30代からの友人づくり、コツは自分に正直になること
"選ばれる"ための競争が女同士を難しくする
ライフスタイルが変わって、それまでの友達とうまくいかなくなったり、疎遠になったり…。年齢を重ねるごとに仲のいい女友達が減り、寂しくなってしまった人も多いのでは?
「一般的に、女性同士の友情とは、みんながある意味横並びだから成立するもの。その均衡が崩れると、疎遠になったり壊れたりするのはよくあることです」と話すのは、精神科医の水島広子さん。原因は、多くの女性の中にあるいわゆる"女"の特徴にあるという。「伝統的に女性は男性から"選ばれる性"。プライベートでも仕事でも、うまくいっている人は"選ばれている"ことが多い。友人が自分より"選ばれる女性"になると関係が難しくなります」
女同士の友情を育むためには、同性に警戒心を与えないこと、つまり、抜け駆けして選ばれようとする"女"の部分をなくすことが必要だという。「女友達をつくるために"女っぽくない私"になることは、30代以降を生きやすくする鍵にもなる」と水島さんは考える。
具体的には、ファッションやメイクから、相手に何を伝えるかまで、判断基準を「人に好かれること」より「自分がどうしたいか」に重点を置いてみる。「人に好かれることだけを基準にすると、状況が変わるたびに意見も変わって、裏表がある人のように見え、警戒心を抱かせます。一方、自分の意見をはっきり言うと、ときに『この人とは気が合わない』と思われることもあるかもしれませんが、長い目で見れば、正直で信頼できる人という評価を得られます」
いい親友をつくるためには、人目を気にしすぎる"女"の特徴を手放し、自分に正直になってみる。すると、仕事も含め、あらゆる場面でストレスがなくなることに気づくはずだ。「30代からの親友づくりは、実は、自分の対人関係ストレスをなくし、生きやすくなることにもつながるのかもしれません。だからこそ、女友達をつくる努力はしたほうがいいと思います」
【1】「すべてを共有できる」という幻想を捨てる
女性は仲がいい人に対して「私はこの人のことをよく分かっている」と考えがち。「そのため、自分の意見を受け入れられないと裏切られた気持ちになり、友情が壊れます。相手は自分と違うという考えを持つことが大切」
【2】「親友」がいつかいなくなる可能性を受け入れる
大人の友情は、共感できる相手と育まれることが多い。困難に直面しているときに出会った場合、それを乗り越えると離れてしまうことも。「必要なときに必要な人が現れるのも大人の友情。別れを恐れないようにしましょう」
【3】「女らしさ」の呪縛(じゅばく)から解放される
「ファッションや言動における、過剰な女らしさは同性を警戒させます。男性にモテたり、上司にかわいがられたりと、一時的にトクすることはあっても最終的には敵を増やしますから、手放していくほうが得策です」
こんな"女っぽさ"は封印すべし
・自分の「いいこと」をSNSでアピールする
フェイスブックなど、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で自分のことを書き込むときは要注意。「いいことばかりを書き込んで、現実の自分を"盛る"行為は嫉妬を生む原因になります」
・巻き髪、胸元パックリ…男性にアピールする外見
露出度が高い服や巻き髪にうるうるグロスなど、モテを意識しすぎた外見は封印。流行のシンプルなファッションやナチュラルメイクがおすすめ。
・自分の意見でねじ伏せる
「"アドバイス"のつもりで意見を押しつけるのが、女性の特徴。1つの考えとして意見を言ってもいいけれど、最終的には相手の決断を尊重して」
・「分かる、分かる」と何にでも同意
友人関係だけでなく、上司に対しても、自分の意見を言わず「分かる、分かる」と同意ばかりするのは、"取り入っている"と、不快に思われることも。
~親友をつくるための4ステップ~
「仕事に真剣に打ち込んだり、仕事と家庭との両立に悩んだりと、ポジティブな壁にぶつかりやすい30代は、"いい親友"ができやすい時期」(水島さん)。ここでは"合う相手"を見つける方法を伝授。
キャリアで目指す方向が一緒、ワークライフバランスの考え方が似ているなど、"似た境遇"の人と複数で集まろう。「彼ができないなど、ネガティブな内容のつながりは、足の引っ張り合いになるのでNG」
●例えばこんな集まりに参加
仕事やスキル磨きの勉強会
異業種交流会や、得意な英語のボランティアサークルなど、有益な情報を得たり、一緒にスキルアップしたりする目的の集まりに。
ワーママ同士のランチ会
仕事と子育てとの両立は、大変だけれど"子どもを育てる"というポジティブな目的と助け合いが発生するので、いい関係ができやすい。
「話したいこと、悩んでいることが深くなりがちな大人の親友関係では、相手が信用できるかどうかも重要。最初から距離を縮めず、会話のなかで相手が信用できる人かどうかを見極めることも大切です」
●ここをチェック
人の悪口や暴露話ばかり言う
「他人の悪口を言う人は、あなたのこともほかで悪く言います」。人の秘密を"ここだけの話"と話してしまう口の軽い人もNG。
相手の話ばかり聞きたがる
自分のことをほとんど話さず、相手のことばかりを聞きたがる相手には注意。踏み込んでほしくない領域に踏み込んでくるタイプかも。
アドバイスやおすすめが多過ぎる
自分の意見としての「助言」は時としてありがたいものだが、頭ごなしに否定する、アドバイスやおすすめを押しつける人とは距離を。
「自分から"自己開示"することで、相手も心の内を見せてくれて、距離が縮まります。さらけ出すことが苦手な人は、ハードルが低い"小ネタ"から始めて」。仕事や人間関係など、共通点がありそうな話題もいい。
●こう話してみる
「最近、仕事で失敗しちゃって、ちょっとヘコんでいるの…」
「私にも悪いところがあると思うんだけど、親って難しいよね…」
「初対面の人と話すのが苦手で、すぐに黙っちゃうのが悩み」
「大人の親友関係は、すべてを理解し合うことより互いの考えやペースを尊重できるほうが大切。会う頻度や同じ価値観にこだわらないほうが、長く続くいい関係をつくれます」
2人のつながりはメールを使って
「メールはリアルな人間関係を補充するツール。会えないときでも話したいことを送ったり、ただ『元気?』と送ったりするだけで、いい関係を維持できます」
この人に聞きました
精神科医(医学博士)。68年生まれ。慶應義塾大学医学部卒業、同大学大学院修了。摂食障害、気分障害や家族病理などが専門。00年から05年まで、2期5年間衆議院議員を務める。著書に『女子の人間関係』(サンクチュアリ出版)など。
(日経WOMAN 岸本洋美)
[日経WOMAN2015年3月号の記事を基に再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。