無線撮影で実現 数カ月かけ、夢のレア動物に肉迫
世界一の動物写真
カメラ機材や撮影技術が進歩すると、それまで撮れなかった写真が撮れるようになります。遠隔操作による撮影は、その最たるものといえるでしょう。用心深い動物に人間が近づかなくて済む遠隔撮影を試みる写真家は、写真の黎明期からいたようです。しかし、以前は機材が重かったり、手間がかかったりして、なかなか難しかったといいます。カメラやフィルム、フラッシュなどの機材が軽量化し、無線を使ったワイヤレス撮影機能が登場したのは割と最近で、90年代以降のことでした。
夜行性で高地だけに生息し、巧みなカムフラージュで周囲に溶け込むユキヒョウを撮影することは、長い間、動物写真家たちの夢でした。スティーブ・ウィンターはインド北部にあるヘミス国立公園を詳しく調べ、3本のけもの道が集まる場所にカメラと赤外線自動撮影装置、照明をセット。3週間おきにカメラをチェックして3カ月後、夢にまで見た、吹雪の中のユキヒョウの撮影に成功したのでした。
愛情と敬意を表現する動物目線での撮影
一般に野生動物の目線は人間よりも低いところにあるため、普通に立って撮影すると、どうしても見下ろすアングルになってしまいがちです。そこでカメラと被写体の目線の高さをそろえて撮影すれば、動物に対する愛情や敬意を表現できます。
そのことに気づき、動物の目線での撮影手法をいち早く取り入れたのが、フランス・ランティングでした。その後、多くの写真家がこの手法をマネするようになり、今では、地面の近くにつくった隠れ家に潜むなどして撮影する写真家も増えています。
このインパラの写真は、動物の目線で撮られた比較的初期の写真です。水を飲んでいるインパラの目線は、水面ぎりぎり。この時、ランティングは地面にはいつくばって、インパラと目線の高さをそろえました。それによって、ずらりと並んだインパラの姿と、水面に映る姿がシンメトリーとなり、優雅な構図が生まれたのです。横から差し込む、体を金色に染める夕暮れ時の陽光も、見事にとらえられています。
(日経ナショナル ジオグラフィック社)
[ナショナル ジオグラフィック『世界一の動物写真』を基に再構成]
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