マネー研究所

カリスマの直言

投資のハードル下げる、積立金額より企業と対話(渋沢健) コモンズ投信会長

2015/1/18

「幅広い投資家層とのコミュニケーションを改善するチャレンジ精神があるからこそ、企業価値は向上する」

 「また、機会があったら再チャレンジさせていただけませんか」。2014年秋の経済産業省主催の「企業報告ラボ」委員会で、オムロン執行役員経営IR室長の安藤聡氏が声をかけてくださった。

 その1年ぐらい前にさかのぼるが、弊社コモンズ投信で企画した「統合レポート・ワークショップ」に安藤氏にご協力をいただいた。統合レポートとは投資家向けのアニュアル・レポートとステークホルダー向けの企業の社会的責任(CSR)レポートを統合した報告書であるが、二種類の報告の「足し算」ではなく「統合」しているのが重要な点だ。企業価値とは、財務的な「見える価値」だけではなく、非財務的な「見えない価値」も含まれ、この二つの価値を統合的な企業の「ストーリー」として伝えるコミュニケーション・ツールである。

 通常、一般個人が企業の統合レポートを実際に手にする機会は少ないであろう。しかし、このワークショップは班分けした参加者がレポートのページをめくりながら自分が感じたことをメンバー同士で感想を語り合い、「審査」結果を班ごとに発表する。決して「批判」ではない。このような視点で表現したらもっとわかりやすくなるのではないかという忌憚(きたん)なき意見を企業へフィードバックすることで、企業が伝えたいメッセージがきちんと伝わっているかどうかを読み手(一般個人)と作り手(企業)が互いに確認し合える場所だ。

 作り手である安藤氏は前回のワークショップに参加したことで、考えさせられたことがあったようだ。「レポートを改善したので、皆さんからどのような反応があるか再度お願いしたい」というご依頼を筆者はたいへんうれしく思い、数カ月後の11月に「統合レポート・ワークショップ」を再び開催した。オムロンはこの1月上旬に東京証券取引所から2014年度の「企業価値向上表彰」の大賞に選ばれた優良企業である。常に、一般個人を含めた幅広い投資家層とのコミュニケーションを改善するチャレンジ精神があるからこそ、企業価値も向上するのだと確信した。

2014年11月に開催した「コモンズ統合レポート・ワークショップ」でエーザイの柳氏(右)とオムロンの安藤氏(中)が、一般個人からの「審査結果」を受けて答える

 経産省の「企業報告ラボ」委員会で安藤氏の隣には、コモンズ30ファンドの2009年設定時点から投資を続けているエーザイ執行役IR部長の柳良平氏が座っておられた。コモンズ投信がエーザイに投資した主な理由は、ガバナンスと対話の姿勢が並外れているからだ。会合中に「初めて統合レポートの作成にチャレンジした」と発言されたので、柳氏にも11月のワークショップへのご協力をお願いした。

 200ページ強の株主総会招集通知書を作成する徹底ぶりで知られているエーザイ。通常の企業の株主総会招集通知書は、飾り気がない薄い冊子で事業報告や決議事項などが掲載されているのが一般的だ。しかし、エーザイの招集通知書では、例えば、社外を含めた取締役の候補の一人ひとりがカラー写真付きの見開きページで自分が託される役割を表明している。

 エーザイは取締役会メンバーの11人のうち、社外7人(うち外国人2人)という日本企業では少ない先駆的なガバナンスの構成だ。一方、オムロンの取締役会は7人で社外は2人に留まるが、その1人がコーポレートガバナンスの権威である冨山和彦・経営共創基盤CEOである。まさに、コーポレートガバナンスやIRの東西の横綱がコモンズ「統合レポート・ワークショップ」の土俵に上がっていただいた格好だ。

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