目の中にレンズ、新しい近視矯正手術が登場
角膜削らず、不要になれば元に戻せる 眼内コンタクトレンズ挿入術
「眼内コンタクト挿入術は、点眼麻酔をした後、角膜の縁を3ミリほど切開し、茶目(虹彩)と水晶体の間にソフトコンタクトレンズのような眼内レンズを移植して近視・乱視を矯正する手術。手術時間は5~10分と短く、痛みもほとんどない」。北里大学病院眼科の清水公也主任教授はそう強調する。
手術による近視・乱視矯正法には、ほかに「レーシック」と「SMILE」がある。レーシックは角膜にフラップ(ふた)を作り、レーザーで角膜を削って視力矯正する治療法。SMILEはフラップを作らずレーザー照射で角膜を削る。各治療法の利点と欠点は次の表の通り。いずれも、効果が得られるのは老眼が始まる45歳ごろまでだ。
「ICLの最大の利点は、移植した眼内コンタクトレンズをはずしたり、入れ替えたりできる(可逆的である)こと。レーシックとSMILEではレーザーで角膜を削るので元に戻せず(不可逆的)、将来的に白内障手術が必要になったときに正確なレンズ厚の計算ができず、うまくいかない恐れがある。また、レーシックはフラップがめくれて視力が低下したり、見えにくくなるなどトラブルが施術後何年たっても発生し、ドライアイにもなりやすい」と清水教授。
トラブルが多いため、北里大学病院では08年にレーシックの施術をやめている。ICLは当初、角膜が薄くてレーシックの対象にならない人や強度近視の人を中心に実施されてきた。しかし清水教授は、「将来的にほとんどの人が白内障になることを考えると、軽度の近視の人にもICLが適している。特に乱視はレーシックでは矯正できない場合があるがICLではほぼ100%矯正できる」と話す。
難点は、ICLはオーダーメードのレンズを使うため比較的費用が高いこと。例えば、北里大学病院では両眼で50万円(保険は使えず自費)。ICLは眼科専門医で所定の研修を受けた医師がいる医療機関でのみ、手術が受けられる。
http://www.icl-info.com/clinic/
この人に聞きました
北里大学病院眼科主任教授。1976年北里大学卒。武蔵野赤十字病院眼科部長などを経て98年より現職。レーシック手術、眼内コンタクトレンズ挿入術を日本で初めて実施。新レンズ「穴あきICL」の開発者でもある。
(ライター 福島安紀)
[日経ヘルス2014年9月号の記事を基に再構成]
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。