高音質「ハイレゾ」で火花 ソニーとパナソニック
ソニーとパナソニックが相次ぎ、CDより高音質の「ハイレゾリューション(ハイレゾ)」対応のオーディオ新製品を発表した。かたや軽量化を突き詰め、持ち運べる音楽プレーヤーにこだわったソニー。一方、パナソニックは熱心な音楽ファンを念頭に、室内用で1セット500万円超の超高級ラインを投入する。両社の主戦場は異なるが、それぞれのプレゼンテーションには老舗としての意地が垣間見えた。
ソニーが9月25日に発表したのは「ウォークマン 新Aシリーズ」。ハイレゾ対応のウォークマンとしては第2世代にあたる。本体は66グラムで、1年前に発売した従来機種のおよそ2分の1に軽量化した。価格も約半分で、メモリー容量64ギガ(ギガは10億)バイトで想定価格(税別)3万5000円前後にした。
印象的だったのは、プレゼンでわざわざ挿入した1枚の写真。約30年前、当時の盛田昭夫会長が、携帯型CDプレーヤー「ディスクマン」を手に記者団に意気揚々と説明する姿だった。1979年に初代のウォークマンを世に出してから、今回は3度目の節目だという。「79年にアナログで音楽を持ち出すというイノベーションを起こし、84年にはデジタル化。2014年にハイレゾで音楽を持ち出す、新たな転機としたい」と高木一郎業務執行役員は話す。
ハイレゾは人の耳で聞き取れないような高い音やかすかな音までも再生できる点がCDとの違い。とはいえ、新Aシリーズで試聴すると、スマートフォン(スマホ)などで聴く圧縮音源とはスケール感が明らかに違い、録音スタジオの空気感も感じ取れた。
一方のパナソニックは9月29日、サントリーホール(東京・港)の小ホールを借り切り、4年ぶりに復活させる「テクニクス」ブランドの商品群をお披露目した。来年でブランド誕生から50年を迎えるテクニクス。ロビーには歴代の商品群が展示されていた。事業再構築のあおりで音響機器は「パナソニック」に統一され、欧州などでも音楽ファンに知られたテクニクスブランドは幕を下ろしていた。
それだけに、同社の楠見雄規ホームエンタテインメント事業部長は「高級オーディオ機器市場は世界で1000億円で規模も安定している。テクニクスは売上高100億円規模に成長させる」と、ブランド再構築への意気込みを語った。
新製品の「リファレンスシステム R1シリーズ」はアンプ、プレーヤー、スピーカー2本で511万4000円(税別)。試聴用の部屋で様々なジャンルの音楽を聴かせてもらったが、クラシック音楽は最も聴き応えがあり、重厚感を体感できた。
日本の産業界をリードしてきた電機メーカーの両雄が再び技術力を競う舞台として選んだハイレゾオーディオ。不振の音楽市場のなかで、人々の音楽鑑賞スタイルを変え、新たな需要を喚起する救世主となるか。
(映像報道部 杉本晶子)
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