赤井英和の腹は何センチやせたか…CM業界の大疑問
日経エンタテインメント!
石原さとみが英会話を披露するイーオン、土屋アンナとローラが通信教育を受けるユーキャン…。「習い事」のCMに出演しているタレントは、本当にその習い事をしているのだろうか?
答えは、イエスだ。
石原さとみは「海外旅行や仕事に役立てたい」と実際にイーオンの英会話レッスンを受けており、その様子は「さとみのレッスンレポート」として定期的にウェブに公開されている。CMで見せる生き生きとした英会話は、そのリアルな「学び」のたまものなのだ。
一方、ユーキャンのCMに出演している土屋アンナは「学校の連絡帳や手紙とか、ママは意外と字を書く機会が多い。そんな時にやっぱり、字がキレイじゃなきゃ!と思った」と、実際に「実用ボールペン字」の通信講座を受講。「夜に家のことを全部終えてから、1~2時間くらい集中して勉強した」と、ユーキャンのウェブサイト「マナトピ」で語っている。
料理好きのローラは、「食からキレイになるっていうことをもっともっと勉強したい」と、「食生活アドバイザー」の資格に挑戦中。仕事の空き時間にテキストを読み、夜、寝る前にも勉強するようにしているという。みんな、真剣に習い事に勤いそしんでいるのだ。
これら「現実連動型CM」は、タレントにリアルな広告塔になってもらえるため、企業側のメリットが大きい。一方、タレントの立場からすると、仕事やプライベートで役に立つ「学び」を、仕事の一環として行えるという良さがある。これからも、リアルな習い事CMが増えそうだ。
2007年に「予想外の家族」として登場以来、8年にわたってソフトバンクモバイルの「顔」であり続け、CM好感度調査でも8年連続首位を独走している「白戸家」のシリーズ。携帯電話会社は告知内容が多く、また、競合他社との競争も激しい。そのため白戸家は矢継ぎ早に新作が作られてきた印象があるが、これまでいったい何本作ったのか。
ソフトバンクからの回答は、ズバリ「190本」(2015年3月19日時点)。単純計算で年に約24本。月2本の新作が発表されてきたことになる。やはり驚異的なスピードだ。
2015年は染谷将太と広瀬すずを起用し、お父さんとお母さんの高校時代を描くシリーズもスタート。テレビCMが生んだ国民的家族の疾走は、どこまで続くのだろうか。
「SAMURAI,FUJIYAMA,CUPNOODLE」というキャッチコピーで、「日本の今」にこだわったCMを展開している日清食品カップヌードル。これまで「オタク」や「壁ドン」などで楽しませてくれたが、最近話題になったのは、テニスプレーヤー錦織圭選手の起用だ。
和テイストの異空間で、錦織選手が木刀を使ったテニスバトルを披露。最後は錦織選手の代名詞「Air‐K」をキメて見せたが、あれらのスーパープレイ、CGではなく、すべて本物。
ニューヨークで行われた撮影では、サーブからバックハンドまで本物の木刀を使ってやってのけ、「Air‐K」が決まると、現地のエキストラから歓声が上がったとか。さすがは日本が誇るテニスの"サムライ"だ。
劇的な肉体変化のビフォー&アフターを見せつけるパーソナルトレーニングジム「RIZAP」のCM。今年は俳優・赤井英和の出演が話題に。現在55歳の赤井は、元ボクサー。試合で重傷を負って俳優に転身。最近は『半沢直樹』の町工場社長役で評価を高めた。
そんな赤井を「健やかな体形を取り戻したい人々の希望の星に」と起用したのがRIZAP。以降、赤井は約2カ月間、ライザップでトレーニングに励んだという。
結果、体重は7キロ減となり、ウエストは15.5センチも引き締まった。さらに1月には30年ぶりにリングに上がり、ボクサー姿も披露。まさに中高年の希望の星だ。
砂浜を歩くように移動していく、巨大な「骨組み」…。中外製薬のCMを見て、「あれは何?」と思った人は多いだろう。
その正体は「ストランドビースト」というアート作品。作者は1948年生まれのオランダの芸術家、テオ・ヤンセン。もともとテオは物理学者だったが、20代後半に芸術家へ転向。40代に入って生み出した代表作が「ストランドビースト」のシリーズとなる。
ストランドビーストはオランダ語で「砂浜の生物」という意味。最初はコンピューター上の仮想生物だったが、やがてプラスチックチューブでリアルな骨格を獲得。風を動力に歩くなど、今も進化中だ。
2014年は長崎県美術館でテオの特別展が行われ、15体のビーストが"一挙上陸"して話題になった。
