この冬行きたい、雪景色を愛でる日本の美城4選
雪は神秘的な力を持つ。見慣れた景色を一変させ、どこか厳かな気分にさせてくれる。城でもそれは同じで、白く染まった天守は、とりわけ気高く厳粛な雰囲気を醸し出す。
鶴ヶ城(福島県)の会津絵ろうそくまつり、弘前城(青森県)の雪橙籠まつりなど、北国の城では冬祭りも盛んだ。さまざまなイベントとともに、城のライトアップが祭りの見どころとして、冬の風物詩ともなっている。白い雪がほのかに輝く夜の城内は、まるで異世界に迷い込んでしまったかのよう。普段は見ることができない城の姿を楽しみたい。
冬ならではの城の表情を味わいにいざ、雪国の城へ――。
赤瓦との見事なコントラスト~鶴ヶ城~
桜や紅葉のシーズンもおすすめだが、圧倒的に人気なのが冬、積雪のシーズンだ。鶴の姿にも例えられる優美な天守が真っ白な雪に包まれると、まるで鶴が羽を休めているようであり、城の名に恥じない雰囲気となる。城の周辺、本丸の松に施された「枝つり」も、冬の風物詩である。今でこそ優美な姿だが、戊辰(ぼしん)戦争の際、新政府軍の攻撃に1カ月以上耐え、堅城ぶりを全国に広めた名城。明治に入り石垣以外取り壊されてしまったが、1965年、市民の寄付により天守が復元した。その美しい姿から日本100名城に数えられている。
・アクセス: JR会津若松駅からバス「鶴ヶ城北口」下車、徒歩すぐ
・雪景色シーズン: 12月~3月中旬
かまくらの優しい光に包まれて~横手城~
昭和に入り模擬天守が造られ、公園として整備された城跡である。秋田県横手市内を一望できる展望台も設けられ、今では市民の憩いの公園。冬になると雪が積もり、白い雪に包まれた公園や城を見学することができる。外から見るのもいいが、展望台まで上り、町中に雪化粧が施された美しい景色をぜひ見てほしい。この城はかつて、仙北三郡を地盤に持つ小野寺氏の居城であったと伝えられる。以後城主は代わりながらも、要地の城として受け継がれてきたが、幕末の戊辰戦争の際に、仙台藩と庄内藩の攻撃を受けて落城した歴史がある。
・アクセス: JR奥羽本線横手駅から車で10分
・雪景色シーズン: 12月~3月
青森の誇りである天守と雪景色~弘前城~
弘前藩津軽家の居城で、築城400年を超えた市のシンボル的存在。桜の名所としても名高いが、雪景色も絶景。現存する天守や周囲の老松が真っ白に染まる。
現在、本丸や天守の修復工事中だが、市民の手による百数十基の雪燈籠が並ぶ恒例の雪燈籠まつりは開催される予定だ。
・アクセス: JR弘前駅から徒歩約30分
・雪景色シーズン: 12月~3月
雪化粧した五稜星の輝き~五稜郭~
五稜郭は幕末の戊辰戦争、最後の舞台。混迷する幕末に、西洋流の築城術で築かれた最新式の城だった。現在は一年中観光客でにぎわうが、雪が積もる季節はまた別格。ぜひ五稜郭タワーに上って、雪化粧が施された星形要塞を見下ろしたい。
・アクセス: 市電「五稜郭公園前」下車、徒歩約15分
・雪景色シーズン: 11月中旬~3月
冠雪して白く輝く、現存天守に行ってみよう
「高層建造物」である天守に雪化粧が施された姿は、実に幻想的だ。普段は男性的な力強さにあふれているのが一変し、優美な女性らしさを感じさせてくれる。
現在、日本全国には江戸時代からの現存天守が12、残されている。今回取り上げた雪の名城のなかでは、弘前城が現存天守。ほかに雪景色が見られる現存天守として松本城(長野県)が挙げられる。松本城の天守は、外壁に黒漆を用いた黒々とした外観が特徴的だが、降雪するとその印象は和らぎ、みやびやかさを醸し出す。白と黒とのコントラストが印象的だ。
福井県の丸岡城も、雪景色が美しい現存天守である。古風な外観の天守であるが、白く染まるとより野趣あふれる。天守の屋根瓦には凍っても割れないように、昔から石瓦が用いられている。雪が多い寒冷地ならではの特徴といえるだろう。年に1度あるかないかだが、愛知県の犬山城や島根県の松江城も冠雪することがある。
降雪を狙って撮影に行けば、普段は見られない凜(りん)とした天守の表情を撮影することができるだろう。
(文 かみゆ歴史編集部・滝沢弘康、執筆協力 野中直美)
[日経おとなのOFF 2014年11月号の記事を基に再構成]
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