変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック

中高年層の新たな伴侶を求める「シニア婚活」が活発になり、結婚情報サービスの需要が拡大している。ただ、いざ結婚となると、これまでに培った考え方や生活習慣、介護や相続、家族の反対といったハードルは若い世代に比べて多い。最近は法律上の婚姻や同居を必ずしも相手に求めないといった事例も目立ち、結婚形態の幅は広がっている。

「ナイス、ストライク」。10日、東京・江東のアミューズメント施設にあるボウリング場で50~60代の男女13人がゲームを楽しんだ。終了後は会場を移し懇親会。結婚情報サービス、オーネット(東京・品川)がシニア向けサービス「スーペリア」の会員を対象に開いた婚活イベントだ。

毎月の紹介書発行、イベント・パーティーへの参加、引き合わせの3つの方法でパートナー探しを支援する。人気なのがボウリングのような「同じ趣味を持つ同士が楽しめるイベント」(同社シニア専門アドバイザーの中野淳史さん)だ。毎月3~4回、イベントを開く。

埼玉県の男性会社員Gさん(64)と神奈川県の自営業の女性Hさん(54)は2月のスーペリアの「和菓子クッキングイベント」に参加した。水泳や卓球など共通の趣味でデートを重ね、4月に入籍した。それぞれ再婚だ。「支え合いながら、心豊かに過ごしたい」とGさんは話す。

「ひとりでいるのが寂しい」「一緒に旅行をする相手がほしい」。高齢化が進み、配偶者との離別や死別を経験したシニアに婚活は広がっている。「元気なシニア層が増え、子ども世帯との同居が減ったことでパートナーを求める動きが活発になっている」(NPO法人全国地域結婚支援センターの板本洋子代表)

動きに対応し、中高年向け結婚情報サービスを手掛ける事業者が増えている。スーペリアの会員数は「1年前の約5倍に増えた」(山中崇志オーネットシニア事業グループリーダー)。関東地区で展開しているが、今後、大阪に事業拠点を開く。

中高年専門結婚相談所を運営するアイリンク(東京・新宿)の池田淳一社長によると、最近は「子どもがインターネットで事業者の比較サイトを調べてから、親と一緒に訪れる例が目立つ」という。

シニア婚活が盛んになるにつれ、婚姻形態が変わってきた。「形にとらわれないパートナー探しが多い」と結婚情報サービス、茜会(東京・新宿)のカウンセラー、立松清江さんは話す。婚姻届を出さない「事実婚」や、住環境を変えず互いの家を行き来する「通い婚」は珍しくない。全国地域結婚支援センターの板本代表は「今は10組のカップルができたら、籍を入れるのは1、2組」という。

茜会は入会書類を提出する際に「入籍を希望するか」と尋ねる。このところ「決めていない」と答える例が増えている。「結婚や入籍にこだわると家族の理解が得られず、いい縁をあきらめなければならないことがある。柔軟に考える方が話がスムーズに進む」と立松さん。

小倉健二朗さん(72)は茜会が主催するパーティーでパートナー(67)と出会った。小倉さんの自宅は千葉県で、パートナーは東京都内。これまでの互いの生活を大切に、無理のない範囲で時間を共に過ごす事実婚を選んだ。

月に何度か互いの家に泊まり、一緒にコンサートや旅行を楽しむ。入籍や同居はしなくても死ぬまでパートナーとして付き合うと小倉さんは遺言を書き、財産の2割をパートナーに残す。3人の子どもたちも納得済みという。

神奈川県の男性会社員Eさん(64)と山梨県の自営業の女性Fさん(60)は昨年秋に開いたスーペリアのウオーキングイベントで知り合い、パートナーになった。共に連れ合いは死別。入籍はしていない。住まいは別々で、通い婚の形をとる。

事実婚は法律婚にない課題が待ち受ける。2人は「墓はどうするのか」「介護の必要が出た場合はどうするか」「互いの子どもの顔合わせは」など、事実婚に伴う課題にじっくりと向き合っているという。

茜会の立松さんによると、「シニアは残された時間が少ないと思うのか、早く相手を決めたがる人が増えている」。しかし、あせるのは禁物だ。「ライフスタイルが確立していると、行動様式をすべて合わせるのは難しい。じっくり時間をかけ、互いの考え方や価値観を確認し合うことが大切」と立松さんはアドバイスする。

シニア婚活は60代のボリュームゾーンにある人たちの需要が増えていることが背景にある。茜会の60歳以上の会員は51%と3年前より3ポイント上昇した。人数が多い1947~49年生まれの団塊の世代が60代になり、市場は拡大している。シニアの意識変化もある。かつてのように世間体やメンツを気にしなくなった。「年齢に関係なく、自分の人生をどう豊かに生きようかを最優先に考えている」(アイリンクの池田社長)

現在、50代以上で婚活をするのは「離別や死別による再婚組が主流」(オーネットの山中シニア事業グループリーダー)。だが、晩婚化の急速な進展で今後は初婚組が増えてきそうだ。国立社会保障・人口問題研究所の「人口統計資料集(2014年)」によると、10年の生涯未婚率(50歳時で結婚したことのない人の割合)は男性が20.14%、女性は10.61%。05年の調査に比べると、男性は4ポイント、女性は3ポイント上昇している。予備軍は多い。(大橋正也)

新着記事

Follow Us
日経転職版日経ビジネススクールOFFICE PASSexcedo日経TEST

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック