女子人気でフリマアプリ躍進、スマホに特化が鍵
日経エンタテインメント!
「フリマアプリ」こと、フリーマーケットアプリが好調だ。1日に数十万品が出品される最大手のメルカリは、2015年6月現在で1500万ダウンロード(以下DL)を突破。1000万DLにはリリースからわずか1年半で到達するという急成長を見せている。あの大ヒットゲーム、パズル&ドラゴンが1年で築いた成長曲線に迫った形だ。
フリマアプリとはスマートフォン(以下スマホ)で撮影した洋服や家電などを、自ら設定した価格で他のユーザーと売買できるというもの。売り上げをアプリ内のポイントに換えて購入資金にあてるなど、スマホ内で完結できる手軽さが受けて20代30代の女子を中心に利用者が増えている。また手数料に関しては商品が売れた時にのみ、売値の約10%が出品者に発生する仕組みを取っているところが多い。メルカリの手数料は現在10%だが、2014年9月までは無料キャンペーンを行うことで、DL数を伸ばしてきた背景がある。
ここまでヒットした理由は、スマホの普及と、それに合わせたショッピングの形を追求したことにある。従来の買い物といえば、休日に出かけたり、家のパソコンからのネットショッピングが主であった。そこに「スキマ時間」を有効活用できる、スマホに特化したショッピング体験を持ち込んだのだ。
メルカリ取締役・小泉文明氏によると「メインページには、タイムラインに複数の商品を写真で大きく見せることで、『なにかいいものないかな?』というウィンドウショッピングの感覚を楽しんでもらっている」という。実際にフリマアプリを利用するきっかけとなった理由の第5位には暇つぶしが入っている(MMD研究所調べ)。
また特に女性は、ここ最近のファストファッションの流行で、安くてトレンド周期の早い洋服の購入が増えた結果、クローゼット内の整理に追われている人も多い。
個人間の取引にこだわる
ネットでの個人間の売買というと、ネットオークションのヤフオク! が先行している。しかし現在はヤフオク!の敷居が高くなっているのだという。ネットショッピングに関する話題を扱うメディアのShopping Tribe編集長・飯塚章氏によると、「ヤフオク!は、多くの業者が参入したことでプロ化が進み、個人間の売買が『対業者』に力関係で負けてしまう側面がある」と言う。
そこでフリマアプリでは、個人間での取引にこだわることで差異化を図っている。メルカリは、フリーマーケットという世界観を大事にするため、業者はユーザー登録をすることができない。また利用者を女性に限定することで人気を集め、業界2位の320万DLを誇るフリルも、業者向けにはあえて別のページを設けて個人と競合することは避けている。
フリマアプリを使っている人からも、「もうけたことよりも、売れた事実がうれしい」、「コメント欄を使い、相手と値引き交渉をするときのフリマ感覚が楽しい」と、体験やコミュニケーションを楽しむ声が多い。加えてフリルには出品者をフォローできる機能もある。フリル広報部・永里元気氏によると「例えばハンドメイドの商品を出品する人の中には2万人のフォロワーを持つ人もおり、新たなコミュニティーの場としても盛り上がりを見せている」と言う。
今後は、後発組である企業規模の大きいLINEや楽天が展開するフリマアプリの巻き返しも注目される。またジャンル特化型のものも見逃せないという。「アニメやフィギュアなどのオタク系アイテムに限定したオタマートや、ゴルフクラブに特化したゴルフポットなど、一定の市場を持つジャンルには可能性がある」(飯塚氏)。ネットショッピングに新風を巻き起こしたフリマアプリは、市場をまだまだ拡大しそうだ。
(日経エンタテインメント! 中桐基善)
[日経エンタテインメント! 2015年6月号の記事を再構成]
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