マネー研究所

わたしの投資論

投資は奪うものではなく与えるもの(中野晴啓)

2014/11/27

 独立系投資信託会社、セゾン投信社長の中野晴啓氏は、長期分散投資の魅力を伝えるセミナー活動に力を入れている。「積立王子」の異名を持つ中野氏に、本当の投資とはどういうものかを考えるにいたったきっかけを聞いた。

 資産運用が仕事になるまで、経済や投資にはまったく興味がありませんでした。堤清二さんに憧れてセゾングループに入ったら、たまたまグループの資産運用会社に配属されて、そこで初めて金融市場に向き合うことになったんです。

中野晴啓(なかの・はるひろ)氏 1963年、東京都生まれ。87年西武クレジット(現クレディセゾン)入社。2006年にセゾン投信を設立。コモンズ投信の渋沢健氏、レオス・キャピタルワークスの藤野英人氏と「草食投資隊」を結成し、全国でセミナーを開催

 当時は上司も先輩も、周りの人はほぼ全員が株をやっていました。むしろ「え、やってないの?」みたいな時代です。僕も個人的に始めてみましたが、新入社員で年収300万円足らずなのに、つぎ込んだのは2000万円。全部借金です。いまでは考えられないことですが、どこどこの株を買うと言えば金融機関が手数料まで全部貸してくれました。1円も持っていなくても投資ができたわけです。

 仕事では企業の事業活動や経済環境をきちんと分析していたのに、自分でやるときは完全にギャンブルで、値動きの激しい銘柄ばかり狙っていました。周りもそうでしたし、あのころに限ってはそれでも全員が勝てたんですよね。

■入社2年目で自己破産を覚悟

 でも、そういう株は値下がりするときもあっという間です。それがいくつも重なって、気づいたら1000万円の損を抱えていました。入社2年目にして、自己破産が頭をよぎりました。追い込まれた末にやったのはまたギャンブルです。最後に一発勝負だ、この銘柄に全部賭けようと。これでダメなら父親に頭を下げて、実家を売ってもらって返すしかない……。そこまで考えましたが、これがたまたま大当たり。何とか借金をチャラにできました。ただ、この件ですっかり懲りてしまって、それっきり株式投資はやめました。

 そこでやめておいてよかったかもしれません。バブル崩壊まで続けていた人はもっと悲惨でしたから。ある上司は「俺、きょうから夏休みだから」とだけ電話で告げて、そのまま失踪しました。あとから調べたら株式だけでなくゴルフ会員権などいくつも投資していたそうです。

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