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すかいらーく、カフェ進出 メニューは「流行」満載

2015/4/11

日経トレンディネット

 すかいらーくグループが2015年3月7日、横浜市南区に新業態となる郊外型カフェ「むさしの森珈琲」をオープンさせた。同グループはファミリーレストランの「ガスト」「ジョナサン」をはじめ和食レストラン「夢庵」、中華レストラン「バーミヤン」のほか、イタリアン、しゃぶしゃぶ、回転寿司、焼き肉など19ブランドで国内に3000店近い店舗を展開している。ただ意外にもカフェ業態はこれが初めてだという。

2015年3月7日にオープンした「むさしの森珈琲」1号店(神奈川県横浜市南区六ツ川2丁目108-8)。営業時間は7~23時 (モーニング7~11時)、116席

 郊外型カフェは近年、「コメダ珈琲店」をはじめとした客単価1000円程度の店舗がロードサイドを中心に成長していることもあり、2013年のカフェ市場は前年比4%増の1兆602億円となっている(一般社団法人日本フードサービス協会、公益財団法人食の安全・安心財団「平成25年外食産業市場規模推計について[2014年6月]」より)。一方で上位企業のシェア合計が10%に満たず、新規参入でも拡大の余地が大きいカテゴリーともいえる。

 しかしカフェ業態とひとくちにいっても、今、多様なスタイルがそれぞれに伸びている。昔ながらのフルサービスで提供する喫茶店スタイルのカフェ「コメダ珈琲店」「星乃珈琲店」が郊外のシニア層を中心に人気を集める一方、サードウエーブコーヒーブームの火付け役といわれる「ブルーボトルコーヒー」が2015年2月に日本上陸し、行列ができるほどの人気に。さらに都内では海外の有名カフェのオープンが続き、セレブ風朝食ブームも健在だ。

 こうしたさまざまなブームが混在するカフェ市場で、すかいらーくはどんな特色を打ち出してくるのか。期待を胸に、むさしの森珈琲に向かった。

■「世界一の朝食」から「名古屋モーニング」まで全部入り

 同店があるのは、横浜市南区六ッ川という都心からかなり離れたエリア。最寄り駅である京急線「弘明寺」駅から徒歩で20分もかかり、周囲は完全な住宅街。人通りもそう多くはない。グループ期待のカフェ業態1号店をなぜこうした不便な場所にオープンさせたのか、疑問は深まる。

 広々とした店内のゆったりしたソファ席に座り、まずは、メニューをチェック。驚いたのはこうしたロケーションの店でありながら、都心のカフェで提供しているようなセレブ風朝食メニューが豊富なことだ。

デザインコンセプトは「高原リゾートの珈琲店」。すかいらーく発祥の地である武蔵野の自然を感じる、森のようにくつろげる空間をイメージしたインテリアだという

店内は4つのゾーンに分かれている。そのひとつ、高原ホテルのラウンジをイメージした「ラウンジコーナー」

少人数のパーティーも可能な「プレミアムテラスコーナー」。将来的にはバースデーケーキなども予約可能にしたいとのこと

 同店の目玉商品は、注文ごとにメレンゲを泡立てて焼き上げるオリジナルの「ふわっとろパンケーキ」。「青山にもどこにもない、ここでなければ食べられない食感を目指して、開発に1年をかけた」という。またハワイ風朝食の定番メニューであるエッグベネディクトはもちろん、米国西海岸のロサンゼルスで人気の朝食メニュー「エッグスラット」(マッシュポテトと半熟卵をグラスに入れて加熱した料理)もある。

 ではセレブ風朝食だけが売りなのかと思えば、モーニングタイム(7~11時)にドリンクを注文すると、トーストとゆで卵が無料で付く、名古屋の喫茶店風「サービスモーニング」も提供している。またコーヒーは、森林保護や発展途上国の労働問題解決のために設けられたレインフォレスト・アライアンス認証農園豆を使用したブレンド。そのほかに、厳選したコーヒー農園の単一豆をハンドドリップした「スペシャリティコーヒー」も用意するなど、サードウエーブコーヒーの要素も取り入れている。

 さらに流行中のメイソンジャーに入れたフローズンドリンク、アサイーを超えるヘルシーフルーツとして注目のピタヤなどを使ったスムージーなど、まさに「はやりものは全部あります」というようなメニュー構成なのだ。バラエティー豊富ともいえるが、正直、特色が見えず、何がしたいのか分かりづらい。

