り株
銘柄名予想配当
利回り(%)
β値
三井物3.80.5
キヤノン3.61.0
住友商3.40.5
みずほFG3.01.1
武田3.00.6
三菱UFJ2.11.6

注)β値の出所は日経電子版

 問題はどんな銘柄を買うか。ネット証券が公表しているNISA口座の保有株ランキングを見ると、上位にはみずほフィナンシャルグループ、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井物産、武田薬品工業、キヤノンなど、名だたる高配当利回り銘柄が並ぶ(表A)。これらの銘柄を中長期保有し、配当を安定的に受け取ったうえ、あわよくば値上がり益も手にしたい――。既存のNISA投資家のそんな狙いが透けてみえる。

 配当利回りの高い銘柄は、株価の変動が比較的穏やかなのが特徴だ。株価が下がると利回りが上昇するので、配当狙いの買いが増え、株価の下支えとなりやすい。

 個別株の値動きが市場全体の動きにどの程度感応するかを示すβ値(値が1なら相場全体と同じ値動き、1を上回ると相場全体と同方向により大きく動き、1を下回ると相場全体より小幅な値動きになる)をみると、大手商社株や大手薬品株は大きく1を下回っている。相場全体が下げれば影響を受けざるを得ないとしても、相対的には下値抵抗力のある銘柄群といえそうだ。

 半面、値動きが穏やかというのは、相場の上昇局面では市場全体の上げに追いつけない可能性が高いことも意味する。配当利回りの高い銘柄は、成長のための投資機会が限られ、その代わりに株主への還元を手厚くするという成熟企業が中心。中長期的な株価上昇の原動力となる利益成長力では見劣りする企業も多く、大きな値上がり期待は持ちにくい。

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