梅雨どきに注意 健康に悪影響を及ぼすカビの対処法
シンク回りと浴室はカビの発生源
「カビには有益なものもたくさんあり、醤油や味噌は、麹菌というカビの一種の働きを利用して作られています。しかし一方で、健康に悪影響を及ぼすカビも多いので注意が必要です。カビの生えやすい場所と、対策方法を知っておきましょう」と話すのは、衛生微生物研究センター所長の李憲俊さんです。
住まいの中でカビが生えやすい場所は、シンク回り、浴室など水が溜まる場所。普段は目にする機会の少ないトイレの水槽の中、浴室の床下などにもカビは繁殖しています。
また、湿気がこもって通気性の悪い場所も、カビの温床になりがち。例えばシューズボックスやクローゼットの中などもカビが発生しやすいので気を付けましょう。
さらに、結露が原因となってカビが発生する場所もあります。住まいの北側の壁、窓枠、浴室の天井などがそれです。
浴室の天井には、浴槽から上がった蒸気が結露し、カビが生えます。「浴室の天井にカビが生えていると、換気扇を回したとき、カビの胞子が舞い落ちてきます。肉眼で見えない場合でも、天井から落ちてきたカビの胞子が、浴室の中を大量に浮遊している例がありました」と李さんは説明します。
千葉大学真菌医学研究センター教授の亀井克彦さんは、「カビは、感染症やアレルギー、中毒などの病気が起こる原因にもなるので十分注意してください」と話します。
では、カビを退治するにはどうすれば良いのでしょうか。
換気扇だけではダメ 入浴後には濡れた床や壁を拭く
カビが生えるのを防ぐために、入浴後に換気扇を回している人は多いでしょう。しかし、李さんは「換気扇を回してもカビの発生は予防できません」と説きます。
換気扇を回すと浴室内の湿度は下がりますが、濡れた床や壁は完全には乾きません。カビは水がある場所に生えるので、この水を拭きとることが重要です。入浴後には、まず濡れた床や壁を拭き、その後で換気扇を回して湿気を取るのが正解だそうです。
気が付かないうちにカビが生えているのは、浴室の天井です。しかし浴室の天井を毎日拭くのはとても大変なこと。そこで、時間の余裕のあるときに、アルコールなどを使って天井のカビを取った後、カビ取り用のくん煙剤を使うのが良いそうです(参考・ライオンのホームページ「Lidea」より)。
その後は、1~2カ月に1回程度、くん煙剤を使えばカビが生えるのを防げます。天井を拭くときには、カビを吸い込まないように必ずマスクをしましょう。
キッチンや洗面所などの水回りも、濡れている部分を拭いていつも乾かしておくことがポイントです。濡れやすい部分はほぼ決まっているので、タオルなどを置いておき、気が付いたときにすぐ拭くクセをつけてカビが生える環境を作らないようにするといいですね。
加湿器とエアコンは定期的にカビ取りを
家電に生えるカビも注意が必要です。加湿器は水を使うために、カビが繁殖しがちな家電。亀井さんは、「加湿器の手入れをしないと、中に黒カビが生え、このカビが空気中に噴霧されることになります。黒カビは、過敏性肺炎の原因になるので、必ず定期的に手入れしましょう」と話します。
また、李さんは「加湿器に入れる水は必ず水道水を使うこと。ミネラルウォーターはカビの繁殖を助けることになるので、絶対に止めてください」と強調します。
エアコンの中にもカビが生えるので、フィルターや吹き出し口の部分のカビを定期的に取り除きましょう。自動的にフィルターが掃除されるタイプのエアコンでも、吹き出し口にはカビが生え、そのカビが部屋中にまき散らされるので掃除を忘れないようにしてください。
カビの毒は熱にも強い
食べ物に生えるカビについて、亀井さんはこう話します。「すべてのカビが毒を持っているわけではありませんが、身の回りにあるカビに、意外にも毒性があるのです。カビの毒性は熱にも強く、加熱しても毒は弱まりません。カビが生えた食物は、たとえ生えている部分が少なくても、胞子がついている可能性があるので、食べないようにしましょう」。
一方、自然界の中にはある程度のカビがいるのが普通なので、神経質になり過ぎる必要はないとのこと。注意したほうがいいのは、こんな場合です。「閉鎖された居住空間の中に、カビがたくさん繁殖している状態は良くありません。カビが明らかに増えている場合や、カビ臭さを感じるようなら、早めに除去してください」(亀井さん)。
住まいの水回りは常に乾かしておくことを心がけ、加湿器、エアコンなどは定期的にカビを取り去り、カビの害を予防して快適に過ごしましょう。
(ライター 芦部洋子、構成 加藤京子)
[nikkei WOMAN Online 2015年6月3日付記事を再構成]
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