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帝人「総合職の新卒採用、3割以上は女性にせよ」 トライ&エラー 活躍、先駆企業

2015/5/23

 「総合職の新卒採用は3割以上を女性にせよ」。帝人は経営トップの英断で2001年度以降、安定的に女性総合職を採用してきた。十数年に及ぶ試行錯誤を経て、組織のあちこちで女性の活躍が目立ち始めた。

帝人ファーマの医療機器製品開発部でプロジェクトリーダーを務める穂谷百合香さん(山口県岩国市)

 「同業他社も開発できていない。病気に悩む人たちが自宅で治療できる機器を開発中です」。帝人ファーマ医療機器製品開発部の穂谷百合香さん(38)は14年4月、同社初の女性プロジェクトリーダーに就いた。営業や商品企画と技術者の間に立ち、開発を指揮する。

 01年春に工業大学院を修了し、技術系総合職として「性別を気にも留めなかった」帝人に入社した。「総合職の3割を女性に」と採用方針を切り替えた初年度入社組だ。

 「女性が活躍できる土壌をつくろう」。帝人は1999年夏の役員会議で方針を決めた。音頭を取ったのは安居祥策社長(当時)だ。欧米企業との合弁事業や取引を通じて「国際的な企業は女性が活躍している。成長に女性の力が不可欠」と痛感したからだ。

 初期から採用に携わる藤本治己氏は「それまでの女性比率はせいぜい10%。女性用の更衣室や休憩室も十分になく、手探りだった」と振り返る。

「最近は女性が増えた」と話す沼田みゆきさん(東京都千代田区)

 帝人技術本部情報分析班の沼田みゆきさん(36)は03年入社だ。新人研修中は女性同期が約20人いたが、配属された愛媛の松山事業所では同僚約100人のうち女性が沼田さんを含め2人。「出身は女子大。突然男社会に置かれ、世間話をする相手がいない。帰宅しても独り。半年は寂しい思いをした」と苦笑する。

 「環境になじむしかない」。父親と同世代の男性にも臆せず話しかけた。自分の業務に関係がなくても、その人の仕事を見て聞いて覚えた。「教わる姿勢で臨めばていねいに教えてもらえた。2年目に『仕事を続けていけそう』と思えた」

 01~15年に採用した総合職は計1551人、うち女性は479人。安定して目標を達成したが、11年春入社だけ19%にとどまった。01年に大量採用した女性総合職に、育児休業者や短時間勤務者が増えた頃だ。「制約なく使える男性がほしい」。現場が突き上げた。

 ただ翌年は41%に跳ね上がる。「決めた目標は必ず守れ」。トップは妥協を許さなかった。管理職にダイバーシティー(価値観の多様化)の重要性を説き、女性社員にはキャリア意識の向上を促すセミナーを開いた。

 総合職女性にとってキャリアと子育ての両立は難題だ。帝人新事業推進本部の山田順子さん(35)は心が折れかかったことがある。01年に入社。営業としてキャリアを重ねた。だが10年と12年に子どもを産んで一転する。以前は終電を気にせず週2~3回は出張、2~3カ月に1回は海外出張をこなした。

 子どもがいると、そんな働き方はできない。13年に5段階人事評価で下から2番目のDが付いた。平均以下の評価は入社以来初めてだった。

 その直後に全社営業会議が開かれた。「互いに協力しあえばもっと営業成績は上がる」。そう檄(げき)を飛ばす副社長に「現実は簡単ではない」と噛みついた。後日、副社長に呼ばれた。「君の状況は分かる。今は臆せず頑張れ」と励まされた。「気に掛けてもらえているのが分かり気持ちが晴れた」。できる仕事に集中し評価は回復。今は管理職一歩手前だ。

 曲折を経ながらも、女性総合職3割採用を15年続けたのは経営層の方針がぶれなかったからだという。「トップダウンだから、各職場に改革を迫れる」(日高乃里子ダイバーシティ推進室長)。00年度に0.5%だった女性管理職比率は14年度に3.8%に増えた。

 ただ01年度以降の採用者が管理職年次に達するのはこれから。20年度に8%まで増やせる見通しだ。長年組織にまいた種がようやく花開こうとしている。

(女性面編集長 石塚由紀夫)

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