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舞台・演劇

DAZZLE「花ト囮」 物語を視覚化した斬新なダンス、和洋融合の感性光る

2014/9/23

 ストリートダンスやコンテンポラリーダンス、日本の舞踊を織り交ぜた独創的なダンスが持ち味の男性9人組「DAZZLE」が、古くから日本に伝わる「狐(きつね)の嫁入り」をモチーフにしたオリジナルの舞台「花ト囮(おとり)」を上演した。演劇、ミュージカル、文学といったジャンルの枠を超えた巧みな舞台構成や演出、和洋が融合した幻想的なダンスパフォーマンスには、他に類を見ない斬新さが感じられた。

演出も手掛けるDAZZLE主宰の長谷川達也=写真 飯野高拓

 「花ト囮」は、見てはいけないと言い伝えられる狐の嫁入りを偶然目撃した兄弟が離ればなれになり、「この世とあの世の分かれ道」に迷いこむという幻想奇譚(きたん)。物語は全編オリジナルのダンスにより表現され、その躍動感や幽玄の境地は、音楽のリズムに合わせて踊るという、従来のダンスのイメージを覆す。

 例えば、狐の嫁入りを兄弟に見られた後の場面では、白装束に身を包んだ狐たちが兄弟とともに踊り狂うシーンがある。嫁入りを見られたことへの怒りと怨恨、そして兄弟が見せる苦悩や恐怖といった感情が見事にダンスで表現されていた。セリフや歌に代わり、物語の展開に沿ってダンスだけで人間の喜怒哀楽を表現するというのは、相当に熟練した技術だろう。

 今作は2009年に東京・池袋で初演されて以来、韓国やルーマニア、イランの演劇祭でも上演され、国内外で高い評価を受けてきた。今公演でも和傘や障子、灯籠、紙吹雪といった小道具を効果的に用いるなど、日本の美意識を強調した緻密な演出が目を引いた。字幕による登場人物の心理描写や、派手な照明による演出も、ダンスの魅力を一層引き立てていた。

日本の民話や文学、演劇などの要素を取り入れ、ジャンルを超えた舞台芸術の形を実現=写真 飯野高拓

 ストーリー展開は古典的な日本の民話のようでもあり、芥川龍之介の小説「蜘蛛(くも)の糸」を連想させる場面もある。視覚的な文学作品の趣だ。現代演劇やミュージカル、映画、ゲームなどの要素も随所にちりばめられていた。グループを主宰し、自ら舞台演出も手掛ける長谷川達也が「舞台表現の可能性に挑戦した作品」と言い切るように、ダンスを軸にした総合芸術として、完成度の高さがうかがえた。

 グループ名の「DAZZLE」には、「(美しさ、華麗さによって)人を幻惑する」という意味がある。今公演ではその名の通り、観衆を幻惑する、新しいダンスの形を見せてくれた。

 1996年に路上から始まったダンスグループは、今年で結成から18年。会社員やダンス講師など他の仕事を掛け持ちしながら舞台にも取り組むメンバーもいる。苦労を重ねながら1500人クラスのホールで上演できるグループへと成長した。来年には歌舞伎俳優・坂東玉三郎演出による特別公演も決まっている。今後のさらなる飛躍が楽しみだ。9月6、7日、東京国際フォーラム・ホールC。

(文化部 岩崎貴行)

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