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「兄さんは学費かかった」 遺産分割で考慮すべきか

2014/11/29

 開業医だった父を亡くしたAさん(50)。遺言がなかったため、弟と2人で法定相続分の通りに財産を分け合おうと提案した。しかし弟は、Aさんが私立大学の医学部に進学して、父から多額の学費を出してもらっていたことを挙げ、遺産は自分の方が多くもらうべきだと主張した。

 相続では、遺言が残されていなかった場合、遺族(法定相続人)同士で財産の分け方を話し合って決める必要があります。その場合、民法が規定する「法定相続分」を参考に配分を考えるのが一般的です。

 注意が必要なのは、遺族のうちの誰かが、亡くなった人から生前、多額の贈与を受けていた場合です。単純に法定相続分どおりに分けると、別の遺族が不平を抱きかねません。多額の贈与などを民法は「特別受益」とみなし、遺産分割で考慮すべきとしています。

 贈与が特別受益と判断された場合、その分はいったん相続財産に加算し、そのうえで各人ごとに法定相続分を計算し直します。贈与を受けた本人は、法定相続分をすべて受け取るのではなく、特別受益分を差し引いた残りを受け取ります。

 特別受益にあたるのはどんな場合でしょう。一般的には(1)結婚する際にもらった支度金や持参金(2)大学の入学金・学費に充てた教育資金(3)援助してもらったマイホームの購入資金――などが挙げられます。

 ただし、「特別受益にあたるかは個別のケースで分かれる」とベリーベスト法律事務所の弁護士、清水晃さんは話します。家の購入資金について言えば、そこに親が同居していたり2世帯住宅だったりした場合、子供が特別大きな利益を受けたわけではないとして、特別受益とは考慮されない可能性があります。

 教育資金はどうでしょうか。親が子供を扶養するのは義務ですから、中学校までの義務教育にかける資金は特別受益ではありません。現在の教育水準に照らせば高校の学費も含まれないのが通例です。清水弁護士によると大学以上についても「家庭の事情、資産や収入の状況のほか、社会通念まで考慮する」そうです。

 例えば兄弟のうち、弟は大学に進学せず、兄だけが私立大学の医学部に進学するために多額の援助を受けたような場合は、議論が分かれるところです。親が一般的なサラリーマンで、兄を医師にするために数千万円も援助していたなら、特別な利益を受けたと判断されるかもしれません。

 Aさんのように親が開業医で、その家業を継ぐよう促された場合、話は別です。費用の大小にもよりますが、その家族にとって特別なものではなく、必要不可欠の出費とも考えられます。その場合、後に起きる遺産分割で特別受益にあたらないと判断される可能性があります。Aさんは弟から反発されはしたけれども、法定相続分をそのまま受け取れると考えられます。

[日本経済新聞朝刊2014年11月26日付]

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