C型肝炎は飲み薬だけで治る時代に
C型肝炎は「C型肝炎ウイルス」が感染し、さらにそれが慢性化して起こる病気。ほかの肝炎に比べて最初のうちは症状が軽いが、5年、10年とじわじわ肝臓をむしばみ、肝硬変や肝臓がんを起こす非常にやっかいなウイルスだ。ちなみに、感染して発熱や嘔吐など激しい症状を引き起こすタイプのウイルスは、治りやすいともいわれている。
約8割でウイルスが消える強力な新薬登場
これまで標準的にC型肝炎の治療に使われてきたインターフェロンが注射薬だったのに対して、新薬は飲み薬という点が画期的。その第一弾は2014年9月に発売されたアスナプレビルとダクラタスビルの2剤の組み合わせだ。国内での臨床試験では、6カ月飲み続けた患者の84.7%でC型肝炎ウイルスが6カ月にわたって体内から消えた。しかも、この中にはインターフェロンが効かなかった患者も含まれる。
20年以上前に登場したインターフェロンは画期的な薬だったが、発熱や倦怠感が強く、最近は減ったものの間質性肺炎やうつ病による自殺で命を落とした患者も出たほど。厳しい副作用のため高齢患者では使用できなかったが、飲み薬の新薬は高齢患者にも使えると期待される。
ただ、なんといってもまだ新薬。肝臓病を専門に研究、診療している医師に診断を受け、処方してもらうことが大切だ。広範に使用されれば思わぬ副作用が出るかもしれない。使い方を間違って、薬が効かないウイルスを出現させてしまう可能性もある。消化器内科の看板を掲げていても、肝臓の専門医とは限らない。なお、この治療の医療費は公的補助の対象となるが、日本肝臓学会の専門医などの診断書が条件だ。
インターフェロンよりよく効き、副作用も少ないと報告されるが、"あなた自身にそれが当てはまるかどうか"は分からない。専門医と相談しながらの使用がポイントになる。
新薬の登場で、C型肝炎の治療は完全治癒を目標とする時代へと突入した。もう一つのB型肝炎も治療法が進歩して、肝硬変や肝がんへと移行する割合は減少している。ウイルス性の肝がんが消える日は間近だ。
新薬での治療は専門医の下で
次に示したようなメリットを享受するためにも、新薬は専門知識を持った医師の下で処方を受けることが大切だ。
(1)専門医の処方なら医療費の公的補助が受けられる
(2)新薬が効くタイプの肝炎かどうか、正しい診断が受けられる
(3)副作用やウイルス耐性などの管理を受けながら治療できる
・専門医の探し方
日本肝臓学会のホームページ(http://www.jsh.or.jp/medical/specialists/specialists_list )で最寄りの肝臓病の専門医を探そう。
新薬の登場で日本から肝臓病が消滅するとしたら万々歳。だが、喜ぶのはどうも早計のようだ。新しい病気が急速に台頭しているのだ。それは脂肪肝の一種、「非アルコール性脂肪性肝炎」と呼ばれる肝臓の病気で、英文表記の頭文字をとってNASH、"ナッシュ"と呼ばれている。
飲酒とは関係なく起こる肝臓の炎症で、糖尿病、高血圧、脂質異常代謝症など、なじみの深い生活習慣病が原因と考えられる。現在国内の患者数は400万人。NASHから肝硬変、肝臓がんになる人が増えており、10年後はNASHがウイルス性肝炎にとって代わることが確実視されている。
NASHへの特効薬はいまのところ、生活習慣の見直しだ。気になる人は肝機能の検査を受けよう。
(日経メディカル・キャンサーレビュー編集長 小崎丈太郎)
[日経ヘルス2015年2月号の記事を基に再構成]
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