チケットぴあが定価リセール 高額転売の歯止めに期待
日経エンタテインメント!
ライブのチケットを取ったものの、急な用事ができて行けなくなった…。こんなとき、発券前のチケットを別の希望者に定価で譲れる「定価リセールサービス」を、プレイガイド大手のチケットぴあが2014年7月よりスタートした。リセール希望者と購入希望者のマッチングを行い、成立した場合にリセール希望者が券面金額の10%を利用料として支払うという仕組みだ。
サービスを担当するぴあライブ・エンタテインメント局の山中伸浩氏は、「ユーザーからの問い合わせのうち、ID・パスワード忘れに次いで2番目に多いのが、行けなくなった公演のチケットに関するもの。以前から手を付けたいと考えていた分野だった」と話す。
購入後のチケットを定価で売買できるようにすることで、顧客の利便性が大きく向上するが、実は「ネットオークションを中心としたチケットの転売防止も大きな目的のひとつ」(山中氏、以下同)にあるという。「ライブの楽しさは実際に行かないと分からない。当社としてのもうけはなくても、お客様が正価のチケットを安全に購入し遊びに行けるように、流通を健全化したかった」。この定価リセールサービスによって、ネットオークションでの高額転売や詐欺行為などを抑制していくのが狙いだ。
チケットを定価リセールできるのは、主催者側がサービスの利用を認めた公演のみ。スタートにあたっては、Web画面のサンプルなどを携え、2013年からイベンターや業界団体などと交渉。ぴあでは2013年度に延べ14万件の公演チケットを取り扱っているが、現在その約半数の公演で同サービスを実施し、順次拡大している。
ももクロのコンサートでは「顔認証」を導入
ここ数年、イベント主催者は転売防止に向けて、様々な対策を強化している。例えば、AKB48や2013年のサザンオールスターズの復活ライブなどでは、「本人認証」が行われている。2014年7月に横浜の日産スタジアムで行われたももいろクローバーZのライブでは、この本人認証のスピードアップを目的に、あらかじめ登録した顔写真との比較で、本人かどうかを識別する「顔認証サービス」を初めて採用。来場者が6万人を超える大規模なライブでの導入は例がなく、大きな話題となった。
オークション経由で買われたチケットを探し出して無効化するこうした"摘発型"の施策は、即効性がある半面、入場時のオペレーションが煩雑になりがちなどの不便さがどうしても残る。一方、別の正規ルートを確保するぴあの定価リセールサービスは、あくまで"環境整備型"の施策であって、それ単体で転売を激減させるタイプのものではない。山中氏は「本人認証と定価リセールという2つの対策を車の両輪のように並行して動かすことで、ユーザーの利便性も転売対策の効果も上がってくるのではないか」と見る。将来的には、少しずつ導入が始まった電子チケットと連動することで、本人確認や定価リセールがさらに楽になることも期待される。
スタートから3カ月以上たつが、既にサービスは活発に使われているとのこと。「定価リセールの申込数は、おおむね予想通りですが、実際に成約に至る率が65%と、想定していたよりもずいぶん高い」。定価リセールは完売していない公演も対象となるため、残りのチケットへの売れ行きを心配する声もあったが、その影響もほとんど見られないそうだ。
今後は、こうした実績をもとに、多くの主催者が門戸を開くよう交渉に入る。競合するプレイガイドなどの対応も含め、この手のサービスが一般化するのか、注目される。
(日経エンタテインメント! 山本伸夫)
[日経エンタテインメント! 2014年10月号の記事を基に再構成]
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