 同店を運営するニラックス(東京都武蔵野市)の崎田晴義社長は「すかいらーくの新たな成長戦略として、非常に重要なポジションになる店」と力説する。その理由は何か。

1年かけて開発したという「むさしの森特製ふわっとろパンケーキ」(580円)は注文ごとにメレンゲを立て焼き上げるので口に入れた瞬間に溶けるような食感

パンケーキのアレンジメニューも豊富。「ローストナッツクリーム 蜂蜜メイプル添え」(880円)

「ベルギーチョコアイスと焼きバナナ 蜂蜜メイプル添え」(980円)

マフィンに半熟の卵とオランデーズソースをのせた人気メニュー「エッグベネディクト」(1080円)。オランデーズソースの風味があっさりしていて量も控えめ

なめらかなマッシュポテトと半熟卵をびんの中で混ぜ、ソースと共にバケットにつけて食べる「エッグスラット」(1080円)

モーニングタイムはドリンク注文でゆで卵とトーストが無料で付く

■狙いは「出店エリアの収益の最大化」

 今回のカフェ業態の最大の狙いは「出店エリアの収益の最大化」だという。

競争率2倍強から選ばれたという同店スタッフ。同エリアの他グループ店より若いスタッフが多いという

 すかいらーくでは客の嗜好の変化などで売り上げが落ちた場合、速やかにクローズし、時代に適した新業態に転換する方針をとっている。これには2つの大きなメリットがあるという。ひとつはその店がなくなることで、同エリア内にあるほかのグループ店の客数が増えること。もうひとつは業態を変えて出店することで、それまで獲得できなかった顧客層を呼び寄せられること。つまり定期的に業態を転換することで、出店エリア全体の収益がアップするというのだ。

 「これは多業態・多店舗展開しているすかいらーくグループだからできる戦略。すかいらーくには強いブランドイメージがあるので、新業態にすると『あのすかいらーくがこんな店を出したのか』という驚きもある」(ニラックスの崎田社長)

 実は「むさしの森珈琲」周辺は、同グループ内のレストランが最も密集しているエリアのひとつ。同店も「おはしCafeガスト」からのブランド転換だ。グループ内のレストランは、広さや基本的なレイアウトがほぼ共通している。そのため顧客の嗜好や利用動機の変化に応じて、少ない投資額で業態を転換することが可能だという。

 だが疑問もある。今回のようにカフェをオープンさせた場合、ほかのグループ店をカフェとして利用している客が減少するのではないだろうか。だが崎田社長はそれを否定する。

 「最近、ロードサイドのカフェ業態店があちこちにできて繁盛しているが、それによって近隣にあるすかいらーくグループの店の売り上げは落ちていない。グループ店には来ない客がカフェを利用しているということだ。とすれば、グループ店のひとつをカフェ業態にすれば、既存店の客数が増えるうえに今まで来てもらえなかった層にも来てもらえるようになり、エリアのシェアを最大化できる」(崎田社長)

前のファミレス業態のときは写真中央の柱から向こうが厨房だった。「滞席時間が長いぶん、席数を多くしないと売り上げが上がらないため、厨房を縮小して席数を増やした」(ニラックスの崎田晴義社長)という

 同店では、開業初年度の客単価を800円から1000円程度に設定。目標年商はガストの平均年商より約5割多い1億円後半を目指している。これだけ居心地重視のインテリアだと滞在時間が長くなり、回転が悪くなって逆に収益が下がるのではと心配になるが、同店では滞在時間が増えることで注文が増え、客単価が上がる面もあるとみている。

 また、「カフェ業態でこれほどの大型店はそうない。都心のカフェでは席数が少なく、ドリンクなどのテークアウトで売り上げを伸ばしている店が多い。この店は大型店なので、カフェでありながらたくさんの人がゆっくり座れる。これも面積に余裕があるすかいらーくグループ店ならではの強み」(同)という。

 すかいらーくの谷真社長も「この業態なら100~150店舗までそうかからないはず。2015年から2016年にかけて40~50店はオープンさせたい」と自信を見せる。高齢化が進んでいる地方都市も、視野に入れているという。確かに地方都市では「はやっているもの全部入り」メニューは大いに受けそうだ。

 ちなみに今回のメニューは2カ月先にはリニューアルする予定。つまり人気がないものはメニューから早々に消えていく可能性がある。気になるメニューがあったら、早めに食べておく必要がありそうだ。

(ライター 桑原恵美子)

[日経トレンディネット 2015年3月9日付の記事を基に再構成]

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