6月の給与明細書は「住民税」を要チェック
6月の給与明細で見るべき「住民税」
6月の給与明細書で見るべきポイント、それは「住民税」の額です。個人住民税の徴収期間は、毎年6月から翌年5月までの1年間。つまり、住民税で新年度が始まるのは、6月からなのです。
普段はあまり意識されていないかもしれませんが、みなさんが受け取る給与から、住民税が毎月天引きされています。所得税は、毎月支給される給与額によって変動しますが、住民税はどのように決められるかご存知でしょうか?
住民税は、住民が均等に負担する「均等割」と、その人の所得金額に応じて負担する「所得割」から構成されています。
会社勤めの方であれば、前年の1月から12月までの給与所得を基準として、扶養人数や社会保険料、生命保険料などの所得控除を差し引き、税率をかけて計算されます。
こうして算出された年税額を12で割って、端数があれば6月分にその額が加えられるので、6月に少し多めの住民税が引かれ、7月から5月までは同じ額が毎月天引きされるわけです。
月によって給与の額が多くても少なくても、住民税が一定額なのは、こうした理由からです。前年度の収入が相当アップしていれば、6月からの住民税は一気に上がることもあるので、手取り額がかなり変わってくる人もいるでしょう。
引っ越しても、1月1日時点の住所地へ納税
住民税は、1月1日現在の住所地について、前年1月から12月までの1年間の所得に対して課税されます。
引っ越したら、新しい市区町村へ住民税の納付先を切り替えるもの、と思っている方もいるようですが、それは誤解です。
1月2日以降に他の市区町村へ引っ越した場合であっても、1月1日現在の住所地に納めることになります。
たとえば、今年1月1日に横浜市に暮らしていて、2月に東京都武蔵野市へ転居した場合、今年6月から始まる新年度の住民税は、来年5月まで横浜市に納めることになります。かなりのタイムラグがありますが、間違いではありませんので、そうしたものだと思ってください。
会社を辞めたら自分で納付
個人住民税を納める方法は、原則として2つあります。ひとつが「特別徴収」、もう一方が「普通徴収」といわれるもの。ちなみに、65歳以上の公的年金受給者の方は、年金から差し引かれる「年金天引き」となります。
特別徴収とは、事業主(給与支払者)が従業員(納税義務者)に代わり、給与から住民税を天引きして納入するもので、会社勤めの方は、通常この方法によります。会社は、従業員から預かった住民税をそれぞれの市区町村へ翌月10日までに納付します。
一方、普通徴収は個人で直接納付するもので、原則として6月、8月、10月、翌1月の年4回払いとなります。会社を辞めてしまうと給与がありませんから、普通徴収に切り替えて自分で納めることになります。
会社勤めの場合はクレジット払いはできない
以前、従業員の方からこうした質問がありました。「クレジットカードのポイントをためたいから、普通徴収に切り替えることはできませんか?」というもの。よく考えていらっしゃいますね(笑)。
しかし、答えは「NO」です。給与の支払いをする際に所得税を徴収して納付する義務のある事業主は、「特別徴収義務者」として、すべての従業員の住民税を特別徴収して納付することが義務付けられています(地方税法第321条の4)。
したがって、給与をもらっている限り、従業員が自由に納付方法を決められるわけではありません。アルバイトやパートの方も住民税がかかる場合には、原則として給与から徴収して納付することになります。
仕事を辞めるときは注意を
転職活動などで仕事を辞めるときは、(1)特別徴収の継続、(2)普通徴収、(3)一括徴収、の3つからいずれかの納付方法を選択します。
転職先が決まっていて、すぐに転職する場合は、「特別徴収の継続」を選択するのがよいでしょう。この場合、退職する前に、会社に申し出て転職先に提出する書類を準備してもらいます。
特に転職先などが決まっていない場合は、「普通徴収」にして、個人払いに切り替えます。手続きは、会社に行ってもらいましょう。個人で納付するときは、ネットなどを通じたクレジット払いも可能です。
ただし、1月から5月までの間に退職する場合は、普通徴収ではなく、最後の給与または退職金より、残りの住民税を会社から一括徴収されて納付するのが原則です。
最後に、退職するときの注意点として、住民税は後払いであることを忘れてはいけません。
たとえば、3月に退職して住民税を一括納付したとしても、それは前年度の住民税。5月になると、無職であっても前年度の所得に対して決定された住民税の通知書が届きます。こうしたお金も考慮して、退職後の計画を立てておくようにしましょう。
社会保険労務士。米国企業日本法人を退職後、社会保険労務士事務所等に勤務。平成17年3月、グレース・パートナーズ社労士事務所を開設し、現在に至る。女性の雇用問題に力を注ぎ、【働く女性のためのグレース・プロジェクト】でサロンを主宰。著書に「知らないともらえないお金の話」(実業之日本社)をはじめ、新聞・雑誌、ラジオ等多方面で活躍。
[nikkei WOMAN Online 2015年5月26日付記事を再構成]
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