マネー研究所

カリスマの直言

中国インフラ銀がもたらした日米の蜜月(渋沢健)

2015/5/10

「米政府内では日本との友好関係の重要性が増している感がある」

 率直に考えてみると、70年前は「敵国」であった2国が、その後に築いた歴史は、協働、共生による繁栄という類がない功績だ。もちろん、日本と米国の間には国民感情や文化の違いから生じる摩擦はあったし、これからも起きるだろう。しかし、それを乗り越えて創った友好関係による経済成長は人類の歴史において誇るべき成果といえる。

 安倍晋三首相が訪米して大統領と会談し、日本の首相として初めて上下両院合同会議の演説で日米同盟の絆を強化することは、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立を先導した中国にとっては想定外の展開だったかもしれない。それは、インドネシアのジャカルタで5カ月ぶりに安倍首相と顔を合わせた習近平国家主席の表情に浮かび上がっていた。

 日米の環太平洋経済連携協定(TPP)に関わる協議で「仲間外れ」にされている感がある中国がAIIB構想を立ち上げるのは当たり前だ。そして、中国の東方面の太平洋側に呼びかけても反応がないところ、西方面のシルクロードの先へ声をかけたら、国々が集まってしまった。

 これは、案外、中国にとって誤算であったかもしれない。ひとつは、当初描いていたアジア圏内での発言力を強め、支配しようというイメージが、欧州が一斉に参入したのでガバナンスの要求など目的外のことが生じてしまったこと。そして、何より、AIIBへの参加を当面見送るとした日米が孤立したことによって、2国の同盟意識が一気に高まったことだ。

 旧知のワシントンDC筋によると、米英の財務省は事務レベルでは歩調を合せていたようであるが、英財務相が最終的な政治判断でひっくり返してAIIB参加を表明したようだ。寝耳に水となったホワイトハウス高官が激怒してAIIB参加見送りに固持したという話もあるようだ。最近、来日した米国の有識者いわく「ふと気がついたら、世界における友達は日本しか残っていなかった」と語っていた。リップサービスを割り引いても、日本との友好関係の重要性は現在の米政府内で増している感がある。AIIBが日米の蜜月をもたらしたといえよう。

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