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かれんとスコープ

「他人に迷惑」、墓石残さず 跡継ぎなく家意識薄れる

2015/6/7

 新しい葬り方が増えている。他人のお骨と一緒に納めたり、樹木の下に埋葬したりと様々。少子化で「他人に迷惑をかけまい」と墓石を残さない人が増え、墓文化が変わり始めた。

 「跡継ぎがいないので、墓を作っても仕方がない」。埼玉県在住の加藤洋子さん(仮名、79)は自分の死後のお骨について、他人のお骨と一緒の合葬墓への納骨を希望している。2年前に亡くなった夫のお骨も合葬墓にある。夫は三男で実家の墓に入らない。墓を新設しても、墓守(はかもり)となる子もいないので合葬墓を選んだという。

 合葬墓は同県越谷市の宝性寺越谷別院が運営。13回忌または33回忌まで骨つぼを保管後、他のお骨と合祀(ごうし)する。寺院側は毎日、読経し、永代供養する。2014年度の申込数は10年前の約6倍に急増。跡継ぎ不要のほか費用面も人気の理由だ。洋子さんは夫の死後、33回忌の計画で夫婦2人分を契約。永代使用料は計60万円。数百万円の従来の墓より「費用が安くて助かる」と洋子さん。

 「のびのび眠りたい」。千葉県の木村敬子さん(仮名、77)は樹木葬を希望。県内の寺院に場所を確保し、NPO法人りすシステムに死後の手続きを委ねる生前契約も結んだ。お骨を布に包み、樹木付近に33回忌まで埋葬。お骨は分解されて土にかえる。夫も子もない敬子さんは「他人に迷惑をかけたくない」。神奈川県の松野恵さん(仮名、53)にも夫と子がなく、お骨の扱いは火葬場に委ねる。「形が残らなくても良い」(恵さん)

 墓と言えばかつて「○○家之墓」が一般的で、子孫が継いできた。戦前は「家制度」が存在し、長男が家名や財産、墓を継承。二男や三男の分家も最初の男子が継いだ。子がないと養子をとるのが自然だった。戦後の「家制度」廃止後もしばらく「家」意識は強く、墓の継承も重視された。

 茨城キリスト教大学の森謙二教授は「葬法の変化の最大の要因は少子化だ」と指摘する。学歴志向による教育費の増加や女性の社会進出などで合計特殊出生率は1975年から2.0未満が続き、90年代から1.5を下回る。養子への意識も変わり、統計数理研究所(東京都立川市)の調査で「子がないときは他人の子でも養子にもらって家をつがせた方がよい」と答えた成人男女は53年に74%で、2013年に20%だった。何が何でも「家」を継ぐという意識は薄まり、墓守が減少した。

 戦後教育で育ったいまの70歳代以下の世代には個人主義も浸透。墓にこだわらない自由な埋葬を好む人が増えた。「個人主義は自立も含む。他人に迷惑をかけず、自分のことは自分でするよう育てられた人が多い」(森教授)

 マイボイスコムを通じて葬り方に関するネット調査(20~60歳代)をしたところ、「自分の遺骨をお墓に入れるつもりはない」と答えた人は36.8%。3人に1人は墓にこだわりを持っていない。

 国立社会保障・人口問題研究所の将来推計では、日本の年間死亡数は現状の約127万人から30年代に約167万人まで増える。出生数は現状約100万人で、50年代に50万人を下回る。首都圏では高齢化や地方出身者による故郷からの墓の移転などで墓不足が問題だが、将来は新しい葬り方がさらに存在感を増す。

 一方、跡継ぎ不足や価値観の変化は無縁墓の発生にもつながっている。墓を新設したい人には墓地内の用地不足を引き起こす。空き家と同様に難しい問題となっている。

 家族社会学が専門の千葉大学の米村千代教授は「近年は『家』よりも、自分に近い人を大事にする意識が強い」と指摘する。従来の墓は要らないが、残された身近な人に配慮して、お参りが容易な合葬墓や樹木葬を選ぶ人もいる。葬り方の新たな文化が生まれている。

 短文投稿サイトのツイッターでは新しい葬り方に関して多数のつぶやきが見られた。

 散骨を求める声が多く、「散骨しておくれ」「戒名なし、葬式なし、散骨希望」のほか、「死んだら骨は宇宙に散骨してほしい」という宇宙葬への希望も書かれていた。「樹木葬がいいな」「今日合葬墓を見に行ってその雰囲気に感銘を受けてきた」という声もあり、従来の墓に対してはこだわりがないようだ。

 親族からの解放を願う声も発信され、「長男だけど墓には入りたくない(散骨されたい)し生涯独身だろうから弟にくれてやろうと思ってる。イランといったら責任持って俺がたたむ」「長男嫁で義実家も近いけど、墓守るとか嫌だ!」とつぶやかれていた。

 一方、「散骨や樹木葬にしてしまうと故人と直接に向かい合う場がなくなってしまう」と、新しい葬り方に慎重な意見もあった。

 この調査はホットリンクの協力を得た。

(福士譲)

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