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職場の知恵

結婚の壁越えろ 出生率低下、国が婚活支援

 

2015/6/9

 少子化が止まらない。2014年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの推定人数)は1.42で9年ぶりに低下した。原因の一つが未婚化・晩婚化だ。結婚願望はあっても出会いが少なく、相手が見つからない。国は少子化対策として結婚支援にも踏み込む考えだ。

■政府が少子化社会対策大綱

先輩ママの体験談を聞く鍋島勢理さん(奥左、東京都渋谷区)

 「よいパートナーに恵まれました」「秋に式を挙げます」。結婚情報サービス会社ツヴァイ新宿店(東京・新宿)は待合スペースに成婚に至った会員のメッセージを張る。結婚が決まれば退会。ただ「子どもが生まれました」など元会員が出産の報告を電話やはがきでしてくる。

 同店マリッジコンサルタントの藤原真由美さん(52)は約10年間、結婚相手探しを支援してきた。かかわった会員は1000人を超える。「うち7割は子どもが欲しくて結婚相手を探しに来る。退会後の出産報告は格別のうれしさがある」とほほ笑む。

 「男女ともに子どもが欲しくないわけではない」。女性で目立つのが30代後半の駆け込み入会だ。仕事をがんばり結婚を先延ばし。出産の身体的期限が迫って婚活に本腰を入れる。藤原さんは「良いパートナーを見つけても出会ってすぐに結婚はできないし、出産はさらに時間を要す。本当はもっと早く動けば希望もかないやすいのに」と話す。

 合計特殊出生率は人口動向を示す指標の一つだ。分岐点は2.07。この水準を超えないと人口は増えない。日本は約40年下回り、少子化は深刻だ。3月に政府は今後5年間で重点的に取り組む施策を少子化社会対策大綱にまとめた。大綱の策定は04年、10年に次ぎ3回目だが、今回初めて結婚支援を盛り込んだ。

 結婚するか否かは個人の選択。行政が介入すべきではないと避けてきた。ただ少子化に歯止めがかからず、仕事と子育ての両立支援策の拡充などの対策だけでは不十分だと方針を転換した。14年の婚姻件数は64万件で戦後最低を記録した。結婚したい若い世代の支援を進める一方で、妊娠しやすい年齢など家族形成に必要な情報も提供していく。

パートナーを見つけたカップルから結婚・出産報告が届く(東京都新宿区のツヴァイ新宿店)

 人口減少に悩む自治体はすでに動き出している。広島県は14年度から「企業内婚活サポーター」を養成している。地域の仲人養成に取り組む自治体はほかにもあるが、県は企業に目を向けた。適齢期の男女は職場で長い時間を過ごす。出会いの創造は職場の方が効果的と考えた。

 相性の見極め方や婚活イベントの開き方の講座を開き、48社で婚活サポーターが誕生した。県子育て・少子化対策課は「独身男女を集めた社内イベントのほか、サポーター同士のつながりを活用して他社との婚活パーティーなどを開いてほしい」と期待する。

 「本気で恋愛したい登録者を募集」。鳥取市は14年11月に「婚活サポートセンター」をつくった。20歳以上の男女が会員登録し、婚活イベントを定期的に開く。好印象を与える服の講座を開いたり、恋愛相談に乗る婚活コーディネーターを置くなど恋愛力向上を手助けする。

 これまでの登録者は670人。当初目標の300人は半年とたたずに達成した。誕生したカップルは39組に上る。「結婚しないことには出産は増えない。これからは行政も男女の出会いに主体的に踏み込まないと少子化を止められない」(市政策企画課)

■キャリアと子育て、二者択一ではだめ

 「子どもはかわいいもの?」「グローバルな仕事に就きたいけど結婚できるか心配」。東京都内のイベントスペースで5月下旬、女子学生が子育て中の母親へ素朴な疑問を投げかけた。

 妊娠・子育て中の女性の交流促進団体「プレママパーティ」と、東京大学や青山学院大学などの女子学生らが組織する「日本の明日を考える女子学生フォーラム」の共催イベントだ。「仕事と子育ての両立は本当にできるのか。キャリア志向が高い女子学生は不安でいっぱい。先輩ママの本音を聞く機会をつくった」と同フォーラム代表の鍋島勢理さん(23)は説明する。

 保育園や幼稚園に子どもを通わせながら働くママの暮らしぶりを聞き、学生の不安は少し和らいだ。ただ「若いときに仕事を優先し、年齢的に1人しか産めなかった」など現実を知った。プレママパーティ代表の山口りえさん(45)は「キャリアと子育てを両立するなら仕事選びが大切。就職してからでは手遅れ。女子学生に伝えたいことはいっぱいある」と話す。交流会は毎月継続していく。

 結婚は出産への一歩だが、少子化は結婚支援だけでは解決しない。キャリアと子育てを両立しにくい環境が、女性の未婚化・晩婚化を促している。独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によれば、女性管理職は42%が独身で、子どもがいるのは37%にとどまる。男性はそれぞれ9%、81%で差は歴然。キャリアか結婚・出産かの二者択一を女性だけが迫られる状況では少子化の解決は程遠い。

(女性面編集長 石塚由紀夫)

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