全世界で累計6400万本の売り上げを記録しているロールプレイングゲーム(RPG)『ドラゴンクエスト』。その壮大な音楽が流れるなか、色とりどりのクルマが優雅に走り抜ける…。「クルマ×ゲーム」というかつてないコラボで楽しませた、トヨタ自動車「AQUA」のCM。
そこに登場した、いかにもドラクエ的世界観を持つ古城は、オーストリアに実在するクロイツェンシュタイン城。その歴史は古く、氏族により12世紀に建てられたものの、戦火によって一度は崩壊。長い間廃虚だったが、1874年、炭鉱経営で財を成した、ある伯爵が再建したという。そのため今も個人の所有物で、入場料を払うと中を見ることができる。
CM制作にあたっては、各国の城を探した上で決定したそうで、ロケ地探しにはかなり苦労したよう。またドラクエファンが見ても納得してもらえるよう、カメラワークも徹底的に研究。オーストリアの空撮チームとタッグを組んで、ゲームと同じカメラワークを実写で再現しているという。城だけでなく、撮影方法もこだわり抜いた、ロマンあふれるCMだ。
CMプランナーが企画したストーリーを基に、撮影、編集完成まで責任を持つのが「CMディレクター」。この仕事で腕を磨き、のちに映画監督として大成する「CM出身監督」は多い。
1960年代からCMディレクターとして活躍していたのは、『転校生』『時をかける少女』などで知られる大林宣彦監督。宮沢りえ、池脇千鶴らを輩出した「三井のリハウス」などの名作CMを撮っていたのは、市川準監督。池脇を主演に撮った映画『大阪物語』などで有名だ。90年代に永瀬正敏出演の「J-PHONE」、木村拓哉出演の「JRA」などを手がけ、「CM界の巨人」と呼ばれていたのは、『告白』の中島哲也監督。その中島監督に影響を受けたというのが、2014年『ジャッジ!』で長編デビューした永井聡監督だ。
ほかにも『鮫肌男と桃尻女』の石井克人監督、『好きだ、』の石川寛監督、『ミツコ感覚』の山内ケンジ監督など、注目の監督は多い。
以前は映画進出するとCMから遠ざかる人が多かったが、最近では映画とCM、両方を撮り続ける監督が増えている。出演者との出会いや映像面の実験など、CM撮影に魅力を感じているようだ。
ビデオリサーチが発表した「タレント別テレビCM量TOP10」によると、2014年に最も出演CMがオンエアされたのは、上戸彩。そもそも上戸はCM契約数が多い上に、ソフトバンクモバイルなど、出稿量(オンエア秒数)が多いクライアントを多く抱える。それがこの1位を支える大きな要因になっている。
ちなみに上戸は同ランキングで10年にわたり上位に君臨し続け、特に2010年以降はずっと1位か2位をキープ。まさに現代を代表する「CMクイーン」だ。
2位にランクインしたのは、堺雅人。2013年の『半沢直樹』大ヒットを受けて、ソフトバンク、トヨタ自動車など、大口クライアントとの契約が急増。前年の40位からジャンプアップを果たした。
堺と同じアラフォー俳優で、前年59位から大躍進したのが、4位の西島秀俊。2013年の大河『八重の桜』で株を上げて以来、パナソニック、武田薬品工業、日清食品など、じわじわと大口を増やした。
表を見ると、10位以内の男性は40代以上、女性は20代が大半を占める。女性は「フレッシュさ」、男性は「安心感」を企業が求めているということのようだ。
しわ取り、くま消し、目を大きく…。デジタル技術が発達した現在では、顔写真の修整は、それほど難しいものではなくなった。広告でも、ポスターなどのグラフィックは写真の修整が当たり前のように行われているといわれ、「レタッチャー」と呼ばれる専門職の人たちが大活躍している。
それでは、動画のCMの場合は、どうなのか。実はCMでも修整は当たり前のように施され、撮ったままの状態で放送に至ることはほとんどないのだとか。美しい人はより美しく、そうでない人はそれなりに、というわけだ。
しかし、そんな時流に逆らい、「私のしわが美しくないというの?」と修正を拒んだ「CGNG女優」も存在するという。あなたなら、どちらを起用する?
シャンプーなどのヘアケア製品のCMで目にするのが、サラサラの美しい髪。ときには天使の輪が付いたまま扇状にフワリ…といったミラクルなカットがあるが、あれはほとんどCGだ。
画面の下に小さく「イメージです」と書かれているように、髪の毛1本1本をコンピューターで描いたり修整したりした、まさに「イメージ」。
そんなヘアケア専門のCG制作会社もあり、特に技術が高く低価格な会社が、タイに多いのだとか。
(ライター 泊貴洋)
[日経エンタテインメント! 2015年5月号の記事を基に再構成]
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